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あずささんを見送ってから奥に引っ込むと、私の口からは盛大なため息が漏れていた。


「はぁぁぁぁ~~~。」


机に両手を付き、自分の体を支える。


「どした?平野さん?厄介な患者さんでもいた?」


先輩薬剤師の片山さんが、心配そうに覗きこんでくれる。

たまにいろんなことに文句を言ってくる厄介な患者さんが来るので、それに当たったと思われたのだろう。


「いえ、厄介というより、可愛らしい方でした。」

「は?意味不明だけど。」


私の答えに片山さんはひきつった笑みを浮かべた。


「片山さん、妊娠中に風邪ひいたことあります?」


片山さんは産休育休を経て復帰したママさん薬剤師だ。


「あるある。私なんてインフルエンザにかかっちゃって大変だったわよ。当然タミフルなんて飲めないからさ、気休め程度の鼻と咳の薬を飲んでひたすら寝てた。あれはきつかったわー。」


片山さんの思い出話に火がついてしまって、しばらく妊娠中の大変だったことエピソードを聞くはめになった。

だけどそれが逆に、私の胡桃さんへ対する想いについて決断するいいきっかけになったのかもしれない。

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