Q&Aのコーナー第百五回 「前世記憶があるっていう人がいるけど、ホント?」

 Q.


 たまに「私には前世の記憶がある」っていう人を見かけますが、あれは本当なんでしょうか。言い方を変えると、本当に前世ってあるんでしょうか。それを肯定すれば『輪廻(生まれ変わり)』があるということを認めることにもなり、そうなれば「死んでもその人はずっとその人」であるとする世界一信者の多い宗教・キリスト教が間違いだという大問題にも発展するように思うのですが。



 A.


 すべてはものの見方によって答えが変わってきます。

 死んでもずっとその人は永遠にその人、というのも正しい。

 生まれ変わりがあるというのも正しい。

 ただし、この二つの正しさが両立するためには、死後の世界が「この世の物理的・空間的・時間的制約事からある程度自由である」ことが前提となります。



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『君の名は。』というアニメ映画のヒットに伴い、RADWIMPS の『前前前世』という歌も広く有名になった。

 ここで議論したいのは、前世はあるのかである。



●厳密な意味で前世はない。前世を、自分より過去の者限定とするなら。

 ただ、「前世と言うしか仕方のないもの」ならある。



 私たちの住む世界は、過去→現在→未来 という流れで直線的に流れ、逆流したりCDの音飛びのように急に数年後に飛んだりしない。

 そのような制約が当たり前の世界に住む私たちは、自分が生まれる前の過去に何者かであったのではないか、その生まれ変わりが私で、私が死んだらまた私の魂は廻って、未来の誰かの命として生きるのではないか、と考える。

 実際に「私は前世で中世の貴族の女性だった」「私は昔人気の闘技場の剣闘士で、強すぎて恨まれ最後は陰謀によって殺された」とか、そういうことを公言するような人もいる。そういうことを聞くと、前世ってあるのかなと思える。

 ただし、私たち人間には本当の前世は分からない。なぜなら、前世と言うからには自分のいる時間より直近の過去でないといけない、という制約があるからだ。



●死後の輪廻システムは、この世独特の直線時間軸に配慮したりしない。

 その次元では過去・現在・未来という定義や守るべき順番というものがないため、あなたの前世は未来である場合がある。



 日本文化が描かれた小説が遠い海外で読まれる場合、説明しずらいことは翻訳時にはしょられる場合がある。それを頑張って紙面を割いて説明するよりは、ともかく作者の言いたい話の筋が頭に入ればいいわけだから、足を引っ張る理解しずらい違いの部分はあえて説明を逃げることがある。それは逆もしかりで、海外からの小説も、その説明のために本筋から意識がそれて興ざめしては元も子もないので、やはりそこはあえて削除したりする。本筋の理解に影響しないならなおのこと。

 この世界を越えた次元では、時間・空間という制限がない。



●この宇宙での制限:時間は過去 → 現在 → 未来の流れでしかあり得ない

〇この世を越えた次元での当たり前:時間による制約はない



 未来から今への輪廻もあるのに、この次元に翻訳されると「生まれ変わりは過去に死んだ人からしかあり得ない」という決めつけのフィルターで抹殺されるため、本当に直近の前の人生が未来でもそれは最初から可能性として考えられず、そのさらに前の「過去の誰か」のことだけが探られ、実際は三番目か四番目に前でも過去だから「前世」と認定されてしまう。

 その人が前世と認識する記憶は、純粋なあなたの直前のものではない可能性があるのだ。過去しか認識できないため、未来からの輪廻記憶は意識のリストから外されるのである。で、もっと前の過去の人生を「直近の前世」と誤解する。



 生まれ変わりがあるということを認めると、制約事の多いこの世界においては「あなたは永遠にあなたという存在を保つわけではない」ということになり、その人は死んでもずっとその人としてのアイデンティティを持ち続けることはない。キリスト教的死生観が否定されることになり、実は話題沸騰の統一教会も「その人は一度生まれたら永遠にその人」であるとする立場をとっている。

 だが、それも上位次元において「制約事がない」ことを考えると、頭がこんがらがるが次のようなことが同時に成り立つ。



①人は生まれ変わる → この世の時間軸に従った流儀としてそのようなものはある。ただ、実際のイメージとしては「ある役者が先輩の役者がやっていた劇での役をバトンタッチされ、脚本を託されるようなもの」と考えてもらったほうがいい。

 使命の継承であり、身に起きる可能性の広さの継承とも言える。



②あなたはずっとあなたであり続ける →実はこれも成り立つ。この世界を越えた「並行世界」という別時間軸の世界が無数にあり、そこではあなた自身は変わらず「あなたの選択した可能性だけが変わる」世界だ。それが常に存在するので(すべてが今起こり、終わっており、また始まってもいない)あなたという存在は大きな次元を包括した範囲では消えることはない。今のあなたがたとえ死んでも、別次元では「死ななかった」可能性の世界もあり、また今あなたが誕生した時間軸もある。あなたはどこかで必ず生き続けており、完全に消えることは不可能。

 そう考えると、輪廻というのは狭い世界限定での(疑似)真理ということになる。 



 生まれ変わりはあるけれど、でもそれであなたが消えてなくなるわけでもない。 

 うれしいような、でもちょっと複雑なような……ちょっと頭の理解が追い付かないかもしれない、今回のお話なのでした。

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