道の駅 犯罪者 警官 客 関係者

 「森へ行きましょう。さっき言ったように、元博物館を目指すんです。こうなったら全員で。とりあえず俺がしんがりをつとめます。ここである程度連中を引き留めている。木戸さん、先頭に立って、できるかぎり元ハイキングコースを避けて進むようにしてください。敵が潜んでいる可能性も否定できない。あくまでも慎重に、しかし急いで」


 東谷が言うと、皆騒然となった。


 「俺もあんたと一緒にしんがりをつとめよう」


 沢崎が言った。頷く東谷。深く考えている余裕はない。


 「敵はこちらに猶予を与えるようなことはない。すぐに次の攻撃が来る。それに、人数に余裕があるなら森の側にもまわるはずだ。その前に行動に移らなければ危険です」


 力説する東谷。木戸や板谷も表情を引き締め直した。


 牧田の死体の前で目を伏せている藤間。大岡多恵と小笠原里枝には鳥山美和子と長尾美由紀がすがりつくようにしている。小山の横では岡谷が愕然としていた。


 死者を悼んだり、喪失に呆然とするのはわかる。だが、彼らの気持ちに斟酌している余裕がないのも確かだった。東谷は、追い立てるように彼らを促した。


 「でも、森には怪物が――」


 阿田川が不安そうな顔で言う。藤間の表情はもっと蒼白となっていた。


 「ここにいたら蜂の巣にされるか、爆破されるかだ。それでも良ければ残れ」


 遠藤が怒鳴る。


 「不死身の怪物に襲われるかもしれないんだろ?」と佐久間が言った。


 「危険はあるが、逃げ切れるかもしれねえじゃねえか。リスクが嫌なら、今すぐここでその銃で自殺でもしやがれ」


 遠藤の声は更に高くなった。佐久間は下を向いて黙る。


 「無茶苦茶だ」やけになったように飛田が言った。


 「その通り、無茶苦茶なんだよ、今は。とにかく逃げるしか道はないんだ」


 板谷が言った。その言葉に、皆静まりかえる。






 不意に沢崎が動いた。素早く振り返っただけだが、それが全体の空気を切り裂いた。


 東谷も感じた。来る――。


 2人同時に窓にとりつき、敵の動きを確認した。


 「行くんだ。木戸さん、急いで」


 東谷が叫ぶと、その声に追い立てられるように、一同が厨房へ殺到する。落ち着いて、などと言っていられない。


 次の瞬間、駐車場から掃射が始まった。東谷も沢崎も伏せる。


 遅れていた鎌田が撃たれて倒れた。


「先生ッ」と叫び国府田が駆け寄ろうとするが、板谷に引っ張られていった。


 その横で、鳥山美和子が倒れる。


 すがりつこうとする長島美由紀の腕も板谷が引っ張った。

 

 沢崎が東谷に、もう一つ手榴弾を放って寄越す。さっき絵里香が倒した男から取ったものだ。沢崎が頷く。その意味はわかった。


 沢崎が、何も見ずに、手だけ出して手榴弾を投げた。爆音が響き、敵の攻撃が一旦止む。


 時を違わず、東谷は立ち上がり、素早く敵の位置を見てとって、その中枢へと手榴弾を投げつける。爆音が再度響き、敵が蟻の子のように散っていくのが見えた。


 2人立ち上がり、小銃を撃つ。


 敵は大胆な攻撃をしてこなくなった。だが、こちらも手榴弾は後一つずつしかない。


 一旦身を隠しながら、2人は目で合図しあい、別々の方向へ向かう。沢崎はレストランを出た。東谷はレストランに残るが、一所に留まることはしなかった。


 木戸達のことが気になった。無事に進むことができるだろうか?


 自分達もすぐ後を追うつもりだが、それまで持ちこたえて欲しい――。そう願った。

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