愛の星

 ある、高度な精神性を築き上げた宇宙人が次のように言ったそうな。



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 お前らの星(地球)を侵略するのに、一か月もかからない。

 もちろんそんな気はないが、その気になればお前らほどチョロい存在はない。



 利害関係、というものがはっきりしている生命体ほど、簡単に操られる者はいない。コントロールしたい人物の、一番の泣き所を掌握すれば簡単だからだ。

 子どもが大事なら、奪ってしまえば交換条件に言うことを聞かせられる。

 地位や名誉、カネをちらつかせたら目がくらむ人種も多い。

 そういう存在に言うことを聞かせ従わせるのは、実に簡単である。



 しかし。宇宙で最強の存在はどういうものか分かるか?

 それは、『無欲』な存在だ。

 すべてが「どうでもいい」というやつらだ。

 どんな交換条件を出しても、相手の何かを奪ってそれをネタにゆすっても、「どうぞどうぞあげますから、好きにしてください。私は、好きなようにします」というやつらである。

 誘拐だって、「お前の娘を返してほしければ2憶用意しろ」と脅しても、「どうぞ煮るなり焼くなり勝手にしてください」と電話を切られたら、青ざめるのはむしろ犯人側である。

 お金が目当ての誘拐なら、ロリコン趣味でもない限り子どもをどうしてもよいと言われても喜べない。子どもが目的の一番ではないかぎり、どうでもいいと言われれば困るのが犯人側である。

 そういう、執着のないやつらが宇宙では最強である。どんな手段をもってしても、コントロールすることはできない。

 その点、お前ら地球人のほとんどはは簡単すぎる——。



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 さて皆さん。

 この高度知的生命の言葉を、けなし言葉と捉えるか、それとも褒め言葉として捉えるか? その選択が、あなたのスピリチュアルなスタンスを決める。

 本当に、究極の悟りである「無欲・無執着」を本来のあるべき姿と認め、この世界を「脱却すべき偽りの幻想世界」とするなら、この宇宙人の言葉はけなし言葉であり、やはり無欲・無執着を目指していくべきなんだろう。我々は、自分たちの情けなさに恥じ入るべきなのだろう。

 あるいは、開き直って「褒め言葉」として受け取る選択もある。

 確かに、愛する者を守るというのは、大事な何かのために自分が不利益を被ることすら受け入れる、というのは弱さと言えるかもしれない。つけ込まれる泣き所を、自ら作っているわけだから。お前らをコントロールするのは簡単だ、と言われてしまえばぐぅの音も出ない。



 でも、それって逆に誇れることではないだろうか。

 無欲、無執着で他が究極「どうでもいい」って、本当に幸せか?

 そんなものを目指して到達したとして、本当にそれがあなたの望む幸せか?

 たとえ弱かろうが、チョロい地球人だろうが、私たちはその弱さをこそ誇ろう。

 それが、美しさであるから。

 美しさとは、言い換えれば弱さであり、はかなさであり、有限な様であるから。



 ここは宇宙人の助言というか、苦言を「褒め言葉」と受け取ろうではないか。

 そもそもこの地球物語をおっぱじめたのは、その変化しかつ限りある「美しさ」を守ろうという「壮大な無茶」を目指して始まった無謀極まりない旅なのだから。

 他の宇宙次元なんて知ったこっちゃない。他が高度だろうが、こちらが程度低かろうが、そんな宇宙人の指摘はどうでもよろしい。

 ゴミ箱行きや!



 我々は、愛する者を大事にする弱さを誇ろう。

 対象が喜べば、自分も幸せな気になる単純なおバカさを誇ろう。

 愛する者が失われたら、焦ったり必死になったり、泣いたりする弱さを誇ろう。

 愚かかもしれないが、地球人の「精神的若さが故の」過ちの連続をこそ誇ろう。

 今はそれで、いいじゃないか。

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