ノスタルジア

第21話

 その日の夜7時。


 『カフェ・ノスタルジア』の二階にある自宅の中に、私は大地を連れて来た。


「…と、いうわけで」


 我が家の夕食の席に、彼は嬉しそうに一緒に座っている。


「……どういうわけだ?」


 父がぼそっと呟いた。


「大地をしばらくうちに泊まらせて欲しいの。だって彼は、私の婚約者だし!」


「突然ご迷惑をおかけして、すみません。今日からよろしくお願いします」


 何故か妙に礼儀正しく、ぺこりと大地は私の両親に頭を下げた。


 久遠様は梅を連れて、自分の世界に帰ってしまった。元気を無くした大地を見るに見かねた私は、わが家へ連れて来てしまったのである。


「…ようこそ」


「会えて嬉しいわ」


 父と母は少し緊張している。

 無理もない。


「とりあえず食べよ!いただきます!」


 二人には、色々聞きたくてたまらない。


「…いただきます。これ、どうやって食べんの?」


 大地は不思議そうに鍋の中を覗き込み、みんなと同じように箸を持った。


 夕飯は何と、私の大好物のすき焼き!


「出来上がるまでちょっと待ってて、大地」


 私は母と一緒に具材を鍋に入れ、少しずつ質問を始めた。


「ねえ、どうして大地と私の婚約の事、ずっと私に内緒にしてたの?」


 父は私を見て、戸惑った様に話し出した。


「…内緒にしていたわけじゃないんだ。…あれが夢だった気がしていたからだよ」


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