突き破って信じる
その昔、ハマってむさぼり読んだ『ガラスの仮面』という名作漫画。
もうすでにマンガは手放しているので、正確なことを確認できないが、記憶によるとこういう場面があったはず。
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主人公の北島マヤは、あるTVドラマの主役をすることで、女優として世間的に大ブレイクする。
しかし、華やかな芸能界の中では、彼女を毒牙にかけ、自分が代わりにのし上がろうとする人物もいた。マヤは仕組まれたスキャンダル事件にまんまと巻きこまれ、身に覚えのない不祥事をでっちあげられ、二度と芸能界に復帰できないほどに追い込まれた。
もうどこにも使ってもらえなくなり、芸能界を去るマヤ。
皆があざ笑う中、それでもただ一人、彼女を笑わない者がいた。
それが、マヤのライバルの姫川亜弓である。
亜弓はライバルだけに、マヤをよく知っている。
彼女の才能も。そして、ひたむきに演じることが好きなだけで、決してバカな真似はしないということも知っていた。亜弓は、失意のうちに去るマヤをつかまえて、このように言う。
「もう一度、この世界に戻ってきなさい。二年間、待っているわ。あなたは何としても返り咲いて、そして改めて私と勝負するの。いい? 這い上がってこなかったら、あなたをゆるさない!」
言葉は正確ではない。確か、そんな意味合いの言葉をかけたはずである。
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普通に考えたら、不名誉という最悪の形で芸能界を今まさに去りゆく人間が、誰にも文句を言わせないで名女優としての位置を再度勝ち取ることができるとは、誰も思わない。
しかし、亜弓は違った。ライバルゆえの、勝ちたい相手だがでもだからこそ相手の真価を分かってるがゆえの、信頼の言葉であったのだ。「二年待つ」とは、言いかえれば「あなたが本気を出せば二年で戻れる」と請け合っているのと同じである。
●あなたは、誰かに対して亜弓のように言うことができますか?
通常ではあり得ない、信じがたいことを、相手への信頼のゆえに期待することができますか?
奇跡でも起きないと無理なことでも、相手を信頼して懸けることができますか?
それ以前に、そういうことが言えるような、信じてあげられるような誰かさんがいますか?
亜弓がマヤに言ったようなことを、一生の内に何度言えるだろうか。
競うなら成功の数や分かりやすい実績よりも、そちらを数えたほうがいい。
ベタな表現になるが、死んで持っていけるのはお金や地位や数字的な成果ではない。それは誰かと結んだ信頼の糸の数であり、その糸を通して感じた感覚であり感情の記憶だ。
筆者も、人生の中で深くかかわる家族(奥さんや子ども)、はやりすたれに関係なく私と長く付き合ってくれる友には、どんなに困難な状況がそこにあったとしても、その信じ難きを「突き破ってでも」、ブレイクスルーしてでも、信頼の言葉をかけたいと思うのだ。
覚者の言う「大丈夫」は、基本信頼してはいけない。
皆は「事態がきっと好転するんだ」という意味で大丈夫を捉えているので喜ぶが、残念ながら覚者の大丈夫は「どうなろうが(悲惨になろうが)それはそれ」で別に問題ではない、という意味合いでの大丈夫なので、本当にそれでいいのか? を要確認である。(笑)
でも私は、家族や友と呼べる人物には、悟りの視点じゃないほうの、スペシャルなほうの「大丈夫」を捧げたい。ブレイクスルーの言葉をかけてあげたい。
あなたは大丈夫。私は信じる。
たとえ誰がムリと言っても、難しくても、待つ。
最後まで奇跡が起きるのを。
奇跡は、めったに起きないから奇跡なんだと言う人もあろうが、裏を返せば「少ないとしても起きるから、起こせるからこそ奇跡」なのだ。
まったく起きないなら、奇跡という言葉自体この世にないのだから。
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