断る力

 そういえば、今回のタイトルはかつて勝間和代さんが書いた本の題名と、図らずも一緒だ。

 昔ニュースになったことだが、インドネシアで、高速鉄道をつくる計画があった。そこに、日本が技術提供というか、「受注」に名乗りをあげていたのだ。

 日本には「新幹線」という誇れるノウハウがある。最初は、この件に関しては日本の独壇場だと思われていた。



 しかし、途中から中国がねるとんよろしく「ちょっと待った!」をかけてきたのである。中国が突然、その受注の落札に参加を表明。

 日本も中国も、自分が受注資格を手にせんと、必死のアピールを試みたが……結果として、インドネシアは「どちらも選ばなかった」。

 なんと両方、フッたのである。

 インド政府の判断は、「高い金のかかる高速鉄道はうちになくてもいいじゃないか。中速鉄道で十分用が足りるし、そっちほのほうが経済的じゃないか」ということで、高速鉄道計画は白紙撤回されたというわけだ。

 もちろん、日本はめっちゃ残念がった。せっかくの利益を得る機会を逃したからだ。もちろん、日本人としては残念に思うべきだったのかもしれないが、当時の筆者はインドネシアに「よく断った!」と思ったものだ。



 この世界には、様々な情報が溢れている。スピリチュアルの世界もまた然り。

 選択肢が多すぎ、いろんな意見がありすぎて、どれが正解かどれを選ぶのがベストか分からなくなっている。皆さん、そういう頭がクラクラする中で、世で人に支持され人気のある考え方の中から一番無難そうなもの、その人が自らの主観で「一番確かそうなもの」を選ぶ。誰だって損をしたくはないから。

 でも皆さんは時折、次の事実を見失う。



●あなたを説得してこようとする情報、選択肢の中に正解があるとは限らない。

 そのどれをも選ばないでよい場合がある。

 すなわち、他人の借り物ではなくて、あなた自身の体験や実感に基づくもの、『あなたオリジナルのスピリチュアル本』が心の中で出版されれば、あなたは世にいる覚者や有名どころのスピリチュアル発信者のお世話にならずとも、自らの力だけで幸せになれる。



 インドネシアが「義理立て」というしょうもない手かせ足かせに縛られることなく、人情的に「どちらかを採用しないと、せっかく名乗りをあげてくれているのに申し訳ない」とか人情的にならず、どちらにも「No」と言えたことは、個人としての我々も学ぶところがある。

 あなたより、スピリチュアル指導者や覚者の方が、物事を良く分かっているということはないよ。

「自分の考えること程度なんか、たいしたことない。スピリチュアルを先生(言ってみればその分野で成功を収め一定の名声を得た者)から一生懸命学ばないと」と思っているから、あなたは盲目的に人気スピリチュアルを漁ることになり、無条件に彼(彼女)らのことを、「自分より上等な人物」「自分なんかより、より本質が分かっており学ぶべき存在」と考えてしまう。

 自分の信念というか、生きる上での精神的軸の部分を、内側オリジナル以外の立派な他人のものから選ばないといけない、という思い込みを壊せ。

 成功している人や有名人の言うことだけが本当だとか、価値があるとか笑える冗談である。その勝手な前提が、あなたに多大な悪影響を及ぼしている。

 そんなあなたは、外側に「さぁ、この中のどれにする?」と選択を迫られている状態。で、あなたは今しも「どれかを頑張って選びそう」になっている。

 でも、待った。

 今こそもうひとつの選択肢を思い出せ。



●どれも選ばない、という選択肢。

 外側に並べられた、他人の敷いたレール(選択肢)のすべてにノーと言う。

 自分の力で、自分の人生に大事なことは決める、という選択。



 もちろん、他人の意見は一切聞くなという話ではない。

 参考に聞けばいい。スピリチュアル発信者の講演会だろうがワークショップだろうが、出たければ出たらいい。

 ただ、盲目的にメッセンジャーを信じて、鵜呑みにするのはやめて。

 あくまでもあなた自身の感覚で、力で、最終的には「何を採用し、何を採用しないのか」を決めていただければよい。あなたの内側に『あなたオリジナルのスピリチュアル本』を作ってほしいのだ。

 それができたなら、あなたはスピリチュアル業界に必要以上に高額なカネを落とさずに済み、限られた人生の貴重な時間を浪費しなくてよくなる。



 スピリチュアル指導者に大金を貢ぐ必要はない。

 徳川家康ではないが、「農民は生かさず殺さず」である。

 死なない程度に稼がせてあげたらよい。何とか生きていける程度に、お金を使ってあげるくらいがいい。間違っても、スピリチュアル指導者に大金を稼がせて、大きく成功させて「こんなにすごいことになりました! こういう展開になるということは、私の教えが正しいことの証しです!」なんて、図に乗らせちゃいけない。

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