第56話

 神社の本殿の中に入り、久遠様は蝋燭に灯をともした。


「大地はいわれのない理由で拉致監禁され、事あるごとに隔離室に入れられた」


 梅はため息をつきながら大地の服を脱がせ、霊水で拭いてから新しい白装束に着替えさせた。


「探し出すのに、とても苦労しました」


 子供の大地は、不思議そうに3人を見つめた。


「ごめんなさいね、大地。…あなたを守れなくて、ひどい目に遭わせて」


 弥生さんは大地の手を握りながら、目に涙を浮かべている。



「…………おれ、ビョーキじゃないの…?」



 久遠様は首を横に振った。



「お前は健康そのものだよ。あの一握りの、狂った神達よりも」



 大地は目を見開いた。



「私は久遠。お前の父だ」



「お父さん」



「彼女が弥生。お前の母だ」



「お母さん」



「私は梅です。あなたにはこれから、私が作った城に住んでいただきましょう」



「梅」



「あそこは人間の世界と神々の世界の、中間地点ですから。夏祭りの時だけ、あなたは自由に行き来できますよ」



「人間とドラゴンのハーフは珍しいが、大人になったら変身できる。もっと自由に行き来もできる。あの城で学ぶといい」


 久遠様は一言だけ、注意をした。


「だが人間の世界では、決して変身しない事。見つかると大変な事になる」



「…うん」



 久遠様と弥生さんは目を見合わせ、微笑んだ。



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