すべてはこれからいつでもこれから

 この世に流布してしまっている、死後の世界についてのよくある思い込み。



●死んだあとには、天国と地獄がある。

 その人物の行いに応じて裁かれ、行先が決まる。

 それには天(神)の意志が判断基準で、自分では行先を選べない。



 これは、長い歴史を通して育まれてきてしまった根強い感覚で、科学の進んだ現代人においてさえ、そう否定される考え方でもない。皆胸のどこかで「そういうものかもしれない」とさえ認めているかもしれない。

 善を成したのか、悪を成したのか。その加減で人間の価値が決められる世界観になっている。

 でも、ちょっと考えたらそんな絶対基準の「悪」や「善」があるなんてないことが分からないだろうか。

 たとえばレ・ミゼラブルみたく、飢えて今にも死にそうな小さな兄弟たちがいて、切羽詰まった長男がパンをどこかから盗んで食べさせたとする。ものを盗むことは悪である。しかし、その長男のもたらしたパンで下の兄弟たちが餓死を免れ、彼らが成長して世の中に大きく貢献する活躍をしたとしたら?

 ある金持ちが、愛する息子に大型商業モールを建築し、経営を譲り渡した。息子はそれを成功させ大きな利益を上げ、その後も子孫数代にわたりその家は栄えた。ただこの金持ち一家は知らないことであるが、その裏で顧客を奪われた小売店の一家が首つり心中した。大きな視点で見て、知らないこととはいえ金持ちのしたことは善になるのだろうか? 潰れた小売店の人間が勝手に死んで、自業自得で悪いということになる?

 あるいは、独裁政権を作り戦争を始める最悪な指導者が出たとして、彼を殺す人間が出てくるとする。確かに人殺しは悪である。しかし、その人物があえてその「悪」をかぶったことで、独裁者がそのまま生きていたら死んでいたと思われる多数の命を救ったとも言える。こういう場合は、閻魔大王はどういう判決を下すのか是非聞いてみたい。

 苦労や本当の絶望的環境に遭遇したことのないお花畑スピリチュアルやきれいごと宗教は、まぁ「どんなことがあっても盗みと殺人はいけない・そういう選択をしないことこそ高い精神性」と言ってくるんだろうな! なら、筆者にはその高い精神性なるものは要らないや。



●この世界に、絶対的な善悪は定義不可。

 ゆえに、天国と地獄など存在しない。



 死後にあるのは、あなたがただ行きたい世界・身を置いていたい世界である。

 行いの良し悪しで行先を決められたりもしない。あなたが選んで行くのだ。

 ただ、選んで行くとだけいうと誤解が生じる。死ねばあなたの分かりやすい顕在意識(そりゃ誰だって天国がいいって言うだろうよ!)は仕事しない。アナタの「ホンネ」が仕事をする。それは普段、あなたが怖くて向き合うことを避けている感情だったりして、それが働けばあなたが生前選んだものとは違う選択をすることも十分あり得る。

 地獄(と思われるようなところ)に行くのは、罰としてではない。そういうところに身を置く選択をすることで、その人物が贖罪をしたくて、望んでそうしている。要は、その魂が一番納得する(満足する)ことを選ぶ。何も快楽だけが人間を満足させない。自分に苦痛を与えることすら、人によっては幸せになるのである。



●望んでその場所にいる、望んでそういう苦を自分に課しているということは、望みが叶っているという点では「天国」と言えなくもないのではないか?



 そう。背負ったものによって個人差の振れ幅がすごいが、死後にはその人にとっての「天国」しかない。

 どう転ぼうが、あなたの魂の旅路を進めることができる選択をするのである。たとえ他者からはそこ地獄じゃないかと言われようと、そこは紛れもなく「歩みを進める」ことのできる場所であるのだから。

 死後には、天国しかない。これだけ言い放てば誤解を受ける可能性大の危険な言葉であるが、筆者は皆さんにそう伝えたい。

 確かに、人生恥ずかしい行いは誰しもある。忘れたい過去、なかったことにしたい醜い選択などもある。でも、人はいつからでもどこからでも前進できる。いや、前進しかしないのである。



●すべては、これから。いつでもこれから

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