第8話 婚礼~内情1

 翌日、尊人は藤堂、未来など数人を従えて健斗が入院している宮内庁病院を訪れた。病室のドアを未来が開けると、ベッドの背を高くして、ほとんど座るようにしている健斗が見えた。ずっと不安そうな顔をしていた尊人は、健斗を見てぱっと顔を輝かせた。

「健斗!」

尊人は健斗の傍へ駆け寄った。

「やあ、尊人。無事だったか?」

健斗はそう言ってにっと笑った。

「なんだ、元気そうじゃないか!心配したんだぞ。」

尊人は珍しくはしゃいだ様子で、健斗の肩に腕を回した。

「いてっ。」

すると、元気そうに見えた健斗が顔をしかめて腹を押さえた。

「あっ!すまん。痛むのか?」

尊人はぱっと手を離した。

「大丈夫だ。こんなのかすり傷だって。」

顔が思いっきり無理しているが、健斗は懸命に笑って見せた。

「無理しちゃって。こっちは大丈夫だから、ゆっくり養生しとけ。」

未来が尊人の後ろから声をかけた。

「ああ、悪いな。藤堂さんにも、ご迷惑をおかけしてすみません。」

健斗が更に後ろにいる藤堂に声をかけた。他の者は病室には入っていない。藤堂は

「おう。」

と言って、手を挙げてみせた。

「よくやったな。尊人様に怪我を負わせなかったこと、誉めてやるぞ。」

藤堂が言うと、健斗はへらっと笑った。

「普通の事をしただけですよ。こいつを守るのは、当たり前だから。」

藤堂は、にやっと笑うと肩をすくめ、病室を出た。

「犯人は捕らえたのか?」

健斗が未来に聞いた。

「ああ。あの後瑠璃子様を拉致して、瑠璃子様を国王にしろと言ってきて、そして・・・実は瑠璃子様が主犯で・・・。」

「は?何だって?」

健斗は驚き、そして尊人を見やった。尊人は健斗の枕元の椅子に腰かけていた。

「尊人、大丈夫か?」

「ああ。まさか、瑠璃子ちゃんが俺の事を殺そうとしたなんて。まだ信じられないよ。」

健斗は尊人の頭に手を置いた。

「つらいな。」

「うん。」

「元気出せ。お前は間違っていない。」

健斗は優しく尊人の頭を撫でた。尊人は健斗を見て、にこっと笑った。

 いつの間にか病室に未来の姿はなかった。未来はそっとドアを閉め、ちらっと窓から中を見やった。そしてため息。

「どうした?ため息なんかついて。」

廊下に立っていた藤堂が言った。

「えっ?ため息なんてつきました?」

未来が言う。

「ついてたぞ、思いっきり。」

藤堂が不思議そうに言う。

「お前はもういいのか?お見舞い。」

「ええ。気を利かせたって言うか。尊人のあんな顔を見たら、ね。」

そう言って、未来はまたため息をついた。

「ふうん。」

藤堂はちらっと窓から病室を覗いた。何やら話をしているようだが、二人とも嬉しそうにニコニコしていた。

「あの二人は、つまり、そういう仲なのか?」

藤堂が小声で聞いた。

「違いますよ。俺たち3人は友達です。」

未来がはっきり言った。

「今のところは。」

そして、そう付け加えた。

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