十節 地下二五〇〇メートルの復讐(伍)

「――ユーディット、第二戦闘班はそれだけしかいないのか。他の探索者はどうなったんだ!」

 シルヴァ団長が駆け寄った。

「ユーディット、エレミアはどこなの?」

 レオナ副団長は歩み寄って訊いた。

「――はあ、知らないよ」

 ユーディットが膝から手を外して身体を起こした。

 オレンジ色の髪が、汗ばんだ頬に貼りついている。

「まさか、お前、エレミアを置いてきたのか?」

 レオナ副団長の眉間が凍えた。

「エレミアは勝手に残ったんだ。私の所為じゃない」

 ユーディットが横を向いて顔を歪めた。

「ユーディット、正確に答えろ!」

 レオナ副団長が怒鳴った。

「毎度毎度、本当にうるせえな、この女――」

 ユーディットの眼光が鋭くなった。

「ユーディット、ルシア団長とゲバルド副団長はどうした?」

 顔をしかめたシルヴァ団長が睨み合う二人の女の間へ割って入った。

「ああ、あいつらもいないね。はぐれたのかな。死んだかもね」

 ユーディットが周囲を見回した。合流した第二戦闘班は休む暇もなく脇道の封鎖に協力している。積極的に戦っているわけではない。戦わなければ死ぬから戦い続けているだけだ。

「――使えない女」

 レオナ副団長が吐き捨てた。

「さっきから、あんた、何だって?」

 ユーディットの瞳で殺意が鎌首をもたげている。

「お前ら、こんなときに、モメるなよ!」

 シルヴァ団長が怒鳴ると。レオナ副団長とユーディットはお互いの顔を相手から背けた。

「全体、撤退を開始するぞ! アドルフ団長、収束器フォーカス持ちをまとめて――」

 ユーディットから顔を背けたままのレオナ副団長が声を張り上げたが、その命令は止まった。

「――スロウハンド冒険者団の奴らがここにいない?」

 ここから消えたものを睨んでレオナ副団長が呟いた。

 スロウハンド冒険者団の五十名余の姿が見えない。

「いないだって?」

 眉を強く寄せたユーディットがレオナ副団長を見やった。

「どっ、どういうことだ、レオナ?」

 シルヴァ団長が声を震わせた

「尻尾を巻いて逃げたか――もしくは、最初から、この状況を作って逃走することを計画していたか――」

 レオナ副団長は隅々にまで視線を走らせたが、やはりスロウハンドの団員は一人も見当たらない。

「もしかして、メンヒルグリン・ガーディアンズも、アマデウス連合を見限って離脱したの?」

 ユーディットの眉間が憎悪で燃えている。

「事前に申し合わせた上で裏切ったとも考えられる」

 レオナ副団長は戦況を見つめた。第二戦闘班が連合本部へ合流して人員は増えた。しかし、主戦力だったスロウハンド冒険者団の戦力が消えたので差し引きで連合本部の戦力はマイナスだ。コボルトの軍勢に脇道を突破されるのは時間の問題に見える。おそらくは、次にグレンデルの突撃があったとき、アマデウス連合本部は決壊――。

「ねえ、ちょっと、これどーすんの、レオナ副団長さん?」

 ユーディットが皮肉な微笑みを浮かべた。レオナ副団長は頬に右手を置き左腕を胴に巻きつけて沈黙している。考えごとをしている仕草だ。

 その横顔は冷静だった。

「み、見限ったとか裏切ったとか――レオナ、だから俺は反対だったんだ。スロウハンド冒険者団やヴァンキッシュ冒険者団の残党を俺の連合に誘うと、そういう危険があるって――!」

 シルヴァ団長がレオナ副団長へ詰め寄った。

 その青臭い声が完全に裏返って、周辺にキンキンと響く。

「シルヴァの要求だった。可能な限りの戦力を集めてネストを攻略する。そのあと、地上の戦争に王国の義勇軍として参加。魔帝エンネアデスを倒し、英雄として祖国へ凱旋するのが俺の夢だって――」

 レオナ副団長はシルヴァ団長へ視線を送らずにいった。

「そ、それは、確かに、俺はそういったけど――」

 シルヴァ団長が視線を斜めに落とした。

「――とにかく、今は撤退が最優先」

 レオナ副団長は小さい溜息と一緒に全面撤退を決断した。

 益々顔を引きつらせたシルヴァ団長が、

「てっ、撤退してどうするんだよ。まだ、合流していない連合傘下の探索者も多いんだぞ。このまま俺たちだけで逃げ帰ったら信用を失った俺の連合は崩壊して――」

「――つべこべ抜かすな。このド低能」

 レオナ副団長の凍えた声だ。

「あっ――」

 シルヴァ団長は絶句した。

 レオナ副団長の目は明らかにシルヴァ団長を軽蔑している。

「――シルヴァ、連合レイドはまた立て直せばいいじゃない?」

 レオナ副団長はすぐに微笑んで、いつもの甘い声でいった。

「あ、ああ――」

 泣きそうな顔でシルヴァ団長は頷いた。

「貴方が持つ魔導の力を使えば裏切りものへ簡単に復讐できるでしょう。そうね――独裁者の蜘蛛ディクタートル・アラーネアを使えばいいんじゃない? あれなら、穏便に始末がつくし」

 レオナ副団長がシルヴァ団長の自信を喪失した顔から視線を外した。

「――そ、そうだな、それがあった」

 シルヴァ団長がはレオナ副団長をすがるような目で見つめている。

「王座の街へ生きて帰還する」

 レオナ副団長はシルヴァ団長へ視線を返さずにいった。

 自分にいい聞かせるような口振りだ。

「う、うん――」

 頷いたシルヴァ団長はそのままうなだれた。

「そうだね。まず生きて帰らなきゃ」

 ユーディットもそっぽを向いたまま頷いて同意した。

「そうよ、私たちの生存が最優先――ジャン=ジャック組合長!」

 レオナ団長が怒鳴った。

「なっ、何だ、レオナ副団長!」

 離れた位置からジャン=ジャック組合長が怒鳴り返した。ジャン=ジャック組合長は、脇道を封鎖している集団に交じって発砲している。

「できるだけ連合の戦力を維持しつつ、北へ――上がり階段まで撤退する。ジャン=ジャック組合長は銃班をまとめて退却する私たちの援護をしろ。アマデウス冒険者団は私のもとへ集合だ、急げ急げ!」

 レオナ副団長が声高に号令した。

「そ、そんな! 俺たち組合だけでしんがりを務めるなんて、とても無理――」

 表情を固めたジャン=ジャック組合長が、レオナ副団長へ駆け寄ってきたが――。

「あっ――!」

 シルヴァ団長が目の前の光景を凝視した。

 ユーディットの眉間にあった厳しい険も驚きで消える。

「命令したらすぐやれよ、この愚図野郎!」

 レオナ副団長は、シルヴァ団長の腰にあった導式剣を引き抜き、その切っ先をジャン=ジャック組合長の喉元に突きつけていた。

「あっ、ひっ!」

 真っ青になったジャン=ジャック組合長が口をパクパク動かした。


 §


 場所は地下九階層北西区の上がり階段付近だ。

 前もってボゥイ団長から連絡を受けていたメンヒルグリン・ガーディアンズは、第二戦闘班から離脱して上がり階段へ向かっている。大人数を抱えるアマデウス連合本部へ異形犬の戦力は集中しているので、メンヒルグリン・ガーディアンズが進む小路は安全に見えた。ただ未探索区なので照明が確保されておらず暗い。メンヒル・グリンガーディアンズは隠密に行動するため照明を確保していなかった。視野は導式ゴーグルや防毒兜についた暗視効果を頼っている。

「ルシア、これからどうする?」

 異形の闇を歩くゲバルド・ナルチーゾ大尉が訊いた。

 彼の本来の立場はタラリオン王国陸軍の幕僚運用支援班に所属する大尉だ。

「むろん、ボゥイの警告に従って、このまま王座の街まで歩いて帰るのさ」

 ルシア・フォン・トルエバ中佐が微笑んだ。

 ゲバルド大尉と同様、ルシア中佐も身分を詐称している。

 身分を詐称するのがこの集団の職務だ。

 メンヒルグリン・ガーディアンズの正体はタラリオン王国軍の幕僚運用支援班――通称で厄病神カラミティの工作班である。メンヒルグリン・ガーディアンズは半年ほど前まで北カントレイア大陸中央周辺で活動をしていた実在の冒険者団だが、彼らはタラリオン王国陸軍の補給部隊の警護の仕事を請け負った際、魔帝軍のゲリラ部隊の奇襲を受けて全滅した。メンヒルグリン・ガーディアンズに所属していた冒険者たちは全員が死亡。詐称した身分へ説得力を持たせるため、厄病神たちは過去にあった冒険者団の名義と戸籍を拝借している。

「悠長なことだな」

 ゲバルド大尉が遠くから聞こえたコボルトの鳴き声に眉をひそめた。

「他に手はないだろう。部隊、もう少し西回りで行くぞ」

 ルシア中佐が部隊へ指示を出して十字路を西へ折れた。ルシア中佐に追随する厄病神たちは黙ったまま続いた。

 ゲバルド大尉が足早にルシア中佐へ歩み寄って、

「ルシア、おい、待てよ。シルヴァを俺たちの手で始末――」

「――ゲバルド」

 ルシア中佐が遮った。

「何だよ、ルシア」

 ゲバルド大尉が癖のある顔をムッと曲げた。

「功を焦るな」

 ルシア中佐が笑った。この二人の男は王国軍西方学会の学生だった頃からの旧友でもあるから、上官と部下の関係でも軽口を叩き合う。この双方、上司からも同僚からも仕事ができると一目置かれている軍人だ。職場ではお互い良きライバルでもある。ゲバルドはルシアに出世争いで一歩遅れていた。ルシア・フォン・トルエバは末端といえども貴族階級出身で、ゲバルド・ナルチーゾは市民階級の出身になる。

 その身分の差も出世の具合と関係があるのかも知れないが――。

「――焦っていいだろ。シルヴァ・ファン・アマデウスが魔導式陣を精神変換サイコ・コンヴァージョンで発現して起動させるのを、ルシアだって何度もその目で見た筈だ。奴は間違いなく魔人族ディアボロスだぞ。どういう理由でヒト族の容姿なのかはまだわからん。しかし、シルヴァが魔帝国の破壊工作員である可能性は高い。そうでなくてもシルヴァが敵国の種族なのは間違いない」

 ゲバルド大尉はルシア中佐の横顔を見やった。

 近々、非公式な諜報機関だった幕僚運用支援班を廃して設立される王国陸軍諜報局。その局長候補と噂される同僚の――ルシア中佐の横顔は面白そうに笑っている。長引く戦争で政治的発言力の増したタラリオン王国軍上層部――三ツ首鷲の騎士団はこれまで隠匿していた幕僚運用支援班を非公式の諜報機関から正式な諜報局へ昇格させようと画策している。

「シルヴァが魔帝国の間諜か――奴はそんなに器用ではなさそうだがね。ともあれ、ゲバルド。シルヴァ・ファン・アマデウスの抹殺指令は上層部うえから出ていない」

 微笑んだままルシア中佐がいった。

 まだ局長候補の男には作戦の最終的な決定権が与えられていない。

「指示がなくてもかまわんだろう。騎士オリガ班長は現場の判断で『目標』を消しても細かいことをいわんぜ?」

 ゲバルド大尉の発言は正しい。

 彼らの上司は暴力的で短絡的な問題解決方法を最も好んでいる。

「私たちの仕事はあくまでシルヴァの監視だ。それに、シルヴァと正面から戦ってもこの手勢では勝てんよ」

 ルシア中佐は柔和な態度を維持したままいった。

 熱っぽく語るゲバルド大尉とは対照的だ。

「しかし、ルシア――」

 顔を歪めてゲバルド大尉が食い下がった。

「ゲバルド。元、導式剣術兵ウォーロック・ソードマン中隊の隊長、ロジャー・ウィズリー大尉の実証ケース

 ルシア中佐が鼻の横に人差し指をあてがった。

 これは彼が他人を説得するときに見せる仕草である。

「ルシアのあれが始まるぞ、くそっ!」

 ゲバルド大尉が顔をへし曲げると、追随している集団から少しだけ笑い声が漏れた。学生時代、同級生や先輩ときには教官までも、ルシア中佐がこの姿勢でやり込めるのをゲバルド大尉は何度も見てきた。むろん、このゲバルド大尉本人も被害者のうちの一人だ。

 ルシア中佐がアレを始めた。

「こちらから接触して、Δデルタ型導式機動フレームを提供したロジャー・ウィズリーは、シルヴァの返り討ちにあって死亡した。シルヴァは未確認の剣術を使う。クジョー・ツクシが使うものと似た剣術だ。識別名・亜空間斬撃ディメンション・スラッシュ。現状、シルヴァが扱う亜空間斬撃への対応は不可能と判断する」

「それはそう、だが――正面からではなくても、毒を使うなり女を使うなり、シルヴァを消す手段はある。戦闘能力は驚異的だが、シルヴァはわきの甘い性格だ」

 反論したゲバルド大尉はしかめ面だ。今は亡きロジャー団長と、その彼が率いていたスロウハンド冒険者団が、アマデウス冒険者団へ攻撃する兆候を見てとったルシア中佐の指示で、ネスト制圧軍団の兵器払い下げ部門へゲバルド大尉が手を回し、陸軍で配備が始まったばかりのΔ型導式機動フレームを供与した。ロジャー団長がΔ型導式機関フレームを使用してシルヴァを葬ってしまえば手間が省ける。返り討ちにあっても、シルヴァの戦闘能力を推し量ることができる。そんな考えからだ。

 この工作でロジャー団長は死亡。

 シルヴァ・ファン・アマデウスは魔帝軍でも数少ない魔導師メイガス級の戦闘能力を保持し、さらに未知の剣術――亜空間斬撃ディメンション・スラッシュを扱う事実が判明する。この報告を受けた上層部は、シルヴァ・ファン・アマデウスへ暴力を使った対応を取ることは危険と判断、「魔人シルヴァと彼が率いるアマデウス冒険者団の監視に徹せよ」と厄病神たちへ厳命した。この作戦においての上層部はネスト管理省長官――老騎士バルカになる。

 本来なら厄病神直属の上司の騎士オリガは、老騎士バルカが下した様子見の判断に不満気な顔だった。しかし、老騎士バルカと一緒にいるときの騎士オリガは借りてきた猫のように大人しい。その場で騎士オリガは反論しなかった。しかし、その代わり騎士オリガは民間人ツクシに接触して何か裏工作をしたようで――。

「――ゲバルド、現状をよく見ろ」

 ルシア少佐がいった。

「異形犬の軍勢がアマデウス冒険者団の全員を始末する可能性はかなり高い。アマデウス連合が地下十階層に到着する前から、コボルドの軍勢は戦闘の準備をしていた。この事実から、何ものかが先行してコボルトの『巣』を刺激してきたと推測できる。これはアマデウス連合に対する意図的な攻撃だ。おそらく、シルヴァとアマデウス冒険者団に恨みがある、ヴァンキッシュ冒険者団とスロウハンド冒険者団の手引だろう。そう考えると戦場の敵影は今以上に増える。長居はできん」

「巣、か――導式偵察機ドローンで確認した『黒鉄の繭』が結集している場所――作戦目標へ誰かが潜入して異形犬へ攻撃を仕かけてきたのか――そうなると、やはり俺たちの手でシルヴァを始末して事態を早期に収拾しないと、作戦目標に危険が及びかねんだろ――」

 ゲバルト大尉はぶつぶついっている。

「少なくとも今のシルヴァは――いや、今は誰も黒鉄の繭に近づけん。全員が地下十階層から撤退すれば厄病神カラミティの保護対象――黒鉄の繭から当然、全員、遠ざかる。これで私たちの任務は達成されている」

 ルシア中佐は笑顔だが相手に有無をいわさない口調だ。

「――まあ、そうだけどな」

 視線を落としたゲバルド大尉は、ルシア中佐の少し後ろを歩いていた。

「ゲバルド、早く行くぞ――」

 促したルシア中佐が足を止めた。同時に集団の足も止まった。この小路の先は北西区の大通路脇へ続いている。

 大通路には導式の照明があった。

「あれは――」

 ゲバルド大尉が呻いた。

「クジョー・ツクシ――」

 ルシア中佐が呟いた。彼らの視線の先にいたツクシとゴロウは暗い脇道の奥で息を潜めていた厄病神の集団に気づかず南へ歩いていった。ゲッコはピタリと足を止めて、こちら側を見つめている。

 ルシア中佐が部隊へ引き返せと合図を送ろうとしたところで、

「うぉーい、ゲッコ、どうしたァ!」

 ゴロウのダミ声が響いた。

「――ゲロゲロゲ」

 ゲッコはツクシとゴロウを追っていった。

 ツクシたちの足音が完全に消えてからだ。

「ヴァンキッシュ冒険者団とスロウハンド冒険者団の連中は、死神の再召喚に成功したのか――」

 ゲバルド大尉が硬い声でいった。

「この階層に導式生体感応器が設置されたら好きに動けん。王座の街から地下十階層へは導式エレベーターも建設中だ。民間人がシルヴァ・ファン・アマデウスの抹殺を企むなら、混乱してひとの目が届いていない今こそが絶好機――」

 ルシア中佐は厳しい表情だ。シルヴァ・ファン・アマデウスと同様、クジョー・ツクシも、ルシア中佐や彼の配下にある厄病神は危険人物と見ている。幕僚運用支援班が持つ記録にツクシの経歴は一切残っていないし、ネストで起こった数々の重大事件にツクシは関与していた。さらに、ツクシは王国軍が持つ兵器や戦闘の技術や導式・魔導式を含めて対応不能な剣術――『零秒斬撃ゼロ・スラッシュ』を使用する。その上、ツクシの性格は極端に短気かつ暴力的だ。これはどう見ても一等級に危険な男である。反動分子テロリストである。これを危険視した厄病神たちは彼らの上司へ――騎士オリガや、その補佐役を務めている騎士ギルベルトへ、ツクシに関係する調査報告を何度も行った。

 しかし、

「ああ、あれは放っておけ。気にするな」

 騎士オリガは部下の報告を聞いて笑うだけであるし、

「あの男は二十四時間、虫の居所が悪いからな。下手に関わらないほうが身のためだぞ」

 騎士ギルベルトも(彼の性格から考えると)信じられないほどいい加減な指示を出すだけだった。それでルシア中佐もゲバルド大尉も彼らと作戦行動を共にしている厄病神たちも、「クジョー・ツクシは上層部しか知り得ないような国家最重要機密に関わる男ではないのか?」そんな当て推量をするようになった。

 ツクシに対して厄病神は必要以上に身構えている。

「――ルシア。シルヴァはここから生きて帰れると思うか?」

 ゲバルド大尉が導式ゴーグルを額へ上げた。

「ゲバルド、私は今、シルヴァに心から同情しているよ」

 ルシア中佐は導式ゴーグルを外して笑った。

「ハッ――」

 ゲバルド大尉も短く笑って返した。

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