同情するなら金をくれ!
昔のヒットドラマで『家なき子』というのがあって、安達祐実が子役の頃主演していた。「同情するなら金をくれ!」というセリフが有名だった。
朝のニュースで知ったのだが、大阪府内の30歳未満の死因の第一位が三年連続で「自殺」だったそうだ。これを受けてあのテレビでおなじみの(笑)吉村知事は自殺対策を急務として相談窓口の設置を知らしめる啓発動画の配信を決めた。
そういうことじゃ、ないんだよな!
自殺 → 悩み事を抱えていた → 聞いてあげられる人、寄り添ってあげられる人がいなかった → じゃあお話をちゃんと聞いてあげられるようにすれば、自殺者減るよね! こう考える人は、頭が悪いか生活に困ったことがない人かのどちらかだ。
えっ、窓口ってそういうお金や仕事のことも同時に解決してくれるところじゃないの? と思う人もいるかもしれない。筆者は実際に困窮して役所に行ってみたことがあるが、ニコニコして話を聞いてくれるだけで現実的な手助けは何もなかった。まぁ、これには市区町村や職員個人の適性差で当たり外れがあるのかもしれない。
※筆者注:とりあえず今夜食べるものがない、泊るところがないという切羽詰まった場合には何かしてくれるが、急には食や野宿の心配がなくて長期的にどうしよう、というケースであればほぼほぼあちらからは何もしてくれない。
さっき挙げたドラマ「家なき子」の主人公の少女は、食べるものがなくてゴミ箱を漁って飢えをしのいでいるところを、通りがかった通行人に見られる。さっきのセリフは、通行人が哀れみの視線と上っ面だけの同情の言葉を向けてきたことに対して放たれた心の叫びである。
思うに、自殺者が多いのに窓口を充実させようとする行政も、食べる者がない少女に大した動機も救う覚悟もない無価値な同情(実は同情ですらない)の言葉をかける通行人も同じことだ。
カネをやる気はないのである。言い方を変えると、自分が何かを負担してまで(責任を負ってまで)助ける気はない、ということである。
●窓口なんかいいから、まずカネを配れ!
もちろん、自殺者の中には経済的な事情でない人もいるだろうから(痴情のもつれとか人間関係の悪化とか)、オカネ配りが的外れになることもあるだろう。でも、筆者は大枠で人を救える何よりの特効薬になると思うのである。
そこまでできないというなら、働ける人間には雇用を提供するという手もある。今は、若者でもないなら仕事に就くことさえままならない。たまに「仕事を選ばなければ何だってある」という意見を言う人がいるが、それはオマエがそんな立場になったことがないからだろ、と思う。
人間というのはどうも、自身の懐の痛まない範囲でだけ人助けをしよう、という悲しい習性が身に付いた。人という知的生物は、集団生活を通して色々とルール作りをし進化してきたが、このことだけは「文明世界作りの上での大失敗」だ。
●とりわけ罪深いのは、自身に余裕がないから他人を助けてられない、という人ではない『余裕があるんだけど、面倒くさいし損したくないから助けない』という人種である。こういう人種の中には、貧しい人を「怠けている」「やるべきことをやってないからそうなった」というホンネがあり、こんなやつらに何もくれてやるものか、という意地悪さがある。甘えるな、自分で頑張りやがれ! 現に自分はそうやって成功をつかんだんだ! というのが人生哲学になっている。
サザエさんというアニメの中で、カツオ君がマスオさんに話しかける。
「マスオさん、実は相談に乗ってほしいことがあるんだけど……」
「うんうん、いいよ! 任せてくれたまえ。お金のこと以外なら、なんだって相談に乗ってあげるよ!」
これを聞いたカツオ君は、がっかりしてもういいよ、と去っていく。え? と首を傾げるマスオさん。もうお察しだろうが、ズバリお金の話だったのだ。
この、オカネの相談以外ならなんでもどんとこい! というのが弱者に対する国や世間の基本姿勢なんだと思う。
今こそ、本当の人助けって何なのか、を考えてみる必要のある時代に来ている。
自己責任論では、弱者の側が納得せず世に争いやトラブルの種は絶えなくなる。筆者はカネを配れと言ったが、どのようなケースでどれくらい、あと配ってどうだったかの調査と反省のシステムも用意したりが必要だと思うので、やみくもに配ればいいというものでもない。
ただ、今の政権と日本社会では、ポーズだけで本当の意味で取り組まなさすぎ、と思うのだ。自殺者のことだけでなく、安倍元首相銃撃のように社会に牙をむく「無敵の人」の問題も、たまたまあなたが巻き込まれていないだけで、おなじ世界で息を吸っている以上他人事ではないのだ。
私がさっき「カネを配れ!」と言ったのは言葉上の表面的なことだけではなく「それくらい、自分がその身になって考えてみたら?」という感情も込みの言葉なのだ。
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