効果は生まれるものではなく創造するもの
ひと昔前ツィッターで、面白いニュースを目にした。どういうニュースかというと、次のような見出しだった。
●『パワーストーン専門店が潰れた! あんなに山ほどパワーストーンが置いてあるのに?』
みなさんは、この記事の発信者の物事の認識の前提というか、クセを見抜けるだろうか。記事の文章から分かるのは、少なくともこの発信者は次のように考えていることが分かる。
●パワーストーンの効果(幸運? 繁栄? 金運?)というものは、その個々が独立して持っており、それらが一か所に大量に置かれてありなどしたら、かなりの効果になるはずのではないか?
そう考えると、パワーストーンの品揃えがすごい店がつぶれるって、なぜ?
そもそも、パワーストーンには効果がないのか?
もちろん、ここには二つの可能性がある。記者がパワーストーンにどちらかというと好意的なスタンスで、「あれっ、本当に何でだろう?」と純粋に疑問に思った場合。そして逆にパワーストーンの効果など眉唾物だと思っていて、「あれあれっ、おかしいですね? パワーストーンって人に幸運をもたらすような力があるって聞いたんですけど?」ってな感じで、皮肉を込めて言ってる場合。
筆者には、後者の可能性が高い気がする。
それはさておき、この議論のカギとなるのは、「パワーストーンそのものに本当に誰もが認め得る効果があるのか」である。
スピリチュアル関係者、つまりパワーストーンを「信じている」者たちは、誰にとっても平等に働く種類の力学の存在を、石に対して認めている。
この発想は、筆者の見解では的外れである。
この世界の「効果」と呼ばれるものには、二種類あると考えたほうがよい。
ひとつは、塩や消毒液のように、化学反応という形でダイレクトに、物理的に影響を与えることができるもの。これは、塩はしょっぱいと認めない人にはしょっぱくないとか、硫酸は皮膚に付着しても無害と心から信じ込んでいる人には無害とかいうことはない。
申し訳ないが、パワーストーンはこのカテゴリーには入らない。
ふた種類目は、その効果が目に見えないものに関してである。
幸せになったとか、運気が上がったと感じるとか。体の調子が良くなったとか。
あるいは、パワーストーンを所持した時を境に、いいことが起こるようになった、とか。
つまりは「本当にあなたが言う何かが、その良い現象をもたらしたと確実には確認のしようがないもの、証明のできないもの」 である。
根拠はその人が「そう思う・あるいは信じている」という自己申告だけ。パワーストーンもそのひとつに入る。
石の放つ波動がどうちゃら、というのは認識レベルが幼い人の遊びである。
人間が、「持っているときっと効果ある!」と思って石を買う。
そこには、買い手の解釈と物語付けのエネルギーがこもる。
パワーストーンそのものには、何の意味も力もない。ひとつの宇宙を開いている「あなた」という主人公がそこに意味を込めるので、時折プラシーボ効果のように、あなたがしたいような解釈に誘い込まれるような現象が起こる。
あなたは「これはパワーストーンの効果だ!」とどうしても言いたい。そこで、ちょっとでも良いことがあればよっしゃ、待ってました! とばかりに、パワーストーンのおかげ論を展開する。
結論から言えば、目に見えない、証明できない分野での効果を論じる上では、モノそのものだけではだめで、「それを持っている、観察する主人」の存在が絶対に要る。悪いが、人間の意志や感情の介在なくモノが独立して何らかの効果を人に及ぼすことはない。
さっきの潰れたパワーストーンのお店の話でいくと、可能性として考えられるのは「パワーストーンの店主及び従業員が、パワーストーンに惚れ込み、商品を愛して経営していたのではなかった可能性」。つまりはお金儲け、食って行くためのひとつの手段、程度の意識で職場にいたなら、パワーストーン自身だけの力では何も起こらなかったということ。石に物語を付け、そこに「持てば幸運を呼ぶという思い込みパワー」を与え、それが現実的効果と感じられるまでにエネルギーを注入し続ける人間側の意思の介在が不可欠なのだ。
恐らくだが、店主を初め従業員は、パワーストーン愛好家ほどにはパワーストーンを好きでもなんでもなく、「どうでもいい」というのが本当のところだったかもしれない。
だから、売り上げが落ちてきた時に真っ先に「ストーンを信じる! そしてこれが皆に必要とされると信じる!」という気合すらなく、「売れへん、どうしよう……」 という恐れしかなかったのかもしれない。
だから、「パワーストーンのお店が潰れるのはおかしいのでは」という発想は単純かつ幼稚。
教会やお寺が潰れるのはおかしい、というのと一緒。宇宙で一番偉く、すごい力をもっている神様の関係しているものなら、なぜ? ということ。押しも押されぬ一流企業が倒産しても、皆さんびっくりするんでしょう。
人間側がそこに意味づけをするからこそ、まるでそれが命を宿し独力で効果を発揮している、という現象として解釈されうるものがある、ということを知っておいてほしい。
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