尻ぬぐいさせない

 古いゴジラ映画で、『ゴジラ対ヘドラ』というのがある。

 公害から生まれた怪獣で、ゴジラも倒すのにかなり苦戦する。

 何とか倒すことができ、ゴジラは戦い終わって海に帰る前に、人間に向き直ってひと声いななく。

「……きっとゴジラは、人間に対して怒っているんだ」



 そもそも、ゴジラ自体も人間の水爆実験から誕生したものである。

 そして、最新のハリウッド版ゴジラの設定では、ゴジラは人類の敵としての「怪獣」ではない。本来の自然界には存在し得ないものを、人間がその勝手な科学力で生みだしてしまい、それは通常の力では歯が立たない。だから、大生命(地球)がその異常な存在に対抗するべくあえて生みだした守護神(ガーディアン)がゴジラなのである。

 人間自身が自分たちの都合で勝手に作りだしてしまった怪物を自分たちでは倒せず、ゴジラの力を借りるしかないこの情けなさ。そんな自分で蒔いた種を、尻拭いしてもらうのが人類なのである。



●ちょっと、情けなくない?



 人間社会でも、大人とは「自分の言うこと、することに責任を持てる者」のことを言うはずではないか。責任を持つとは、最後まで自分の力でけじめを付けることである。

 とんでもないことをしでかしておいて、それがもう自分ではどうにもならないほどの事態になってオロオロし、結局誰かに頼って解決してもらうなら、それは子どもである。

 今までの歴史の中で、何度か人類は大いなる上位存在に「尻拭い」してもらっている。その「尻ぬぐい」のツケのような事件が実は、ここ数十年でもいくつか起こっている。

 私たちは、表面上ただの災害としか思わない。事件としか思わない。

 表面的にはそうだが、実は人間が自分で責任を取らないことで摂理として起きていることもあるのだ。そんな恥ずかしい事態を無くすためには、どうしたらいい?



●責任を持てる範囲のこと以上の領域に手を出すのはやめる自制心をもつこと。

 それでも手を出してしまったら、結果自分たちの力で解決できない事態になっても、『誠意』は見せること。それによって、被害が軽減されるかもしれない。



 実は、下手をすると今後またそういうことが起きる。

 今のユルいスピリチュアルには、「そういう人を怖がらせるメッセージに耳を傾けるな。あなたが不安を抱くから、そういう現実になるのだ。だから、恐れを引き起こさせる言葉は相手にするな」という考え方がある。

 いい加減にしろ。何より大事なのは、現実を直視することだと気付け。もう、スピリチュアルメルヘンを理由に見せかけの心の天国に逃げるな。

 


 公害怪獣を生んだ人間に、ゴジラが怒ったように、天は人間に問う。

「またこっちに尻拭いさせる気か」

 そしてその依頼料は、高くつく。人間は何度、自業自得で起きた大被害や不幸を味わえば気が済むのか?

「どうしてこのような理不尽なことが起きるか」という盗人猛々しい苦情がなぜ言えるのだ?

 今回の話はスケールが個人レベルを超えており、決して解決が簡単な問題ではない。ただ、あなた個人でもできることはある。



●まずはあなただけでも、誰かに尻拭いさせる人生にしない。

 自らの言動に責任をもつこと。



 具体的には、あなたは自分のしたことや言ったことで、その結果何が外界で起きても、どんな反応が外界から返ってこようとも、文句を言わない。受け止める。

 そして見苦しい姿を見せず粛々と、できたら全部自分の力で、仕方なく他人の力も借りる場合でも、謙虚と礼儀をもって、感謝して助力してもらうこと。



 今の時代、その場その場の感覚的な、安きに流れた選択をする者が多い。

 それだけならまだしも、さらにそれによって引き起こされる事態に対する責任すら逃れようとする者さえいる。そりゃ、ゴジラもお怒りになる。宇宙は「あきれる」ということはないが、ただシステムに従って払うべき代価を事務的に粛々と、あなたに課してくるだけである。

 そこに、愛も感情もない。自動販売機にお金を入れてボタンを押したらジュースが落ちてくるのと同じ仕組みで、ただそのように処理されるだけである。

 


 全体にそうなるように願うのは、ちと望みが高すぎる。一足飛びにそれはない。

 だから、まずはあなた個人からだ。あなたが人生に責任を持つようになれば、それが小さな、しかし意義ある第一歩になる。

 そこを突破口として、きっと続く者が出てくるであろう。

 他人に、それを期待してはいけない。誰か先陣を切ってくれれば自分も後に続くのに、という考えはだめだ。だって、あなたの人生ではあなた以外の主役はいないのだから。あなたの人生なのだから、

 筆者は、いつだってあなたがあなた自身をヒーロー・ヒロインにしてあげてほしいと願っているのだ。

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