第75話 ハッピーエンドレスのプロポーズ

 ヘンリックから栓の開いてない果実ジュースを受け取り俺たちは風に当りに目立たない所に椅子を発見し座る。


「ハクチャーン様は本当にお綺麗でしたわ!」

 とクラウディアが果実ジュースを飲みながら言う。


「ディアも綺麗だと思うよ…あれ以上のドレスにする?」


「贅沢は禁止でしょうに?国は豊かになりましたが…」


「どんな姿でもいいけどさ…ディアは可愛い」

 と俺も果実ジュースを飲んでみるとあれ?何これ?酒じゃね?アルコール入ってね?と気付いた!!クラウディアは熱っぽく俺を見てシュルリと髪を伸ばして俺を引き寄せると赤い顔で


「ジーク…」

 とほっぺや額にキスしたりする!俺は髪で動けない!!


「ディア!酔ってるな!!?」


「まさか…わたくしは酔ってまへんの!」

 いや酔ってんよ!!さっきから飲んでいたし!


 そこでクラウディアが身を寄せて俺に熱烈キスをし始めた。


「あっ…ディアっ!んっ…んっ」

 これじゃあ、ローマンと同じだからなんとか緩んだ髪の隙間から口に手を当て静止した。


「ダメダメ…」


「ふえ…ジーク私のこと嫌いですのぉぉ?嫌ですわぁ嫌われてしまいましたのおおお?」

 と泣いた。弟は倒れてクラウディアは泣き上戸か!


「違うよディア!!誠実に行こうな!後1年で俺たちも結婚するんだからね?」

 とよしよしと背中をさする。


「…ジークを見る令嬢の視線に私は耐えられませんでしたのおおお!ごめんなさあああい!」

 とそんな可愛いこと言われたら俺の理性もぶっ飛ぶだろが!!


「ディアを見る男たちも大勢いたよ?俺だって嫉妬くらいするぞ!?」

 ガシっと掴み今度は俺からキスをするとクラウディアが嬉しそうに応えて…止まらないだろ!!

 ダメだからね!これ以上は!ふあああ!柔らかい!好き過ぎる!


 ようやくクラウディアは俺の胸に収まり目を閉じた。

 指で俺の胸をぐるぐるさせながら


「早く私も結婚したい……ですわ…」


「そうだな…まぁその前に成人して戴冠式とかあるし…ローマンみたいには早くないだろうけどね」


「ジークが即位してブッシュバウムの国王陛下になるのが楽しみですわ!絶対に素敵な国になりますもの!」


「それまでにこの世界を全部浄化しに行こうな?クラウディアと2人ならハッピーエンドだってできるさ!」


「ハッピーエンド??」


「幸せに終わるってこと」

 するとクラウディアは首を振った。


「幸せは続くもので終わるものではありませんのぉ!」

 と言い、俺も考えた。確かに…。ハッピーエンドねぇ…。エンドはいらないよな。それは話が終わるってことだしな。俺たちの幸せはまだ続くのだろうな。


「なら俺たちはハッピーエンドレスを目指そう!」


「なんでふの?エンドレス?」


「幸せは終わらない!無限という感じだよ!」

 というとクラウディアはうなづいた。


「素敵ですわそれ!終わらない!無限!」

 そして俺はようやく少し酔いが醒めたクラウディアにひざまづいてポケットに入れてた王家の代々伝わる指輪を差し出し真剣に誠実に伝えた。ベタに!


「俺と結婚してこの国の王妃になり一生側にいてください!クラウディア・バルシュミーデ嬢!君を…心から愛してるし君以外と幸せになるつもりもありません!どうぞ俺のお願いを聞いてくれる?」

 ともう片方の手から少しだけ赤い髪の毛を見せた。以前クラウディアと髪の毛を一房切れたら願いを聞いてくれると言ったしな。


「ごめんよ、さっきちょっとだけね?一房はやはり勿体無くて無理だった!貧乏性かなぁ」

 と笑うとクラウディアも笑った。


「うふふふ!そんなこと覚えていたんですね!馬に乗りたいんじゃなかったかしら?」


「そ、それもいずれしよう!クラウディアと一緒にセレドニオに乗るんだよ!白馬の王子っぽく!今は…指輪を受け取ってくれるかな?」

 するとクラウディアも真剣になりカーテシーをすると


「喜んでジークヴァルト様のプロポーズをお受け致しますわ!私はいずれ王となった貴方の側で共に国や貴方を支えていくと誓いますわ!私も心よりお慕いしております!」

 と白く細い指に俺は指輪を嵌めた。

 キラリと光る指輪を見て見つめ合いもう一度キスをした。


 *


 その夜俺は神殿に来ていた。

 なんかいつもと様子が違う…。


「来ましたねっはい!!おめでとうジークヴァルトよ!プロポーズしやがったわね!?」


「うぐっ!」

 くっそ!こいつほんとプライバシー覗きまくりだしなぁ。


「おほほはほ!女神にはまるっ見えです!」


「あっそうですか。何か用ですか?」

 近頃ザスキア信仰も増えて殺風景な神殿の周りに白い花や白い木がズラリと生えてきて凄い光景だ。


「別に用はない!褒めてやろうと思って呼んだのよ!おかげさまであの明日香の不死能力を解除する力が次のレベル上げで付くわよ!はい!」

 とザスキアが言い


「ほんまか!?」


「ほんまやで!」


「ほな、知らせにいかなあかんな!」

 と俺が言うと


「ええ、それはそれで置いといてほんまによく頑張ったわねジークヴァルト!はい!…………それじゃあ…しばらくここにいてもらうか!」

 は?

 と言うと俺の周りにダダダダダンと白い鉄杭が打たれてそれが伸びて檻になる。俺が触るとバチっとして出られない!!


「な、何をする!ザスキア!頭がおかしくなったのか!?」

 と言うとザスキアは笑い、姿を変えた!


「おっ、お前は!女神レシリア!なんでっ!左遷させられたんじゃ!?」

 すると芋虫みたいにぐるぐる巻きにされたザスキアが転がってきた!


「おのれーー!レシリアーー!このビッチがあーー!!」


「ザスキア!?」


「油断していましたっ!はい!私の付き人だった双子がレシリアのスパイでした!はい!」

 奥から双子が歩いてきた。


「ひひひひ!復讐だ!ザスキアなんかに私が負けるわけないでしょうがっ!ジークヴァルト!奇跡の王子もここで終わりよ!あの世界もね!お前がここにいればザスキアの加護なんか消える!ダモンの軍勢を送り込みあの恋愛ジャンル世界なんかぶっ潰してやるわ!!」

 とレシリアが笑った!


「クソがっ!お前逮捕やで!?はい!」

 とザスキアが叫んだ!


「うふふふふ!逮捕?ほほほほ!私の正体も気付かないダメ女神!ザスキア!私はもう女神じゃないのよ!」

 とレシリアはその姿をまた変貌させていった!

 何とそれは…浅黒い肌に黒い瞳に羽が6つ生えた恐ろしいほどの悪魔みたいな女だった!!


「なっなななな!なんとっ!レシリア!お前…己の復讐の為にその身にダモンを取り込み邪神となったか!!はい!」


「その通りよザスキア!あんたへの恨みは忘れないわ!私は邪神となりあの世界を壊す!ダモンの王国を作り再びレシリア信仰を広めてやる!」

 とレシリアはザスキアに唾を吐き頭を踏みつけた。


「は、反乱やでぇ!このど腐れ邪神めが!神の鉄槌くだるで…はい!!」

 踏まれながらもザスキアが言うと


「あの世界ももう終わりよ!じゃあねザスキア!」

 とザスキアがレシリアに頭を潰されて死んだ!!


「ザスキア…」

 そんなっ!!そんなっ!嘘だろ?あんな気のいい親戚みたいなおばちゃんを…いや時々殴られたけど!


「ザスキアーーー!!!」

 俺は叫ぶことしかできなかった!

 クラウディアに折角プロポーズしたのに!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る