魂だけの弟、妖に目覚めた姉、日常に戻るまでがんばろうと思う

ももすけ

第1話 さよなら

 楽しい遊園地。

 違う。

 ああ。

 ああ。

 ああ。

 


 ジェットコースターが戻ってきた時、陸翔りくとは首をだらんと下げていた。

 気絶なんかじゃなかった。

 陸翔の口元に呼吸器を置く。

 12にしては平均よりも小さい体を、担架は運んで行った。



 次に会ったときには、昏睡状態。

 ジェットコースターの安全バーが喉を直撃し、落ちる重力でさらに負荷がかかったということだ。

 ここが山場です。

 医者はそう言った。

 私は、学校を休み続けた。



 スマホを開くと、友達からのLINEが溜まっていた。

 「病気早く治してね!」

 きっと、先生が事情を考慮してそう言ったのだろう。

 早く治してくれなくていい。

 健康な私の命をあげるから、

 それでいいなら、

 陸翔を助けて。


 ママは陸翔に付きっきりだ。

 そうして。

 パパは仕事。

 当たり前だ。

 一人ぼっちの真夜中丑三つ時。 

 留守番するときには、いつも陸翔がこのソファーに座っていた。鬼のいぬまにゲームと言って、ピコピコピコピコやっていた。

 また、戻って来てゲームしてよ。

 あたしも、二人対戦できないじゃん。

 「もう、また負けだよ。リクったら、俺の方が上手いって豪語してたくせに。動いてよ。ねえ動いてよ。」

 しょっぱい水が頬を伝う。

 「うう・・・・・うあぁぁ」

 ねえリク、泣いてるじゃん、馬鹿にしに来なよ。

 また泣いてるし、13の癖に泣き虫か。

 「また泣いてるし。」

 この声!

 「リク・・・・・?リクなの?!」

 左手でコントローラを持って、あたしのことを嘲る。

 「そうだけど?」

 あたしは抱きしめようと手を伸ばした。

 その手は虚しく、スルッと抜け落ちる。

 あたしはそのまま固まってしまった。

 「幽霊になったっぽいんだよね。」

 リクはサラっと言う。

 「死んだの?」

 「いいや。生死をさまよいながら、ずっと眠りつづけてる。そして、魂だけがスルッと。」

 なんだそれ。

 「なんか、閻魔さんが、『お前まだ死んでないぞ』って言ったから、魂だけの幽霊状態で戻ってきた。」

 は?

 「それマジな話?」

 「うん。マジ。」

 どうやら、あたしの弟は幽霊だけど厳密には幽霊じゃないようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます