命を懸けている、と認めてもらえるもの

『闇金サイハラさん』という連続ドラマが始まっている。

 これは「闇金ウシジマくん」に登場する、主人公のウシジマに負けず劣らず怖い同業者サイハラ(高橋メアリージュン)というキャラを主人公に据えたスピンオフ的な作品である。

 その第三話で、印象的なシーンがあった。

 ラーメン屋を営む若い夫婦がいた。その旦那のほうは、かつてやんちゃをしすぎて結果サイハラに死ぬ手前まで追い込まれた経験をもつ。でもなんとか立ち直り、今の妻とともに何とか念願のラーメン店を開き、そこそこ味も評判になり日々を生きていた。だがそんなある日、どこでかぎつけたのかサイハラが店にやってくる。

 愛沢(旦那の名前)は悪い予感しかしない。しかしサイハラが言ってきたのは、愛沢の店のチェーン展開である。ラーメンを作る以外のこと(宣伝・営業・資金繰り)はすべてこちらでもつ、と。言葉だけ聞けばいい話だが、サイハラの雰囲気と言い方では裏に何かあるような気がして安心できない。しかし、サイハラには頭が1ミリも上がらない愛沢は、言うことを聞く以外の選択肢はなかった。



 それから数日たって、かつて悪事を働いた仲間が、愛沢の成功を知って店にたかりにやってくる。そこへサイハラが現れ、彼らをボコボコにする。殺してしまおうか、というサイハラに愛沢はゆるしてやってほしいと乞う。オレがこのラーメン屋を開けたように、こいつらだって確かに今まではクズだったが、きっと立ち直れる。コイツらを、新しく増える店舗に備えてのスタッフとして育てようと思う——

 そのやりとりのあと、サイハラと店を襲撃しようとして逆に救われた三人は、愛沢のラーメンを食べる。サイハラは去り際、釣りは要らねぇとテキトーな高額をテーブルに置く。愛沢はサイハラに「お代は要りません」と言う。



●サイハラはいわば大口の出資者、オーナーと言ってもよい立場。

 オーナーなのだから、客と同額のお金をいちいち支払わずとも、オーナー特権でタダで食ってもなんらおかしくない。



●愛沢は確かにサイハラにかつて死ぬほどまでに追い詰められたが、自分も悪かったことを認めている。だから、相手がオーナーどうこう以前に、反射的に相手は食物連鎖上の上の存在と身構えてしまい、お金をもらうなどとんでもないくらいに考えてしまう。



 まぁ、愛沢にしたらよかれと思って「お代は要りません」と言ったのだろう。

 しかし、これにはサイハラが怒った。



〇ラーメンに命かけてんだろ? なら相応のカネは払う



 ここは、すごく考えさせられる場面である。

 サイハラは、そもそもが「金貸し」である。金貸しに絶対的に必要な資質(?)は、カネの亡者であること。がめついこと。ケチなこと。

 それが普段のスタンスであるのだから、さして思い入れも何もない普通の食事だったら「あっそう。タダでいいの」と平気で提案に乗ることだろう。そんな人物が、相手が払わなくていいと言っているのに怒って「払う」というのは、どういう場合が考えられるだろう?



●サイハラは、店のラーメンを食べている。食べているということは、愛沢がいくら言葉の上で「ラーメンに命を懸けている」と言ったところで、結果が伴っていなかったら、サイハラもお代は要らないと言われたらその通りにしただろう。そもそも、そんな勝算のない店のチェーン店化の話など持ってこないだろう。

 しかし、愛沢を怒鳴りつけても払った。ということは、サイハラは愛沢の本気を認めた、ということだろう。価値を認めたものを、いくらタダだと言ってもいその価値に相当するものを還元もせず享受し続けることに人は抵抗を覚える。いや、喜んで払いたいというほうがいいだろうか。



 賢者テラは、本書の文章を毎日書くことではほとんど収入にならない。カクヨムのPVリワードというのはあるが、小学生の月々のお小遣い程度にもならない。

 スピリチュアルTVというサイトで番組枠をいただいて、出演者の一人として配信をさせてもらっているが、それも基本無料。もしよかったっと思ってもらえる人には、「テラ基金(放送が継続できるように)」の紹介はさせてもらっている。PCも消耗品だし、ネット環境の維持も月々結構する。儲からなくても、それくらいには充てれたらと思ってやっている。



 私の文章は、ラーメン屋のおいしいラーメンのように価値が分かりやすくない。大勢の人がそうであるように、エゴが反発して継続して読んでいただけない。まぁ、長い文章は好まれない、という時代的なものもあるだろうが。

 ほとんどの人には分かっていただけなくていい。でも、この世界には目には見えない不思議な『御縁』というものがある。どこかにはこのような話を必要としてくれている人がいて、不思議な力が引き合わせてくれて、その人が喜んでくれたらいい。たとえ一万人に賢者テラはくだらないと言われても、その一人の心に暖かい火をともせたなら、ずっと貧乏でもいい。(ただし死なない程度に!)

 筆者にとっての「サイハラさん」だけがいればいい。私が日々一生懸命書いている、そのことを認めてくれる人がいれば、私はその人のためだけにでも語るだろう。



 賢者テラなら、見る者聴く者がゼロになってもきっとしゃべってるだろ? というツッコミは今回はなしで!

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