第36話 イケメン遭遇率が高い!

「…可愛らしいお嬢さんだな!そそるな!男は殺して金を奪っておくか!」

 チンピラ共はニヤニヤ笑いながらクラウディアに近付く。

 しかしクラウディアが髪の毛であっさりと男たちを片付けてしまう。

 うわぁ…強ーい!


 イケメンのチンピラがヨロヨロ立ち上がり…


「ま、待て…お前…名前をせめて…」

 言わせるかよおおおお!

 俺はまたクラウディアと逃げた!

 違う路地裏に入ると今度は鞭に打たれた奴隷の美少年が!!ここもおおおお!?


「まぁ!可哀想に」

 いやっ!確かに可哀想だけどね!!

 クラウディアが止めに入った。


「何だい!うちの奴隷に何しようが勝手だろ!」


「奴隷と言えど可哀想ですわ!私が買って…」


「俺が買うわ!!!」

 と俺は金貨を虐めていた奴にバシンと投げつけ少年を連れてクラウディアと人気のない所で治療して首輪を外した。


「さぁ!君はもう自由の身だ!何処へでも行きなさい!!」

 と言うと…美少年は泣き出し潤んだ瞳でクラウディアを見た。


「行く所…ない…」

 そりゃそうだよなーー!このままではまたクラウディアがじゃあうちにとか言って美少年に喰われちまうわ!!


「判った…」

 俺はごそごそと銅貨と銀貨を渡して


「いいか?それで服を買い着替えてうちにー…あー…えっとー…」

 身分を晒すのか…困っているとひょっこりと仕方ないと現れたフェリクスが


「彼のことは私にお任せくださーいで…いや君達」

 と言った。付けてやがったな!!二人きりと言ったのに!!

 軽く睨むがフェリクスに任せておいた。


「先程からなんなんですの?」

 と言うのでもはや俺は覚悟を決め、事情をまた説明した。


 *


「では顔のいい男性が私の前に現れたら速攻で惚れられるというのですか?なんですかそれ!!気持ち悪いですわ!!はっ!まさか王子もその効果が!?」


「いや俺は違うし!確かに初めて見た時からクラウディアは美少女で可愛いと思ったけど一目惚れとは違うような…。そん時は別にこんな…気持ちじゃなかったというか…とにかく俺はいろいろあって気付かないうちに少しずつクラウディアが好きになっていったのだから、他の奴と違うからな!他のイケメンなんかクラウディア見ただけで惚れてたじゃん!」


「そ…そうですの…確かに一目見ただけで惚れるなんて惚れ薬でも無ければ起こりませんわよね?それに嫌ですわ私そんな…魔性の女みたいな扱いは!」

 そう…本当に嫌だ。顔のいい男性が私を見ただけで惚れるとか何事かと思う。ジークヴァルト様は違うと言ってたし。確かにあの時は私なんて淑女らしからず部屋の扉を蹴破って乱入しましたし惚れるわけがないと思ったので素直に信じることにした。


 う…ジークヴァルト様は私が好きだと何度か言ってくれたのに私はいつも照れ臭くて誤魔化してしまいますわ…。もし髪が照れで暴走して王子の首を落としたらと思うと…。好きな方にも素直になれないなんて…。私こんなのでちゃんと王妃になれるのかしら?


「というわけでこれからクラウディアの前にイケメンが現れたら気を付けような?」


「は…はい…」

 と私は笑った。

 しかしそれに王子は照れて…


「あ…クラウディア…その!いっ一回でいいからギュッってしていい?」

 の言葉に笑顔が固まりかけた。


「え?」

 この路地裏には私達二人でこんな所で!?と思ったけどもはや他に行くとまたそのイケメンとやらが出没する可能性も無くもない。あれだけの遭遇率は何なのかと思うけど。

 戸惑いながらも震える髪を抑えて


「あ…ど…どうぞ?」

 と言ってみる。ジークヴァルト様の蒼く澄んだ瞳が大きくなり私を捉えて恥ずかしい。

 おずおずと近づいてポフリと王子の胸に収まると静かにジークヴァルト様が抱きしめてくれる。嫌悪感がない。その時頭巾の結び目が緩んでいたのかハラリと下へ落ちてしまった。


「あ…」

 と王子が拾おうと離れようとしたので私は


「後でいいですわ」

 と言った。

 するとそのまま王子は抱きしめた。

 顔が熱い。全身も熱い。

 後王子の匂いが…。

 するとジークヴァルト様が


「くく…クラウディアは…とても柔らかくて良い匂いだね…」


「ふぐっっ!!」

 同じことを考えていましたの?それにやはりドキドキしますわ…。

 そして私の髪を猫みたいに撫でながら王子は言った。


「俺の前世は…こんなさ…イケメンじゃないんだよ…ただの普通の顔の普通の若者だ…。本当はクラウディアのような美少女に惚れてもらう資格はない…と思う」


「私は…外見など気にしませんと前にも言いましたわ…」


「クラウディアはやはり中身も可愛い…」

 と王子が私の額にキスをする。

 ビクっとして見上げると優しい視線が絡んだ。どちらともなくそのまま顔が近づいた所で


「あれ?その赤い髪はもしかしてクラウディア様かな?」

 と聞き及んだ声がした。


「うあっ!!」

 王子がビックリして飛び上がった!!

 そこには…幼い頃屋敷で剣と絵を教えてもらっていた私の師匠がいい笑顔でそこにいた。

 その顔はイケメンだった。

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