第52話

「…お前はどうして、ここにいるの…?さくら」



 小さな大地に聞かれ、とても返答に困る。



「…わからないの。気づいたら、ここにいたから」



 私はあたりを見回した。




「ここはどこ?」




「かくりしつ」




 ………隔離室?





「…あなたは、大地なの?」




「うん」




「……あなたはどうして今、この『隔離室』にいるの?」






「おれは本物の『神』じゃなくて、はんぶん『人間』だから」





「……え?」





「おれはビョーキに、かかりやすいから」






「……」






「すごく体が、よわいから」






 彼の瞳は、宙を彷徨っている。





「せきをしたり、くしゃみをしたり、ねつを出すと」




 心臓が、ずきりと鳴る。




 思い出した。




「神さまたちに、たくさんメイワクがかかる」





 この瞳を私、良く知っている。






「…………」






 はじめて会った頃の大地はいつも、この表情をしていた。





「つらいとか、くるしいとか、さびしいとか、いやだとか、言うたびに」





 何かを諦めた様な。





「神たちはおれのことを、大声でばかにする。とくにカシャ」






 とても、寂しそうな顔をしていた。






「おれはよわいから。おれが生きているだけで、みんな嫌な顔をする」









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