大きな確率に賭けない生き方
男:『デートどこに行こうか』
女:『あなたが行くところなら、どこでもいいわ』
男:『映画にしようか』
女:『ええ……』
男:『どこでもええゆうたやないか~~~~!!』
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今日は、残念な生き方の具体例を挙げるので、できたらできるだけしないことを勧める。冒頭に挙げた男女の会話だけで筆者の言いたいことが汲み取れるならば、以下のお話を読まずともよい。ただし、私の書く文章が好きとかもっとしっかり胸に刻みたいという人ならば、お時間はいただくが先を読み進めるのもよいだろう。
織田信成というスケーターがいる。その昔、彼が試合本番に臨む前にスケート靴のひもが切れた。
普通なら、そんなことになればそのひもは使わない。まったく新しい靴に変えるか、ひもを新しいものに変えるかするだろう。
ただ、ここで彼はむずかしい選択を迫られた。
①靴を別のものに替える。あるいはひもを新しく通す。
ただ、この選択を取った場合、安全性は保障されるがひものかたさも靴(自分の足)へのなじみ方も慣れたものとは違うため、最高のパフォーマンスが出せない可能性が高い。
②応急処置で、切れた部分を固く結んでその試合だけは乗り切る。
リスクはあるが、過去に「試合中に靴ひもが切れた」という前例はない。めったに起こらないことなのだ。ここで「何事もなく演技を終えられる」という勝てる可能性に賭けよう。それでうまくけば、よい成績を収めることも狙える。
織田選手は、②に賭けた。しかし、人生の展開というものは本人の予想や期待をよく裏切るもので、その「まさか」が起きた。結果論ではあるが、彼はちょっとでも起きて困る可能性のあることなら、完璧に避けるべきだった。「多分大丈夫だろう」でやってしまったことは、その可能性が分かっていたという確信犯になるので、まったく言い訳ができない。また、する資格もない。
記事冒頭の男女の会話は、嘉門達夫さんのネタからいただいている。
女性は、デートで映画はちょっとないな、と思っている。でも、「あなたの行くところならどこでもいいわ」と言えたら相手にも好印象だし、よりによって映画とは言わないだろうという本人なりの勝手な読みがあり、「映画と言われるリスクはゼロではないが低いと見たので、何でもいいと言う賭けに出た」。うまくいけばもちろん丸儲けだが、万が一「当たった」場合、悲劇が待っている。
筆者も、子ども時代親が外食に行こうと言い、「どこがいいか」と聞いてきた。その時多分筆者は生活上何か気にかかることがありうわの空で、普段なら喜ぶがその時はどうでもよかった。なので「どこでもいい」と返事した。
だが、それで父が運転して車で向かった先は、筆者が好きじゃないお店だった。筆者は、確かに希望を聞かれた時には投げやりではあったが、いざそこに着いてみると「ここ以外がよかった!」と絶望した。しかしあとの祭りである。
「なんでここなのだ!」と言っても自分のほうに非があることくらい分かったので、始終黙っておいた。
多くの人は、日常の中でこの選択をしていないだろうか。
●万が一のリスクがあるが、それを選択して何事も無ければ大きな利益が得られる。そしてその利益が得られる可能性は失敗する可能性に比べて高い、というところがさらに背中を押す。
しかも、この選択は人間心理の弱いところを突いてくるのがまた厄介なのだ。
●きちっとしたことを選択しようとすると、結構「面倒くさい」し、逆に「損をすることもある」ので、リスクはあるが面倒が省ける選択に大勢が流れる。
今、世界が迷走しているのは、社会が・政治が「リスクはあるのは分かってるけど面倒だし、逆にそれでうまく済めば万々歳」という選択をする流れになっているからだ。そんなことをしているうちは、誰がかどこかで悲運に見舞われ続ける人間社会であり続けるだろう。
その連鎖を少しでも止めたいなら、まずはあなた自身からである。人生の選択において、利益の甘さにリスクを軽視する選択はやめよう。それは何も、まったく冒険するなということではないし、ある面まったくリスクを取らない生き方というのは、それはそれで深みのある人生にならない。
筆者がここで言う「リスクを軽視するな」というのは、うまくすれば得られるものにつられて「合理的かつ的確な判断ができたはずなのに、それを邪魔されるな」ということなのだというふうに汲み取ってほしい。
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