森の中 武装集団

 沢崎から一方的に通信を切られた後、黒崎はトランシーバーを投げ捨てた。


 部下との連絡にはすでに別のチャンネルを使用していた。捨てたのは木戸達との連絡の際のみの使用に特定していた物だ。もう必要ない。それが沢崎そのものに思えてしまい、力を込めて踏みつぶした。


 怒りのこもった行動だ。部下の前で感情を表してしまったことを後悔する余裕もなかった。


 「沢崎が本当に単独で逃げるとすると、非常に厄介です」


 宇野が顔色を伺いながらも言う。


 黒崎は黙って宇野を見る。


 総員、一旦止まっていた。森の中は必要以上に静かで、不思議なことに他の生き物の声さえ聞こえない。


 「この森の中、沢崎を探し出すのは困難です。東谷や木戸は民間人を守るという足かせがあるが、奴は全くの自由だ。我々に二手に分かれて対応するほどの余力はありません」


 「君は愚痴しか言えないのか?」


 黒崎の声が、宇野だけでなく全員の胸に刃物のように突き刺さっていく。


 「もう我々も、突き進むしかない」


 「しかし……」


 「沢崎が一人で逃げるなど、それこそ東谷が許さないだろう。沢崎とて一人よりは東谷という強い味方がいた方がいい。さっき奴が言ったのは、こちらを混乱させるのが目的の、戯れ言だ」


 有無を言わさぬ、狂気とも言える迫力を醸し出す黒崎に、宇野は黙り込むしかなかった。


 「嫌なら勝手に戻るがいい。だが、その場合、帰る場所はどこにもなくなっている」宇野だけでなく、全員を見まわしながら言う黒崎。誰もピクリ都もしないのを確認すると「行くぞ」と動き出す。


 沈黙の森の中、男達が移動する音だけが聞こえた。

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