第51話 聖女と対面した

 ハクちゃんは人の姿で街へ行ったことが無いそうだ。

 色々と湖周辺で家族とのんびり暮らしていたただの原住民と言ってもいい。人型になって素っ裸で遊ぶことはあっても人に見つかるようなことは今までしてこなかったようだ。


「だが!今回我が病気になってしまった!謎のなんか気持ち悪いやつが体内に侵入したのだ!原因は解らぬ!しかも父上達にも移った!高熱で苦しいし死ぬかと思ったんだ!だが、奇跡の王子の力ですっかり回復してな!これはお礼を言わねばと長年避けてきた人の街に行って奇跡の王子に礼をせねばと我が家族代表で歩いておったところをローマンと劇的に出会った!」

 とハクちゃんはふん!と説明した。


「いや、素っ裸で歩いていくとかいろいろやばいよ。街に出た途端に捕まるよ!ローマンに会って良かったわ」

 と今もローマンにべったりくっついているハクちゃんに言う。


「服を着るの忘れてたんだ。そもそも服がない。ドラグーフォームになるとどうせ破ける」

 ですよね!


「おい!そんなんで俺と結婚していきなり素っ裸になるんじゃないぞ!?そもそもまだ正式な婚約もしてないわ!国に帰って手続きして婚約式してそれから数カ月準備してやっと結婚っていう段階があんの!貴族は!」


「めんどくさい」


「ん、なら辞めるか?」

 そうローマンが言うとブンブン首を振りハクちゃんは涙目で


「嫌だ!!結婚してローマンの子作る!メスを産む!メスは貴重だ!」

 と言う。


「おい、バカップル!それは後でいいからハクちゃん…君達を病気にしたのは帝国の聖女らしいぞ」

 と俺は本題を言う。


「何!?王子よそれは本当か?」

 とハクちゃんは流石に驚いていた。


「そう、女神が言ってたからね」


「そうか女神か…ならば本当なのだな」


「ジーク女神と夢で会えるとか凄いよなぁ。ほんと奇跡の王子なんだよなぁ、俺の従兄弟。今更だけど」


「うむ、王子はなんか魂がうま…」


「「あーーーーっっ!!」」

 と俺とクラウディアは遮った。

 転生のことはややこしいので俺とクラウディアやレーナ嬢くらいの秘密にしているのだ。


「何だ?ふむ…まぁ良い…ともかくその帝国の聖女とやら…許せぬ!我が出向いて滅ぼすか?」


「いや、帝国の奴等は魔法が使える!魔法は聖女がもたらした力らしい。だからハクちゃんでも敵わないかと思う。魔法を侮っちゃいけないよ!うちの国それで負けたんだから!」


「ふむぅ、しかし許せぬじゃないか!我等を病気にして殺すつもりだったのか…我等が死ぬとこのアルデンも滅びに向かうところだった!」

 それを聞きリヒャルト王子は青ざめた。


「何と言うことだ…ヘルマ帝国の聖女…恐ろしい!」

 ……魔法…転移者のチート能力だ。聖女が女神レシリアの加護で人に与えた力…。それで5年前ブッシュバウムは負けた…。その時は俺は転生していなかったし…。そしてクラウディアの敵となる存在…。何とかしなければ…。しかし再び戦争なんか起こせる訳がない!ようやく復興してきてるのに。それに帝国とは一応平和協定を結んでいるが、女神信仰の違いからあまり交流はない。


「これは一度ザスキアにまた聞いてみるしかないな…」

 俺がボソリと言ってるのを聞いたクラウディアは


「私も一緒に神殿へ行きたく思います」

 と言う。


「え?」


「…ダメ…でしょうか?」

 とクラウディアが上目遣いで可愛く俺を見るのでドキリとする。クソ可愛い可愛い!クラウディア!!そんなのいいに決まってるし!


「いいよ、クラウディアが行きたいなら…あっでも手を繋いで同時に眠らないと…」


「ん?そんなことなら我が手伝ってやるか!昨日ローマンとイチャイチャした時に宝珠出したし」

 とキラリと宝珠を出した!


「やっぱりか!!どっから出したんだそれ!コンちゃんのよりは綺麗だけど!」


「あー…我は額から出すぞ?あのホワコンというのは…うむぅ…流石に我もメスだし口にできんわ」


「やっぱりコンちゃんの宝珠きったねえな!!でも結局宝珠ってそゆことやらないと出来ないようになってんのかよ!!」


「うむそうじゃ!我のが欲しかったらローマンとイチャイチャするしかない」


「ぶごっ!!げほおっ!!」

 ローマンが咳き込んだ!!


「おい!ジーク!辞めてくれ!!ハクとどんだけイチャイチャしたか宝珠の数でバレバレじゃないかそれ!!俺絶対やだわ!」

 ローマンが震えている。


「でもコンちゃんの宝珠も似たようなもんだし綺麗な方のハクちゃんの宝珠の方が俺は欲しい」


「と奇跡の王子は言っているぞローマン」


「嫌だあああ!!恥ずかしすぎんだろうがーー!!それにもう後は絶対結婚後しか嫌あああ!!」

 ついにローマンは泣いた。やっぱりこいつ乙女だわ。いや…俺も結婚後じゃないと嫌だな…何これ?王家の変な血混じってるんかな?王家の血の者は皆そうなんかもしれない。


「でも宝珠はレベル上げに使いたいから次の新月まで取っておくよ」


「そうか…王子は真面目だの。ならば気絶させるしかないな!手を繋いで目を瞑れ!我が一瞬で殴って気絶させてやる!」

 デンジャラス!!


「仕方ないですわ…ジークヴァルト様…」

 とクラウディアが手を差し出す。


「ううっ!こんなことなら国に置いてきた女神人形持ってくりゃ良かった!!ハクちゃん!あんまり痛くしな…」


 ゴスッ!!


 ハクちゃんに殴られて俺とクラウディアは仲良くぶっ倒れた…。


「ひっ!死んでないよな?ジーク達!!」


「大丈夫だ!これでも加減しとる。本気でやったら死んどる」

 とハクちゃんは言った。


 *


「うぐっっ」


「あ…来れましたわね…」

 クラウディアと再び神殿に来れた。

 しかしそこで見慣れぬ人影があった。


「え?」

 向こうも気付いた。

 黒髪に茶色の瞳…明らかに日本人顔!!

 無表情の美少女タイプだった。

 まさかこいつ!!


「ヘルマ帝国の聖女か!?」

 と言うと聖女らしき日本人は…


「私は…霜月明日香よ…貴方…転生者かしら?魂が私と同じ日本人特有のオーラが見えるわ!そっちの子はこの世界の子ね」


「なっ!オーラって!そんなの見えるのか!?」

 流石チート転移者!!


「そうよ…私日本に帰りたいけど…もう無理ね。帰った所で誰も気付かない…どうせ行方不明扱いよ…貴方…日本での名前はなんて言うのか覚えてる?久々に聞きたいのよ同郷の人の名前くらい」

 と明日香は言った。


「前世の俺はもう死んだ!俺はもうジークヴァルト・ゼッフェルンとして生きている!それにお前はブッシュバウムを壊した!仲良くできるかよ!」


「あら…残念だわ…ここが痛みを感じないところじゃなきゃあっさり殺していたかもしれない…残念だわ…」

 ひっ!何だこいつ!危険思想すぎる!


「ジークヴァルト様に危害を加える気ですか?この方を傷つけると言うならあちらの世界に戻った時は私が貴方を殺しますわ!」

 とクラウディアが俺を守るように前に出た。


「………勝手にしたら?殺せるものなら。私ね…不死の身体なの…死ねないのよ…でもね…女神レシリア様の言う通りにこの世界を全部レシリア信仰にできたら…私をようやく解放して死ねる身体にしてくれるの…」


「なっ…!!なんだって!?」

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