オセロの途中
『オセロ』という古典的2人用ゲームがある。
別名をリバーシともいい、このゲームのキャッチフレーズは『(ルールを)覚えるのに1分、極めるのに一生』というもの。単純なくせに奥が深く、現在でもプレイの全パターンの、コンピューターによる全解析は達成されていない。
オセロは、序盤から中盤において、一度ひっくり返してもまたひっくり返さりたり、さらにひっくり返したり……で、あるマスの石はその色が猫の目のようにコロコロ変わる。白と思えば黒、黒と思えばまた白というふうに。
で、人生をオセロと考えた時に——
あなたは死んでないのだから、ゲームはまだ進行中なわけである。
確かに、今の時点は『黒』かもしれない。でも、明日は白に変わるかもしれない。で、1年後には何度もひっくり返って黒なのか白なのか想像もつかない。
私たちが今を切り取った視点で、何かをこうだと決めつけて右往左往し一喜一憂しているのは、少しあとのことが分かった視点からしたら、笑えたりバカバカしかったりするのだろう。何でこんなことで悩んでいたんだろう? とか思うんだろう。
でも残念ながら、今という時にその未来視点には立てない。仮に立てたとして、そのことで何か利益や安心を得れても、そんなものに何ほどの価値があろうか?
この世界に遊びに来た意味を考えたら、そんなズルして物事をうまくできたとしても、最終的にあなたに何も残らない。死ぬ時に、何の勲章にもならない。あなたの中身はスッカスカだ。
一寸先が分からない中で戦い続けてこそ、最後に勲章がもらえる。
ラジオ体操の出席のハンコみたいなもんかな。極度に「方法(テクニック)」に頼った成功では、判をついてもらえない。そこだけは、世の現象とは違い「正直者がバカを見ない」。
●今のあなたの現状はオセロの途中にすぎず、いつひっくり返るか分からない。
その苦境も、ひっくり返る可能性がある。
そういう捉え方をすれば、生きる励みになる。
しかしこれは反対も言えて、今幸せだったり物事がうまくいって波に乗っている人には、苦い提言になる。せっかくのいい気分に水を差す余計な一言だ、とけむたがられるかもしれない。
つまるところ、この諸行無常の世界においては、物事が一定であることはあり得ない、というところが意識すべき大事なポイントである。
人によっては、「いや、現象に左右されず常に視点のもちようによってずっと幸せであり続けることはできる!」 と豪語するスピリチュアル実践者もいようが、まぁ待て。イエス・キリストでさえ成し得なかったことを、あなたができる自信でも?
筆者だって無理だ。すべての現象にプラス面を常時見つけて幸せであり続けるなんて、人間業じゃない。できる人がいるというのなら、会ってみたい。(で、化けの皮を剥がしたい)
イエスが残した有名な説教から引用してみる。
●貧しい人々は、幸いである、神の国はあなたがたのものである。
(オセロのように、状況は変わるから)
今飢えている人々は、幸いである、あなたがたは満たされる。
(オセロのように、状況は変わるから)
今泣いている人々は、幸いである、あなたがたは笑うようになる。
(オセロのように、状況は変わるから)
しかし、富んでいるあなたがたは、不幸である、あなたがたはもう慰めを受けている。
(またオセロのように、状況は変わるから)
今満腹している人々、あなたがたは、不幸である、あなたがたは飢えるようになる。
(またオセロのように、状況は変わるから)
今笑っている人々は、不幸である、あなたがたは悲しみ泣くようになる。
(またオセロのように、状況は変わるから)
【ルカによる福音書 6章20~21、24~25節】
今うまくいっていない人を慰めたいためだけではない。
今有頂天な人を不機嫌にさせたいために言うわけではない。
ただ、どんな状況もそれはそれ、ということが言いたいのである。
いい悪いは、そりゃいいに越したことはないが、この際どっちでもよろしい。コントロールできない部分が大だから。
とにかく、時間の連続の流れの中で起こることは、価値判断は後にしてまず「そのものを認める」作業から入ることをオススメする。もちろん、オススメしたからって「はい、やります」と言ってできるような、楽なものじゃない。経験値の積み重ねのあるタイミングでしか、自然にしかできるようにはならない。
一朝一夕にできるものじゃないならば、せめて「すべてはオセロのごとし」とだけでも分かっておこう。そうすると、今の黒か白かが最終決定ではないことを知的な意味だけでも分かることで、少しは落ち着ける。
人間のする一番の勘違いは、今この瞬間限定の真実でしかない「黒」か「白」かを、さも今が人生の最終局面であるかのように、黒白の評価を未来をカバーした範囲まで固定してジャッジしてしまうことである。
これをやめるだけでも、ずいぶん生きやすくなる。
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