第55話

「大地!」



 …………眩しい!



 いきなり声が響き渡り、世界がぱっと明るくなった。




 それまで小さな大地と一緒にいた場所は一瞬で消え去り、私は岩時神社の桜の木の前にいた。



「やっと見つけた…!探したんだ」



 人間の姿をした久遠様は、小さな大地を強く抱きしめた。



「…………?」



 大地は不思議そうな顔をしながら、抱きしめられたままになっている。


 その後ろには、同じく人間の姿をした弥生さんと梅が、涙を浮かべながら大地を見つめている。



「良かった…!みんな無事だったんですね…!」



 私はほっとして、みんなに話しかけた。


「…………君は…誰だ…?」



 久遠様は、不審そうな顔をして私を見つめた。



「…さくらです」



 あれ?



 久遠様と弥生さんには、私がわからないみたい。状況が今一つ、理解できないといった表情を浮かべている。



 梅が私に、微笑みかけた。



「鳳凰の私には、何となくわかります。あなたは大人になった、さくらですね」



 私は頷いた。



「さくら…?大地の結婚相手の?」



「…未来のさくらさんなのね」



「…はい」



 ここは、過去の世界だったんだ。





「大地は今まで、さらわれていたんだ」






 久遠様は、大地をぎゅっと抱きしめた。






「人間を良く思わない神々の、嫌がらせによって」




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