第123話 商館

王都は人が多い。

そして、ギルドは常に冒険者で溢れている。


素材の売却に来た者、依頼の達成を報告に来た者、一攫千金を狙って王都に来たばかりの者、依頼を探しに来た者・・・・


それらの対応に常にギルドは忙しく、冒険者の相手で手一杯、とてもではないが、商人相手の話が出来ない状態。


そこで提案されたのが、大都市などの人口の多い場所では、ギルド以外に、商館を設ける、というもの。


常に商売の事で時間に追われる商人。”時は金なり”というほど、時間は貴重。

そこで、商人専用の場を設ける事に。


これが好評で、世界各地にこの流れが広がり、今や人口10万人規模の都市では、商館の設置が当たり前のように行われる事になった。


そして王都でも・・・・


「ようこそ商館へ。どのような要件でしょうか・・・・って、お姉ちゃん?」


「あらパメラ、久しぶりね。」


「聞いたわ。婚約したんですってね?しかも相当な大物を釣り上げたって聞いたけど、この人がそう?」


「ふふ。そうよ。あんな地方に配属になったから、半ばあきらめていたけれど、10年越しでやっと、これは!と思う男性と巡り会えたの。」


・・・・何を言ってるんだ、イベッテは。この受付はイベッテの妹?


「あ・・・・えっと・・・・今日は何か用があるの?」


「え、此処で建物を購入したいと思って、いい物件が無いか聞きに来たのよ?」


「良い物件ねえ・・・あるけど、高いよ?」


「お金は・・・・たぶん大丈夫。」


「あ・・・・オークキングの睾丸でしょ?」


「知ってるの?」



「商人は情報が命よ?それに・・・・兄の奥さんがおめでたなんだから、そりゃあもうお祭りモードで好景気なんだから。」


・・・・よく分からないけど、そんなに話が広まってるのか?まあおめでただから、良い事なんだけど・・・・確か睾丸の入手は、秘密裏に行われたんだよな?何でこの女性知ってるんだ?

機密駄々洩れって怖い・・・・


注   王太子が妹達に言いふらした結果です。



「あ、具体的な希望は何かな?小さいお店から郊外の大きな店、一等地の貴族向けの物件、金さえあればなんでもござれよ?」


「条件は厳しいけど、あるかなあ?そうねえ、商売がしたいのと、鍛冶がしたいのね。そして・・・・クランの王都での活動拠点としたいから、それなりに大きな建物及び、土地が必要かな?」


「・・・・そんなのある訳ないじゃない!贅沢言いすぎ・・・・とあれ?あるわね・・・・」


「一つ、ちょっと希望と違うかもだけど、商店として使っていた表側と、裏側は、倉庫だった場所があるのよ。大通りに面してるから、商店としても申し分ない物件で、実際大通りから外れると、土地代は安いんだけど、この物件は倉庫が奥にあるのね。さらに奥は材木の資材置き場だったから、広い土地がそのまま残ってるわね。」


「え?そこって確か・・・・?」


「調子に乗って事業を拡大しすぎて、最近倒産したのよ。しかも夜逃げ・・・・」


「わあ、借金抱えて逃げちゃったの?」


「ええ、今は冒険者が依頼を受けて追ってるわ。」


何処の世界も世知辛いな。

しかも夜逃げを冒険者が追いかけるとか。そうはなりたくないね?


俺達は早速その物件を見る事になった。

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