第17話

 梅ばあちゃんがやっと、私達のすぐ側に着いた。


「…一体、何をする…つもりです、大地」


 私は梅に近づき、苦しそうに息を切らせた彼女の背中をさすった。


「さくらを元気にしたい」


 真剣な口調で大地は答えた。


「そのために?あなたは一番いけない時に、この世界に現れてしまったのですよ?」


「好きな女を元気に出来なきゃ、生き物として失格だろ?」


 今、サラッと大地、

 『好きな女』って言った…?


「…久遠くおん様が、何と仰るか!」


 私は状況がわからず、ただオロオロしてしまった。



 そこに。



 神社の方から白髪で年齢不詳の、ぞっとする様な威厳と強さを感じさせる男性が、こちらへと歩いて来た。


「今、聞いた」



「久遠様!」



 梅に『久遠様』と呼ばれた美しい男性は、大地と似た様な白い装束を身に纏っている。


「大地、この世界でドラゴンに変身するな」


「…父さん。どうして?」


 久遠様は大地に向かって両手を広げ、何かを唱えた。


「うわ…っ!」


 熱を持つ暴風が、大地に向かって襲いかかった。


 大地は宙へ飛び、地面へと叩きつけられた。


「大地!!」


 私は大地に駆け寄った。


「神々の裁きを受けたいか?ここは人間の世界だ!」



 久遠様は、神社の奥へと戻って行った。



「大丈夫?」



「…ああ」



 大地は頷き、悲しそうに俯いた。


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