クリスマスプレゼントは親子の真剣勝負

 大人がどうかは別として、今日は楽しいクリスマス。学校が終わった子どもたちは大喜びである。そんな日だから、今日は軽めの内容でいこう。(本当か?)

 クリスマスプレゼントは、常にただ嬉しいだけのドラマではない。そこには悲劇もまた存在する。でも、その悲劇に悪人はおらず、ただ「互いの自分都合がかみ合わない、よかれと思ってすることが他者に拒絶される」といったことだ。



 その昔、TVゲームといえば任天堂の『ファミリーコンピューター』という時代があった。今ではPS5の品薄が問題になっているが、それほどではないにしても当時も似たような問題はあった。あまりにに人気過ぎて、子どもたちにプレゼントを贈るようなクリスマス商戦の時期には手に入りにくいということがあった。

 当時実際にあったことだが、親はTVゲームのことなどよく知らない。子どもが「ファミコンがほしい」と言っても、親によっては「TVゲームのことよね」と、TVゲームという大きなくくりで考えてしまう。で、おもちゃ屋に行って適当なものを買ってしまう。カセットビジョン・PCエンジン・メガドライブ等々、それだって親にしたらTVゲームなのだ。「これでいいでしょ」と適当なものを選んで、サンタの贈り物として枕元に置いてしまう。そして朝、期待を大にして包みを開けた子どもは絶望のどん底に突き落とされ、以後サンタはマフィアのボスなんか目じゃない「悪人」認定され、数年は嫌われる。

 今のは、親の認識不足が悲劇の原因だが、別バージョンもある。さっき言ったが、ファミコンを手に入れるのに、クリスマスの直前(ひどけりゃ前の晩)におもちゃ屋に行くなど愚かの極みである。在庫が残っているわけがない。

 で、考えの甘い親は店に行くが品切れ。でも、親心というのは時に厄介で——



●言われたものこそなかったが、なかったらないで何とかベストを尽くしたい親心。



 そこで、親は決して悪意や意地悪じゃなく、仕方なくまだ売ってるファミコンじゃない別のゲーム機を買っていく。ごめんね、これでゆるしてね、という感じ。

 子どもにしたら、その親心はとても受け入れられないし理解できない。

 親は親なりの愛であふれているので、「それじゃなきゃ要らない」「どんなに愛がこもってようが、違うものなどこれっぽっちも価値がない」というところに考えが及ばない。そこで、親と子は衝突する。

「こんなもん要らねぇんだよ! このクソ親」

「なんだと、確かに悪かったけどその言い方はないだろう。こっちだって頑張ってけど仕方なかったんだ。プレゼントがあるだけ感謝しなさい」

 筆者も小学校5年生の時、機動戦士ガンダムのプラモデル・通称「ガンプラ」をサンタに所望していた。親はガンプラが大人気で品薄であることなど知らず、それどころかプラモデルと超合金の区別すらつかず、その子どもっぽい超合金のほうがクリスマスの朝枕元に置かれていて、最悪のクリスマスだったことを覚えている。



 そして今、自分が親の立場になって、子どもの頃は思ってたんと違うプレゼントをサンタとして送る親を悪魔のように恨んだことが悔やまれる。

 こんな苦労があったのかぁ、と。ちなみにうちの小さな息子は、あるゲームソフトを欲しがっていたので「在庫が切れてはまずい」と結構早めに取り寄せておいた。しかしその用意周到さがあだとなった。実は一週間ほど前息子が「実は欲しいと思っていたゲームが変わった。いまからでもサンタ、プレゼント変えてくれないかな?」と言ってきた。


チャラリーン、鼻から牛乳~!


 自分の幼少期の学び(親がテキトー)から早めに手に入れたのに、それが逆にあだとなるとは! だから私は仕方なく言った。



●サンタさんは遠い国にいて、メールも電話もないからすぐには伝わらないよ。

 何日もかけて日本に来るから、もう今じゃ買ってしまっていると思うから、もう今から言っても難しいと思うよ。もう、前言ってたので納得しておこうね。



 人間がすることには、どんなことでも限界がある。私は頑張ったが、子どもにとって今年のサンタは評価が低いかもしれない。でも、それも含めて人間というものなんだよ。考えや立場の相違から、悲喜こもごものドラマを生み、味わいにここ地球にきてるんだからさ。お互いまぁ頑張ろうよ——



 ちなみについさっき、子どもがこれを書いている私の部屋に入ってきて、「このゲームやっぱり楽しい! これでもよかった!」とプレイしている。ようやく胸を撫でおろせた今年のクリスマスであった。

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