絵里香 西田

 「これでいい」


 石像を置くと、西田は大きく息を吐き出し、そして崩れ落ちるようにその場に倒れた。


 「西田さんっ」


 絵里香が慌てて抱き起こす。上体だけ支え、顔を覗き込んだ。力がほとんど感じられなくなった西田の目が、僅かに絵里香を向く。


 「もう、これで、奴は飛べねえ。怪物的な力も出せねえ。後は、誰かが退治してくれればいい。本当なら俺がやりたかったんだが、駄目だったな……」


 ゴホッと咽せ、血を吐く西田。


 「西田さん、喋らないで。休んでいて」


 「……駄目だったが、これだけやれば、兄貴も親父もお袋も、許してくれるだろう」


 西田は絵里香の存在を忘れたかのように言葉を続けた。


 「西田さん」


 西田は少しだけ絵里香を見た。しかし、次の瞬間、がくっと首が後ろへ倒れ込み、そして最後に一度だけ全身を痙攣させて、息絶えた。


 しばし呆然としていた絵里香は、ゆっくり西田の身体を横たえると、自分もその場にへたり込んだ。


 道の駅の方を見上げ、次に森を見る。


 沙也香ちゃん達は大丈夫だろうか?


 絵里香は、しばし考えていたが立ち上がる。西田の亡骸に向かい合掌し、頭を下げた。


 顔を上げると、西田の持っていた懐中電灯と猟銃を手に取る。 


 そして、恐怖感を振り払い、森の中へと進み始めた。

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