雑念なんてあるのか
よく「雑念(余計な思考)を振り払うにはどうしたらいいですか」 という質問を受ける。世間でも、「雑念を止め集中力を高める方法」といったセミナーがあり、好評を博しているようだ。
確かに、この世界で何か手っ取り早く成功したり、お金を儲けたりするには、そういうスキルを優先して身に付けることが早道かもしれない。
しかし、ことスピリチュアル的な成長、魂の深まりという視点からは、そういったものの追求はかえってマイナスである。
皆さんは、今のその肉体をもって生まれてきている。
さて、どこか要らない部分ってあるだろうか?
ないはずだ。手も足も内臓も毛髪も、すべてあなたに属するものは必要があってそのように備わっていて、そこには余分も欠けもない。
本来は起こるべくして起こっているのに、人間だけがエゴ(自分の損得や願望を基準にした判断基準)を持っているので、こんな顔はイヤだとか、体のそこここが気に入らないとか言う。
障がいをもって生まれでもしたら、当事者の子どもなら物心ついて悩むかもしれないし、親だったら人情的に「申し訳ながったりする」。ちゃんと生んでやれなくてごめんね、みたいな。
●人間だけが、自分基準であるがままの自然界をめった切りにする。
勝手に損得と優劣をランキングして、勝手に不幸になっている。
障がいなんてない。「ただそうであるだけ」だ。
この世界には、要らないものは登場しない。いや、登場できない。
ならば、雑念というものに関しても、同じように考えられないだろうか?
人間が、自分の都合から今湧いてほしくない思考を「雑念」と名付け、排除しようとするが、本当にそれは「要らないもの」なのだろうか?
見方を変えると、自然と湧いてきたということは「必要だから生まれてきたのではないか?」
ならば、雑念と斬って捨ててしまわずに「どうしてこんな考えが湧いてきたんだろう? このタイミングでこんなことを考えてしまったのは、どういうわけだろう?」と考えることもできるのではないか。それによって新たな気付きを得、成長する糸口とできるかもしれないではないか。
ただ、今の表面的な目標達成や損得に照らし合わせて邪魔だというだけで、最初から「雑念扱い」にして無視するのはいかがなものか。
雑念だって、必要があってこそあなたの中に生まれてきたのだ。それを邪険にするのは、子どもに「あんたなんて生まれて来なけりゃよかった」と言うようなものだ。
もちろん、このスピード社会・成果主義社会においては、余分な思考など取り去って集中して、より大きな成果を挙げることが好ましく思われる。だから、生きていくためにはある程度、雑念を克服したいという願いは仕方がない。
でも、できるだけでもいいから——
●その雑念はなぜ生まれてきたのか
これについて、ちょっと腰を据えて思索してみるとよい。
そこには結構、あなたがあえて見ようとしない部分、向き合いたくない部分が隠れていることがある。だから、今まで無意識だった部分が意識的に変わることで、あなたの認識世界に良い意味での変化が起こせる。視界がさらに開ける。
筆者の話をすれば、私には「雑念」というものはない。何かに集中すべき時にそれとは関係ない思考が浮かんでこない、というわけではなく、皆さんと違う点はそれを現在最優先の目的に対して「邪魔するもの」と捉えないというだけだ。
●皆さんが雑念と呼ぶものが、私にまったく浮かばないわけではない。
浮かんでも、それを雑念とは呼ばない。そして、振り払いもしない。
私は雑念があったら集中できない、というステージにはいない。
雑念があっても、集中できる。なぜなら、それは敵ではないからだ。妨げにならない。戦わない。だから共存できる。
世の中は、雑念があると集中できないと決めつけ、いかに雑念を克服し集中力を高めるか、に関心が集中しているが、そもそも「戦わなくてもよい」というのが、より本質を突いたメソッドになる。私に言わせれば、雑念を雑念とし、それをいかになくすかという方法は下の下である。
こっちが邪険にしなければ、向こうもわきまえたもので、それほど邪魔をしてこない。むしろ、協力的にすらなる。
ウソだと思うなら、お試しあれ。雑念とあなたが呼ぶそれと、戦わない生活を。
いや、雑念というネーミングさえ取り下げて、新たに「何かに気付けというささやかなメッセージ」とさえ呼べる日が来るかもしれない。
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