第249話 聖魔会談
光の神殿内にある一室に向き合うように座る。
片側にガブリエルとウリエル。
反対側にタルト、ノルン、桜華、羅刹である。
「以上が死の王についての情報だ。
基本的には配下と思われる影から得た情報が全てだ」
ノルンが最初の遭遇から獣の国での暗躍まで出来事を簡単に説明した。
「死の王だと!?
そんな勢力は聞いた事もないわ!
ガブリエルは知っておったのか?」
「直接は見たのはぁ、この子を見守るようになってからよぉ。
それまではミカエルから聞いた情報だけだわぁ」
「ミカエルはいつから把握していたのだ?」
「数千年前から存在を察知していたそうよぉ」
羅刹は無言のまま聞いており、ウリエルと対照的であった。
「こちらの情報は出したぞ。
次はガブリエルが説明する番で良いな?」
「それと何で生きてかもですよー。
あと、私達を助けてくれた理由も知りたいです」
タルトも一緒に疑問をぶつける。
「順番に説明するわぁ。
何故、生きてたかだけどぉ、そもそも死んでないわぁ」
「だが、私はルシファーの一撃で死ぬのを確かにみたぞ。
それに私達を欺けてもルシファーが気付くと思うのだが」
「それは簡単な事よぉ。
貴女達が見たのは幻覚よぉ。
それにルシファーも協力者なのよぉ」
「何だと!?」
あまりの衝撃にウリエルが立ち上がる。
それも無理もないのだ。
光のミカエル、闇のルシファー。
両勢力の頂点に近い者同士が通じていたのである。
誰も想像がつかないであろう。
「理由は二人ともぉ、永き戦いに違和感を覚えてたのよぉ。
一向に状況が変化せず仲間が次々と死んでいくなかぁ、何も出来ない自分に憤りを覚えていたそうよぉ」
「ミカエルは馬鹿正直だからのう」
ウリエルの一言に「お前が言うな」というツッコミの視線が注がれる。
「そんな時にぃ、影という存在を知り裏で暗躍する何者かによって世界が動かされてると感じたのよぉ。
そして、ルシファーも同じ考えを持つことに気付いたのねぇ。
私もぉ不真面目だったからぁ、ミカエルから自由に調査の役をお願いされたのよぉ」
「何故、我にも声をかけぬのだ?
喜んで協力したぞ!」
「貴方はすぐに秘密を漏らしそうだからよぉ。
考えるより先に反射で話すでしょぉ?」
「何だとぉ!」
「まあまあ、ウリエルさん、落ち着いてください。
話の続きを聞きましょうよー」
荒ぶるウリエルをタルトが宥める。
「それから永い間、調査をしてもぉ何も掴めなかったのぉ。
そしたらぁ、ミカエルが調査の途中で何かに取り憑かれたみたいなのぉ。
侵食されていくのが分かったみたいでぇ、いつか乗っ取られる前にぃ真実に辿り着きたかったのよぉ。
でも、それが叶わないと分かってからはぁ、代わりとなる人材も一緒に探したのよぉ」
「それがタルトなのか?」
先程のミカエルの言葉を思いだしノルンが質問する。
「そうねぇ、自分と近い実力を持ち清い心の持ち主をねぇ。
そんな人物は見つからなかったわぁ。
それはそうよぉ、光の勢力の最強であるミカエルに近い人物なんてないわぁ。
それが急に聖女という面白い子が現れたのよぉ」
「私ですか?」
「そうよぉ。
最初に会ったときはまだまだだったけどぉ、急速に実力が増してきてみてて面白かったわぁ。
次々と襲う難関も乗り越えていくしぃ、案の定、影も現れたしねぇ」
「それで死の王の事は何か分かったんですか?」
「少しだけねぇ。
影が何体いるか分からないけどぉ、末端と思われる一体を追跡したのよぉ。
そしたら遥か北にある禁足地に向かって行ったわぁ」
「まさか龍の都か!?」
ウリエルの大声が響き渡る。
「少し静かに話してぇ。
だから、それ以上、追うことが出来なかったわぁ」
「ミカエルさんも北へ向かえって言ってましたね。
龍の都って何ですか?」
他は名前を聞いただけで険しい顔をしているが、タルトはピンときていない。
少し驚きつつもノルンが説明してくれた。
「遥か北には氷と岩の世界が広がっており竜族の棲みかとなっている。
そして、そこを治めるのは龍人だ」
龍人と聞いてリリーやジルニトラを思い浮かべる。
その戦闘力は計り知れないのだ。
「そこは古来より禁足地と呼ばれ他種族は立ち入ることを許されず、果敢に挑んだものは誰一人として帰ってきた者はいない」
「それでぇ、どうするのぉ?
それ以外のヒントはないのよねぇ」
行けば想像を絶する危険が待ち構えているだろう。
タルトはゆっくりと息を吸った。
「よし、行きましょう!
そこに謎が隠されてるんですもん。
ヤバかったらすぐに逃げても良いですしね。
これでも逃げ足は早いんですよー。
それに謎を解いてミカエルさんも助けないとです」
「よくぞ言った!!
ミカエルを救うまでは一時休戦で協力しようぞ!」
「ありがとうございます、ウリエルさん、
ガブリエルさんもお願い出来ますか?」
「勿論よぉ。
その代わりちゃんと結果を出してねぇ」
「うぅ…出来るだけ頑張ります」
こうして情報交換だけでなく協力関係も築けた事はとても重大な意味がある。
闇の鬼、悪魔、獣人の長達と光の大天使達の協力を得られたということは死の王の軍勢に集中出来るからだ。
各々の神は不在な事も多くあまり干渉されないようなので保留することにした。
「あと、ここに来た目的なんですけど…」
タルトは精霊や古い遺跡の事を説明し何か知っていることがあるか尋ねた。
「それなら地下にある封印の間だな!」
「やはり地下にはそれらしき場所があるのだな。
元々、地下へ私が案内し捜索しようとしてたんだ」
ウリエルの提案にノルンが確信する。
「そうだ!
我らも踏み入った事のない部屋だがな!」
「どうやってもぉ開かないのよぉ。
そもそも立ち入り禁止なんだけどねぇ」
「それは私が開けられると思います。
まずはそこに行ってから北へと行ってみましょう」
全員で地下への入り口から階段を降りていく。
迷路のような分かれ道が続いているがウリエルの案内があったこと迷うことなく封印された扉の前に辿り着いた。
今までと同じようにタルトが扉に触れることで封印が解かれゆっくりと開いていく。
「うわぁ!
まぶしい!」
部屋の中からあふれでる光に目が眩む。
今まで暗い地下通路を歩いてきたことにより尚更である。
眩しさに慣れてきて部屋の内部の様子が徐々に分かってきた。
「神殿も白かったですけど、この部屋って真っ白って感じですねー」
「そうねぇ、まさに純白ってところねぇ」
「わわっ!
何か人魂が飛んでます!」
タルトが驚き指差した先に白く光を放つものがふよふよ浮いている。
『マスター、あれは光の精霊です。
まさか同族に会えるとは嬉しいですね』
(ウルと同じって世界毎にいるんだねー。
じゃあ、話しかけてみようか。
あのー、私はタルトと言います。
あなたの名前を教えてください)
『に、人間が話しかけてくる…』
『この方は私が介すことにより会話が出来ています。
別の世界から来たウルです』
『精霊が人間に…』
(これまでもウンディーネさん達にも力を貸して貰っていたんです。
あなたもお願い出来ますか?)
『僕よりそっちの精霊の方が優秀そうだから要らないよ…』
ふっとタルトからウンディーネが飛び出てきた。
『ここは私にお任せを』
ウンディーネと会話し終わると諦めたようにタルトに近づいてきた。
『何も出来ないと思うけど手伝うよ…。
ウィル・オ・ウィスプが名前だよ』
(ウィル君だね、宜しくね!)
こうして精霊を解放し力を借りることにも成功したことで今回の作戦は無事に終了したのであった。
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