遠藤

 何度も体に衝撃が来た。おそらく撃たれたのだろう。


 だが、遠藤はいちいち確かめなかった。体が動くうちは動きまわる。そして、一人でも多くの敵を道連れにする。そう決意していた。さっき負傷した足のことなど、まったく忘れた。


 導火線の短くなった順からダイナマイトを投げ、拳銃を撃つ。ロボットの兵隊みたいだった敵が、慌てふためいて逃げ始めた。


 痛快な気分になった。自分の体から血液がどんどん流れ出していくのがわかったが、痛みも恐れも感じなかった。


 そろそろ終わりかな――。


 腰に残っているダイナマイトの導火線も、あと僅かになった。


 敵が何人かまとまっているのが目についた。


 あいつら、馬鹿だぜ――。


 遠藤は、敵の一団へと迫った。連中の表情は見えないが、体全体から怯えているのがわかり、これまでの仕返しができた、と溜飲の下がる思いがした。


 「やめろ、来るなっ」と敵の一人が叫んだ。「やめてくれっ」


 「そう言って助けを求めた人間を、てめえら何人殺したと思ってるんだ!」


 遠藤は叫び返すと、その男達の中に飛び込んでいった。男達の悲鳴が響いた。


 だが、遠藤は別の声を聞いていた。


 「おじちゃん、ありがとう」沙也香の顔が目に浮かんだ。


 生き延びるんだぞ、沙也香ちゃん――。


 最後に再び穏やかな笑顔になると、これまで以上の爆音が聞こえ、そして、次の瞬間、何も聞こえなくなった。


 何も見えなくなった。何も、感じなくなった――。

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