第36話

 まるで芸能人に遭遇した時の様に、生徒達は興奮しながら私達に近づいて来る。



「来たーーーー!!」



 …………来た?



「あの、『リツ』さん」


「何?」


 りっちゃんが近寄ると和音は嬉しそうに目を輝かせ、頭を下げた。


「良かったら、これを弾いていただけませんか?」


 広間の中央には、白いグランドピアノが置いてある。


「ピアノ?…いいよ!」


 りっちゃんが快く引き受け、この間コンクールで弾いた曲を奏でると、みんなは恍惚とした表情で彼女を見つめた。


「お願いがあります」


「?」


 和音が大地に聞こえない様に、りっちゃんに何やら相談を始めた。


「みんな、何をしているんだ?」


「先生には秘密です」


 大地が聞くと、レニは笑って答えをはぐらかした。


「生徒達が最近変なんだ。…嫌な予感しかしない」


 大地は悲しそうに、こっそり私に呟いた。



 だから帰るのが怖かったのかな?


 



「大地!!」



 突然、声が聞こえた。



 バスケットボールの球が、剛速球で大地に向かって飛んで来た。



「……!!」



 ぶつかる寸前に大地はひらりと身をかわし、そのボールは凌太の頭に命中した。



「いてっ!!」



「わ!別なヤツに当たった!」



「すみません!」



海流カイル空蓮アレン!!」



 15歳くらいの二人の少年が姿を現した。

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