護送車 東谷 木戸  ②

 助手席の中里に呼ばれ、木戸は無線のマイクを持った。


 「神奈川県警刑事部捜査一課一係の木戸です」


 東谷という名前を確認すると木戸はホッとした。沢崎を一人で逮捕した元SATの刑事だ。


 「君についてもらうと心強い。よろしくお願いします」


 「了解しました」


 東谷が短く答えて通信を切った。


 気がつくと、板谷達刑事だけでなく、護送中の犯罪者達の目がこちらに向いていた。


 木戸が厳しい目つきで順番に見返すと、皆視線をそらす。


 一人、沢崎だけはこちらを見続けていた。そして、不意に「フッ」と笑みを浮かべる。


 背筋が寒くなった。

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