4本目:『トゥータン①』





「僕のこと知ってるの?嬉しいなぁ。」


お父さんは、普通の人と感覚がズレている。




「いや、陸上部で知らない人いないですよっ!」

続けて坊主頭の登尾先輩が答える。




本物?とか、サインもらえるかな?とか、ちらほらコソコソ話が聞こえてくる。



「そういえば、『舞洲』って、、、?」




「僕の本名は『梶木 健太朗』。この子の名前は『舞洲 美海』。

だから、『舞洲 健太朗』。」




全然説明になっていない。






「えっと、、、つまり、、、?」

状況を正確に理解しようと、キャプテンの伊丹先輩が投げかける。




「この子は僕の『娘』。」


質問の回答になってないよ。お父さん。



カジキングの娘。初めて自分のことを、その肩書きで他人に認識される。

このときわたしは、そのことをちゃんと理解していなかった。





「ありがたいことに、この子がこの高校に受かったので、今日から一緒に練習させてもらえたらと思います。

で、さっき先生からもあったように一応この陸上部のコーチもやらせてもらいます。

種目は中長距離全般ですが、400mも得意なので短距離ブロックにも口出しできます。よろしくお願いします!」


と簡単に自己紹介した。





「カジキング、子どもいたんだ。」





そりゃ、そうなる。



「僕の娘なんだけど、僕の子どもじゃない。まぁ、そこらへんは追々ちゃんと説明するね。」




ちらほら聞こえてくる「娘なのに、子どもじゃない?」という困惑した声。

それと「カジキングの娘か。。。」という何か期待をしているような声。

お父さんと一緒に自分も注目されているのが分かる。



「で、先に伝えておきたいことがあって。

この子は見ての通り恥ずかしがり屋で人見知り。小学校のときに、ちょっと色々あって学校にはちゃんと行けてません。中学のときは保健室登校でした。

だから部活に入るどころか、集団で行動するのも初めて。高校からはちゃんと頑張っていきたいということで、入学前から部活に混ぜてもらうことになったんです。」


お父さんはそう言うと、今度はわたしを抱っこしてみんなの前に降ろし、わたしの前髪を、左目を隠している髪を全部上げた。


全員の前にわたしの素顔が、青い瞳が晒される。





「いやっ!!」






とびっくりして叫んでしまい、慌ててお父さんの後ろに隠れる。


「という感じで、この子は別にハーフとかじゃ多分ないんだけど、ちょっと特殊な見た目をしています。

そのことが原因でこんな性格になっているので、できたら配慮してもらえると嬉しいです。

まぁ、僕は抜群に可愛いと思うんだけどね。本人は嫌がるんです。」



確かに、めっちゃ可愛い。という声が聞こえてきて超恥ずかしい。。。



陸上部のみんなは、困惑して全部を理解できてはいないものの、歓迎ムードであることは間違いなかった。

とはいうものの不安は大きい。



最後に先生が、

「そういうことで、お2人が練習に参加しますが、今日は初日なので練習は別で見学がメインです。分からないことは案内してください。

あと、事前に説明したとおり今日の練習は短めで、後でミーティングやります。」



こうして、自己紹介兼練習前ミーティングは終わった。






今日何するの?


とお父さんはわたしに尋ねる。



「1000m3本!間は600mジョグ。設定は3分05秒。

2週間前にやったときは、平均3分04秒でラスト1本落ちちゃったから、最後までしっかり走るのが目標!」

と鼻息荒く答えた。


今日の練習は昨日から決まっていた。

朝から調子が良いし、練習ベストは出せそう。




短距離ブロックは200m10本。

長距離ブロックは60分ジョグで、全体アップが終わるとそのまま好きなところへ走り出していく、はずだった。

みんな、カジキングとその娘がどんな感じで走るのか気になり、グラウンドの外周をぐるぐる走っていた。





ウォーミングアップをお父さんと一緒に済ませ、いよいよ本練習が始まる。



いつも通り。ただ練習している場所が変わるだけ。

大丈夫。



普段より自分に視線が集まっていることを感じても、

戦闘モードの「ちょんまげ×サングラス」になれば関係ない。




集中して気合いを入れる。お気に入りのスパイクを履く。



いつも通り。いつも通りだ。



正直調子は良いものの、めちゃくちゃ緊張している。





お父さんも同じ格好、、、丸坊主だからサングラスだけかける。



お父さんも一緒に走る。それだけで何て心強いんだろう。





本練習が始まる前に、マネージャーが1人つくことになった。

マネ長の御幣島先輩。



優しそうで大人っぽい。スタイルが良くて色気がある先輩である。




お父さんと御幣島先輩が何か話している。


OKで~す!

と御幣島先輩が緩、でも元気良く返事をして、わたしたちはスタート地点に向かう。





1000mのスタートは200mのスタートと同じ位置だから、

そこには短距離ブロックの面々が揃っていた。



当然注目される。

陸上ファンからしたら、憧れの日本記録保持者が目の前で練習を始めようとしているのだから。



自分に「頑張ってね。」声をかける先輩もいた。

何て応えて良いか分からず、軽く会釈をして変な感じになった。




こう。スタートの瞬間って。

注目されるのって無駄に緊張するから嫌だよね。




お父さんが、対角線上にいる御幣島先輩に大きく手を振って合図した。

わたしに「準備はいい?」と手を挙げながら聞く。わたしは全力で頷く。



そしてお父さんは、元気な声で

「1本目行きまーす!よーい、ハイっ!」と腕を振り降ろして走り出した。








1本目。

まるで機械のように正確なタイムを刻むお父さん。

1000m3分05秒だから、200m37秒/400m74秒。


200mは37秒で入り、600mは1分51秒(この間の400mは74秒)で通過する。

このとき御幣島先輩は

「69、70、71、72、73、74!この400m73秒6!」

「美海ちゃんっ!ファイトっ!」




部活って良いかもしれない。とこのとき思った。

「ファイトっ!」って言ってもらえるだけで凄い嬉しいしありがたい。


長らく抱いていた部活への不安はだいぶ和らいだ。



1本目のラスト100m、お父さんは気持ちペースを上げて3分03秒でゴール。


わたしは余裕をもって3分04秒後半でゴールした。


呼吸は乱れず、ラスト足が重くなることもない。かなり余裕がある。




御幣島先輩は200m/600m/1000mのタイムを読み上げる。

600mの通過のときだけ、合計タイムではなく400mのラップを読んでくれるから助かる。



そして、ゆっくりと1周半、600mをジョグしたら2本目が始まる。



1本目を走った疲れがあるはずなのに、ちょうど良く体が温まっていい感じで走れそう。


どうやら、そのことが顔に出てたみたいで、お父さんから

「次の2本目、丁寧にね。」と釘を刺された。





2本目。


1本目と同じようにスタートする。集中力が高まっているのが分かる。

さっきよりきつくない。楽に走れてる。


ただ、800mを通過したときに息苦しさと足が重くなる感覚があった。


また、お父さんはラスト100mでペースを上げて3分03秒でゴール。

2本目は最後を少し頑張って、3分03秒後半でゴールした。







きっつ!






いや、いい感じで走れている。

でも、1本目の応援してもらえて力が出た魔法は解けてしまった気がする。



息も、張った足もきつい。

お父さんが「丁寧に」といった意味が分かる。




今日は何か成し遂げられそうな期待感と、

前回失速してしまった恐怖感が頭の中をぐるぐる回る。



この休息の600mジョグが終わるのが少し怖い。



お父さんは少し薄めたスポドリが入ったボトルを拾って飲み、

わたしに渡す。ゆっくりジョグしながら。


「次の1本、次の1本、しっかりね!」


息を切らさず、楽しそうにわたしに声をかける。わたしは黙って頷く。





『レペティショントレーニング』



レースペースに近いペースで走り、休息で心拍数を元に戻してから繰り返し走るトレーニング。いつも大体3本走る。



レぺはラスト1本が一番きついけど、一番楽でもある。


だって、後のことを考えなくていいのだから。





3本目。


3本目もお父さんの走りは変わらない。

ただ若干速く感じてしまうのは、わたしが遅くなっているからだ。


できるだけリラックスすることを心掛けつつ、必死にお父さんの背中についていく。食らいついていく。離れたくない。離れてやるもんか、と気合いを入れる。


400mを通過して、一気に足が重くなる。でも、大丈夫。まだ平気。走れる。


まだまだ走れる。






そして、3本目のラスト1周。





お父さんはスムーズにペースを上げ、わたしを置き去りにした。





『陸上部の妹』

という表現が相応しい、とびっきり可愛い部員が増えた。



陸上界のレジェンドがわたし達の陸上部のコーチになったこと。

そして、コーチの娘さんが合格当日に入部したこと。


わたしは陸上部のキャプテンとして凄く嬉しく思う。




彼女はパっと見た感じ、『陸上』というスポーツには不向きそうな体型。

父親の背中に隠れる小動物みたいで、タイムとかどうでもよくて。

ただただ、可愛くてしょうがない。

頼まれてもいないのに、守りたくなるような存在だ。


なんかね。

彼女を見ていると、実家の愛猫を思い出すんだ。





そう思っていたのも、本練習が始まるまで。





戦闘モードになった彼女は、1人の洗練されたアスリートだった。

小動物のような守られる側の存在ではなく、どちらかというと狩る側。




小さいのに力強く、無駄がなく綺麗なフォーム。




グラウンドにいる陸上部全員が、彼女の走りに目を奪われていた。






1000m3本目のラスト1周を走る舞洲親子。


わたし達は、200mのスタート地点までゆっくり歩いて戻る途中、いつの間にか足を止めていた。



あらかじめ決まっていたかのように、ペースをぐんぐん上げる舞洲コーチ。



徐々に、2人の間に距離ができていく。



「美海ちゃんっ!ラストファイトっ!!!」

と、マネージャーの寧は声を絞り出すように応援していた。


寧のあまりにも真剣な声に、陸上部のみんなも声を出して、グラウンドはにわかに活気づく。


「ラスト!ラスト!」「まだまだいけるよっ!」「ファイトっ!」



ただ、舞洲コーチは容赦なくペースを上げる。どんどん速くなる。



陸上部のメンバーの応援にも熱が入る。

全員足を止めて応援しているから、本当は注意しないといけないんだけど。



せめて、ラスト1周だけ。あと300mだけ、応援させて。




相変わらず綺麗なフォームで、必死に走る彼女は苦しそう。

でも、どこか楽しそうでもあった。




あぁ、彼女は純粋に走るのが好きなんだな。

なんか、マイナスの感情が伝わってこない。





舞洲コーチがホームストレートに戻り、寧が流し読みを始める。


「1000mラスト1本っ!2分44、45、46、47!2分47秒!」


速ぇ。え?ラスト400、何秒?







そのあとの舞洲コーチの行動を見て、なぜペースを上げたのか分かった。


「みうちゃん!いいよ!いいよ!

ほらラスト!フォーム崩さないで!丁寧に!最後までしっかり!」



手を叩きながら一生懸命応援していた。陸上部の誰よりも大きな声で。



最後の1本を自然に追い込めるように、自分が引っ張りつつ、走り終わった瞬間から娘を全力で応援する。



これが舞洲親子なのである。




「みうなちゃんっ!ラスト1000m!2分55、56、57、58、59!

ラスト1本2分59秒!お疲れ様っ!!」


彼女は手を広げている父親に飛び込むようにゴールした。



「凄いね!みうちゃんっ!ラスト3分切れたねっ!」

と彼女の頭をわしゃわしゃに撫でながらコーチは褒める。



よし!止まらず、ゆっくり走ろうか!

と足を止めることなく、歩くよりもゆっくりなペースでジョグをし始める。



劇的なラスト1周を見て、何だか胸が熱くなった。


そう感じているのはわたしだけでなく、他のメンバーも同じようだった。



「よっしゃっ!!次7本目っ!気合い入れて行こうっ!」



わたし達はみんな、きついのに早く走りたいと思った。











「えっ?8本目から混ざる!?」


7本目を走り終わった瞬間のわたしは耳を疑った。


さっき、1000m3本全力で走ったじゃん。



舞洲コーチいわく、スピードを出して1日を終わりたいとのこと。

あと、彼女はまだ物足りないらしい。

調子が良いときに、しっかりと走っておきたいと。


彼女は1000m3本目を全力で走った後、400mジョグ+200mウォークでわたし達に追いつき、短距離ブロックの練習に混ざると。


1000m×3本+200m×3本


なかなか充実した練習メニューではないでしょうか。



寧から事情を聞いて、わたしは合流した彼女に目線を合わせて自己紹介した。


「わたしは伊丹ゆう。陸上部の部長だ。よろしくね、美海ちゃん。」

と握手を求めた。



「、、よ、、よろしくです。。。」

美海ちゃんは照れているのか顔を真っ赤にして、消えてしまいそうな小さな声で返事をし、目の前にあるわたしの手を握った。





うひゃーーーーーーー!!


超可愛いーーーーーーーー!!


何コレ!!抱きしめたいっ!!




200m4本分くらいの疲れは吹っ飛んだ。多分。



あのとき寧からは「必ず名前で話しかけること。」と言われていたのだ。



他の部員は話しかけたいけど、どうしたら良いか分からず遠くから様子を見ている。というか全部わたしに任せている。



200mダッシュは、大体3人から4人1組で走る。

美海ちゃんは人見知りと聞いていたから、走るまでの間に少しでも一緒に走るメンバーと打ち解ける必要があったのだ。



「じゃ、一緒の組で走ろうか!」


と言うと、モジモジしながら「うん」と頷いた。


「あと、さっき凄かったね!めちゃくちゃ速かった!」

と率直な感想を伝えると、サングラス越しに満面の笑顔を浮かべた。


はぁーーーーーーーーーーー。


守りたい、この笑顔。







それから一緒に200m3本走った。



普通に速かった。







気づくと隣にいて、びっくりした。

一応わたし、200じゃ県でも速い方だよ?





フォームは綺麗だし、スピードがある。


彼女はきっと800mランナーなんだと思った。





今日は不安もあったし、緊張もしたけど

めちゃくちゃ良い感じに練習できた。


練習ベストだ!!嬉しいっ!!



1000mの3本目。ラスト400m。

みんなに応援してもらって、自然と力が出た。


自分の名前を呼んでもらって、

全力で応援してもらえることって、こんなに嬉しいことなんだ。


まだ走り足りない。この感覚が残っているうちに、また走りたい。


そう思ってお父さんに相談し、短距離ブロックの練習に混ざることにした。





練習が終わって、みんなでクーリングダウン。


美海ちゃんは、、、、舞洲コーチと2人でジョグをしている。

髪を下してリラックスした感じでゆっくり走っている。幸せそうな笑顔で。


普段は補強やウエイトなどの筋トレをダウンの前にしっかりやる。今日はミーティングがあるからダウンジョグをして終わりだ。


練習開始と終了がいつもよりも早く、1時間くらいの余裕がある。



クーリングダウンが終わり、一旦全員集合。

そこで、先生から体育館のミーティングルームに移動するように指示があった。





ミーティングルームに着くと、先に到着していた舞洲親子がいた。


美海ちゃんは美味しそうに紙パックの牛乳を飲んでいる。

その後、舞洲コーチは美海ちゃんを抱っこして、背中をトントンし始めた。



その光景に、まったく違和感がない。。。


この春から高校生、、、なんだよね?





しばらくすると美海ちゃんはウトウトし始め、数分で寝てしまった。


そして、体育で使うマットと部室にあった毛布を使ってすやすや寝ている。



「さて。」


とわが子を寝かしつけた舞洲コーチ主導のミーティングが始まった。


ミーティングというより、彼女、舞洲 美海とはどういう人物なのか、という説明会だった。





このミーティングでは色々な話があって、驚きの連続だった。




舞洲コーチと美海ちゃんは血が繋がっていないこと。

小学校は不登校で、中学は保健室登校だったこと。

高校からは部活に入るということ。



何よりもびっくりしたのは、


目標を達成したらお父さん(舞洲コーチ)と結婚すること。だった。

その結婚するための条件にも。






そして、コーチはこう続けた。




この子が僕を超えられると思った根拠は、

走ること、陸上競技を心から楽しんでいるからなんだ。



僕が走ることを心から好きになったのは、現役を退いてから。

ちょうど、この子が3年生のとき。


問題を起こして学校に行けなくなった彼女に、何か夢を持って欲しかった。

だから、学校に行かない代わりに、何か目指すように言ったのさ。


そしたらこの子、『カジキングみたいになりたい』って。




中1まで僕がカジキングってことを内緒にしてたから、驚いたし嬉しかった。でも、正直複雑だった。見本にして欲しくない部分が多かったから。




だから、お手本になるように考えて今のスタイルがあるんだ。



この子は本当に楽しそうに走る。


純粋で、素直で、成長するために何でもやる。

『好き』から生まれたモチベーションは誰よりも高い。僕よりも。


娘の成長を間近で感じていると、こっちまで嬉しくなる。楽しくなる。もっと好きになる。



僕が引退したあとも走っていられるのは、この子のおかげ。

毎日一緒に走るだけで、凄い幸せだし楽しいんだ。現役のときよりもね。




現役のときは、陸上で勝つことが僕の存在証明みたいなもんだった。

あとは個人的なモチベーションだけで動いていたんだ。


好きな人の期待に応えたかった。

あの約束を守りたかった。

彼女が言ったことを嘘にしたくなかった。


ただ、それだけ。



試合で勝つのは嬉しいけど、

金メダルが目標だったから、満足しなかったし満足できなかった。

楽しいと思ったことも、、、、ほとんどない。



みんなにも僕みたいにはなって欲しくない。と思う。



「部活に入った方が良い。」というのは、この子のためだけでなく、

陸上部の子たちにも良い影響があると思ったんだ。


僕がそうだったようにね。




今日の練習を見て感じた人も多いと思うけど、この子は本気で世界を目指している。


今の実力じゃまだまだ遠い目標だけど、僕は叶うって誰よりも信じているし、そのためには何でも手伝うって決めている。



だから、わがままかもしれないけど、この子に協力してあげて欲しい。それは、多分君たちのためにもなることだから。



協力っていっても何かしてくれなくても良いんだ。


仲良くしてあげてください。



お願いします。と深く頭を下げた。




もう。

むしろこちらこそお願いします!って感じだった。




そこからは、いよいよ美海ちゃんの説明会。美海ちゃんのトリセツ。

彼女と仲良くなり、人間関係を構築するためのメソッドが語られた。





―1つ、名前で呼ぶこと。


彼女は母親の名字である「舞洲」をあまり好いていない。

あと、父親と一緒にいる時間があまりにも長く、「舞洲」と呼ばれることに慣れていないらしい。

◎「舞洲」と呼んだらどうなりますか?

⇒無反応です。自分のことと認識しません。無視しているわけではないようです。


―2つ、後ろから声をかけてはならない。


ここで突然、コーチは「猫、飼っている人いますか?」と尋ねた。

わたしを含めた1/3くらいが手を挙げた。

「基本的にうちの子、猫と一緒です。」


◎後ろから声をかけたらどうなりますか?

⇒びっくりして飛び跳ねます。それが続くと攻撃とみなされ距離を置かれます。なので、少し距離をあけてから声をかけるか、視界に入る位置まで移動してください。


―3つ、食べ物をあげると喜ぶ。


めちゃくちゃ食べます。あの小さい体のどこに入っているかわからないくらい食べます。特に好きなものを与えると非常に懐きます。近づきたいと思った人は、食べ物を用意すると効果的です。

補足として匂いフェチであることが伝えられた。特定の香り・匂いにやたら反応するらしい。


―4つ、走る前に牛乳をあげてはならない。


牛乳が大好物。夜寝る前に必ず飲むので、飲んだらリラックスしてしまい寝てしまいます。走る前は注意してください。

誰かが牛乳を飲んでいると欲しがりますが、与えないでください。


―5つ、カフェインをあげてはならない。


カフェインを与えると鼻血を出します。あと、夜眠れなくなります。

普通に飲めるのはミルクティーくらいです。コーヒー牛乳はちょっと危ないです。


―6つ、頭をすりすりしてきたら、撫でてあげること。


この子は、他人とのコミュニケーションを小学3年生から取っていないので、精神年齢が多分小学3、2年生くらいです。

で、めちゃくちゃ甘えん坊です。

いい練習ができたときとか、退屈さを感じていると頭をすりすりしてくることがあります。そのときは撫でてあげてください。

◎撫でないとどうなりますか?

⇒不機嫌になります。そのままにしていると、他の人のところにいきます。


―7つ、背中をトントンするとだいたい落ち着く。


機嫌が悪かったり、泣いちゃったりしたときは、頭を撫でて背中をトントンしてあげるとだいたい落ち着きます。


―8つ、なるべく応援してあげてほしい。


友達と言える人は誰もいません。

基本的に「周りは自分を攻撃する人」と思っているので、味方であること、応援していることを示してあげて欲しいです。


―最後、僕(父親)の悪口を言ってはならない。


僕のことについては、異様に沸点が低いです。小学校のとき問題を起こしたのは、1人の男の子が僕の悪口を言ったからです。

癇癪を起すと手が付けられません。



ーー以上。





これは後で聞いた話なんだけど、美海ちゃんは入試満点だったらしい。

毎年、入試の最高得点者が入学式の新入生代表を務めるけど、彼女が辞退したのは言うまでもない。



見た目は子ども。中身も子ども。陸上と勉強はぶっ飛んでる。


変な奴。それも飛びっきり可愛い。



こんな子と一緒にいて、面白くないわけがない。




この日、わたしたちは

彼女が今までみたいに辛い思いをしないように、

1人で抱え込まないように、

充実した高校生活を送れるように、


苦しい時も、楽しい時も、一緒にいるって決めたんだ。





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