この世界の明らかな問題点

●自分の娘にはAV(アダルトビデオ)には出てほしくない

 でも、AVは見たい(なくならないでほしい)

 だから、誰かは(他人の娘には)やってほしい



 これが、世の子持ち男性(お父さんたち)のホンネではないだろうか。

 もちろん、奥さん以外の女性などまったく目にも入らん、という超愛妻家なら関係ないだろうが。そういう人種は、この記事を無視してくれてかまわない。

 夏帆かほが主演の『パズル』という日本映画の中で、残酷なエピソードがあった。ある学校の理事長、外ヅラはいいが実は女子高生(未成年)に欲情するサイテー野郎であった。その理事長に対する復讐シーンがえげつない。

 理事長の一人娘(JK)を誘拐して、睡眠薬で意識を失わせる。校長のそばに、顔を仮面で隠した娘を転がしておく。理事長はもちろん欲情して犯すが、もちろん自分の娘だとは分かっていない。一通りやることやって、落ち着いたタイミングでどれどれと仮面を剥いで、ヤッた女の子の顔を見ると……

 自分の娘だという認識があったらやらないが、他人だったら(他人と思えたら)やれる。これが、世の男の悲しきさがというものではないか。



●他人に起きていることならかまわないが、自分や自分の愛する者に起きるのは困る。この思考を皆が持ち続けているので、社会は病む。



 なぜ、今の日本は変わらないか。

 これだけ格差社会・少子化社会であることが明らかでも、政治は変わらない。トップが率先して動かないので(リスクしょってまで何かを変えようとはしないので)現場も変わりようがない。現場の判断でできることは限界がある。枠をはみ出てまでやることにはリスクも大きく、守るべきものがある社会人には改革のしようがない。

 富裕層は、自分や自分の家族にそのツケがくるのはイヤだが、とりあえず現状世の惨状とは無縁でいられそうなので、何もしない。自分の幸せは下層民が血を流すことで成り立っていることなど気にせず、とりあえず現状維持と思うのだ。まさに、自分の娘がAVに出るのはやめてほしいが、楽しみたいので他人の娘ならいい、というのと思考構造は同じ。

『自己責任』という言葉が、一時期よく話題になった。今でも、時代を読み解くキーワードとしてちょくちょく話題にはのぼる。

 筆者は、自己責任という言葉を口にする人の多くは、本当は自己責任なんてどうでもいいんじゃないかと思っている。ちゃんと自己責任という言葉の正味の意味と向き合って語れている人は少ないのではないか、と。



●本当は、自分と自分に属する範囲の世界が安泰なら他はとりあえずどうでもいい、というホンネを隠すために、カッコいい『自己責任』という言葉を都合よく振りかざしているのではないか。



 人間とは本当にきものちっちゃい、度量の狭い生き物で、本当は格好悪いその真実の姿を隠さなくていいのに(隠す資格なんてないのに)、格好いいことにしておきたい欲深さをもつ。

 そういう自分の真の姿を、勇気をもって認める気はあるか? ないなら、そしてそのような勇気のない人間が世界の一定のパーセンテージを占めてしまう状況が覆らないなら、この世界は緩やかに崩壊の方向へ向かうだろう。そうなったらもう、大地震が起きてそれまでの現実が一度崩壊するとか、外宇宙からエイリアンでも襲ってきて団結するしかないとか、そういう奇跡的なハプニングでも起きないと、世の根本的なシステムの改善は望めない。



 じゃあ、あなたはどうなんですか? こんな記事を書くくらいのあなたは、よほどできた人なんでしょうね! と言いたい人もいるかもしれない。

 私は自分がちゃんとしているから、できていない皆さんに上から目線で語るわけじゃないです。かく言う私も同じです。AV見たりしますけど、自分の娘にはやっぱり出てほしくはない、愚かな男性の一人です。でも、少なくとも私は「自分に問題がある」ことをちゃんと知り、常に向き合っています。

 ソクラテスの無知の知、と同じです。無知だと分かってる者のほうが、同じ無知でも「無知だということすら分かっていない」人間よりはマシだというやつです。



●今回の記事で言いたいのは、指摘したことに関して直せということではない。

 それはかなり高度なことなので、せめて「人類にはそういう醜く弱いさががある」ということを分かっておいてほしい、分かってるだけでもだいぶ違うのだ、というメッセージが大事な趣旨なのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る