道の駅 東谷 木戸

 トランシーバーで敵に連絡をとろうとしている木戸につきながら、東谷はウインドウの向こうのレストランを眺めていた。


 さっき死体が投げ込まれたスペースの角に二人で来ている。


 敵と連絡をとってみることは、全員に伝えてある。おそらくみんな気にしているだろう。


 先ほど犯罪者達を連れてレストランに移動してきた時は、最初ちょっとしたざわめきがあったものの、それほどの混乱はなかった。


 それぞれ別のグループのように離れ、チラチラと見合っているのみだ。


 板谷、飛田、熊井が間に入るように立ち、一般市民側に牧田と藤間がいる。


 こちらに移ってすぐ、東谷や藤間で再度近辺を探ったが、何者の気配もなかった。


 レストラン内部の緊張感はおそらく相当なものだろう。小さな子供もいたことを思い出し、胸が痛んだ。何とか一刻も早く、この危機的状況を脱しなければならない。


 「こちら神奈川県警刑事部所属の木戸という者だ。応答願う」


 先ほどから呼びかけ続ける木戸の声が、次第に虚しく感じられてきた。しかし……。


 「何か用か?」


 不意に、トランシーバーから聞き慣れない声が聞こえてきた。木戸が目を見開き、視線を送ってくる。


 東谷も息を呑む。そして、ゆっくり頷いた。


 「君達は、今我々を攻撃している者か?」


 木戸がゆっくりとした口調で訊く。自分自身を落ち着けようと努力しているのがわかる。


 東谷も緊張していた。


 「わかっているから連絡をしてきたのだろう?」


 「君たちのリーダーと話がしたい」


 「一応私がそうだ」


 「何と呼べばいい?」


 しばらく間があった。そして「K」とだけ言った。


 「単刀直入に訊こう。君たちは何者だ?」


 「それを明かすわけにはいかない」


 木戸はまるで脳に酸素を少しでも多く取り込みたいとでも言うように、大きく息を吸い込んだ。

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