路上 武装集団
これは……!
目の前に転がる死体を見て、さすがに黒崎も絶句した。
隣で宇野も唸り声をあげる。
「連中の仕業に違いありません。さっき木戸という刑事が言ったとおりの死体が、ここにある。つまり、連中が我々を混乱させるためにやったんです。犯罪者達の中に、とてつもなく猟奇的な奴がいる。そいつが内蔵をくりぬいたり、血を抜いたりしたんだ。人間のやる事じゃない」
怒りに震える声で田沼が言った。
黒崎は違和感を覚えた。田沼の最後の言葉だけが、耳に残っている。
人間のやる事じゃない――。
バイパスの北側に広がる森を見つめた。何か禍々しいものが潜んでいる気がして、胸がざわつく。
「総攻撃をかけましょう。40分の間に、連中は何をしでかすかわからない」
「待て」宇野が田沼の勢いを止める。「よく考えろ。連中が皆協力し合っているとしても、こんな事ができると思うか?」
田沼は応えずに、先を促すように挑戦的な目で宇野を見た。
「連中の現在の装備、それに心理状態などを考えてみても、人間をこんなふうにして、走っている車に遠方からぶつけてくるなど不可能だ。これは連中の仕業じゃない。何か別の者がいるんだ」
「別の? 何がいると言うんです?」
「わからない。だが、連中以外に、我々と敵対する何かがいる。そう考えた方がいい。対策を検討しなければ……」
「あなたはいつも、考慮だとか検討だとか、そんなことに時間をかけたがる。今はそんな時じゃない。連中以外にも敵がいるというなら、なおさら攻撃あるのみです。当初の目的を一刻も早く達成し、その上でそいつらも倒す。それしかないでしょう? 考えて、時間を無駄にしている間に、敵対する者どもに猶予を与えてしまっているんです。それは得策ではない」
田沼の主張が、闇の中に虚しく響く。
確かに一理あるとは思った。黒崎は、これをやったのが連中ではないと確信していたが、それ故緊急事態でもある。木戸と交わした約束にも、この際構っていられない。
人間のやる事じゃない――。
胸の中で反芻した。人間でなければ、何だ? どう戦えばいい?
不意に、遠くの森の中から、おそらく銃声と思われるものが聞こえてきた。微かだが、乱れ撃っているように感じられる。
何事だ? 連中は何を考えている? それとも別の何者かなのか?
状況を計りかねた。
宇野と田沼の視線が黒崎に集中する。指示を待っている。黒崎は、迷いを抱えながらも、決断せざるを得なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます