第42話 ヤンデレの弟は侮れない

 それから俺はリヒャルト王子と会った。

 あのヤンデレの弟王子。やはり黒髪で兄とよく似ているがしっかりとしていた。


「奇跡の王子…ジークヴァルト殿下!此度の兄の過ち…知らぬ事とはいえ大変に失礼を致しました。申し訳ありません!我が国でできうる限りの謝罪を!」


「…いや…リヒャルト王子からは大変な贈り物や支援をしてもらいました!それについては感謝します!…ニコラウス王子はどうしているんですか?」


「兄には他の婚約者ができました。今はその方に夢中です。本当にご迷惑をお掛けしました」


「えっ!?婚約者!?本当に?クラウディアのことをあんなに想っていたようだけど!?」

 するとリヒャルト王子は少し顔を曇らせ…


「兄の目の力を封じて惚れ薬を仕込み元々の婚約者候補と無理矢理婚約させました!!こちらもブッシュバウム国を敵に回すようなことはどうしても避けたかったのです!!」

 えええーっ!?そ、それはいくらなんでも…。ヤンデレ可哀想じゃ!?


「どうしても我が国にもジークヴァルト様のあの力を!一国から丸ごと魔物を消してもらいたいのです!!その為なら兄など犠牲にいたしましょう!元々兄がジークヴァルト様の婚約者に手を出そうなんて愚かなことを考えたのがいけないのです!……それに兄の婚約者には既にお子が出来たと暗示にもかけましたから結婚も間近でしょう!」

 やり過ぎやろーーーー!!!

 こっわぁーい!!弟も怖い!腹黒通り越して兄を完全に操作してやがる!何が狙いなんだこいつはっ!!


「どうしてもとは何だ?アルデン国は恵まれているようだが?金鉱山とかあるのだろう?」


「我が国は確かに資源が豊富です。それは我が国に神獣ドラグーが棲んでいるのも関係しているのかもしれません!竜は富を与えると伝承にありまして。僕は見たこと無いんですが。しかし…ひと月前より国に異変が起きました!謎の黒き霧が国中に発生し謎の病で倒れる者が続出しております!…そんな中…隣国の王子のことやあの光のことを聞きました!」


「…なるほど…それであんなにお詫びの品やこうして貴方が来たというのですね」

 自分の国が謎の病で倒れている…流石に俺でも一人一人の治療となると難しいし時間がかかり過ぎる…。コンちゃんの宝珠を満月の日に使ってレベル上げしても得られるかは判らない…。やはり国ごとの浄化しかない。


 それにドラグーがいるだって!?それは初耳だ!ちょっとアルデン国に興味が沸いてきた!


「当初は兄が貴方に相談して…ブッシュバウム国には奇跡の王子が何十年に一度産まれると聞いた伝承がありましたのでそのような方がいないか調べて来るはずでした。しかし…」


「あー…本来のことを忘れてクラウディアに夢中になったのですか…」


「そうです!!決闘の後に傷を治してもらったことに御礼すら言わず目的を忘れてのこのこ帰国して巨乳怖いとか訳解らないことを言ったり、次はどうやってクラウディア様を落とすかとか閉じ込めるかとか言ったりして使い物にならなくなりました!!」

 オーなんてこったい!流石ヤンデレ!!

 あ…でも…


「あの場にはレオがいたろう?あいつの従者の!あいつから説明があったらあの時、この話が出ていてもおかしくなかったのでは?」

 レオは俺がニコラウス王子の頬の治療をしていたのを見ていたはずだし、周りがガヤガヤ言ってたのにも気付かないはずない…。


 するとリヒャルト王子は頭を抱えた。


「レオは…兄に…決闘中あの巨乳女に邪魔されないように何とか引き止めておくようにと命じられたらしく…傷を治した実際の場は見ていないのですが周囲の反応で気付きました。それで兄のところに戻ろうとしたら巨乳女が兄の方へと行ってしまい慌てて追いましたが…兄は恐怖からさっさと国に帰ったのです!レオも説明する時間もなく一緒に帰って来ました…」

 ギリギリとリヒャルト王子は思い出して言う。


「ジークヴァルト殿下がお望みならあの二人を暗殺して僕は良き王となりましょう…どうですかね?」

 おいいい!すっげえ天使みたいな笑顔ですっごい腹黒いよ!兄貴暗殺するって堂々と言ってるよ!!


「いや…まぁ…そういう事情なら…わ…判りました…。とりあえずは…その…アルデン国を救いに行きましょう…」

 って言うしかなくね?だってなんか笑顔怖いし!断ったらこの子何するかワカンナイヨ!?


 あ…勝手に行くと言ってしまった…。クラウディアの了承もせず…。


「あの…」


「はい?何ですか?兄が邪魔なら来訪までに首をはねておきますよ?お義兄様…あっ…すみませんつい…いつもエリーゼちゃんと手紙をやり取りしているので申し訳ありません!ジークヴァルト殿下!」


「いや…いいよそれは…」

 そうだった!こいつロリコンでもあったわ!うちのエリーゼちゃんはこんな危険な天使の皮被った腹黒ロリコンには嫁にやらんからなああ!!


「それより俺はドラグーが気になります!ドラグーに会ってみたいのです…。それならばアルデン国へと行きます」


「ドラグーに…。解りました!ドラグーの居場所をジークヴァルト様が来られるまでに国中総出で探します!!ですからどうぞ、我が国を救ってください!!奇跡の王子様!!」

 とリヒャルト王子は頼んだ。


 腹黒ロリコンでも…国を思う気持ちは判った。

 仕方ない…なんとかしてクラウディアに頼むしかないな!


 と俺はクラウディアの帰りを次はあの元奴隷の美少年の応対をしながら待つことにした。

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