それは私の体験でした!

 筆者は、覚醒体験後の活動初期においてはこう言ってきた。



●私は、自分から~しようと思ってしたことはない。

 情報発信を始めたのも、自分が始めたというより「何かに突き動かされるように」っていう感じのほうが強かったし。講演会や個人セッションも、やらないかという要望をいただいたのでやろうかと思えたし。



 それらの実体験を踏まえて、次のようにも言っていた。



●その場その場の気持ちに正直に生きたら、それ以上何も工夫は要らない。

(スピリチュアル的表現だと 「魂の声に従え」ということになるだろう)

 思考であれこれ計画を立てたり、下手な人間的知恵で細かく算段しても大したことにならない。今ここで自分の気持ちに従って生きていれば。その今を楽しくさえし続けていれば、あなたが頭で想像したり計画するよりも、その上を行く奇跡が、幸せがやって来る。

 現に私は、自分からはほぼ動かず、周りが動いてくれた。これが、自分で何とかしようと躍起になるのではない「新しい奇跡の起こし方」 である——



 スピリチュアル的な発信をする者、特に「自分は気付いちゃった」と思っている者がとりつかれやすい罠がある。



●自分の体験にすぎないことなのに、それが他の皆にも普遍的に通用する「真理」「法則」だと勘違いする。



 もちろん、まるっきりのウソではない。現にその人にはそう働いたのである。そして他にも、同じようなケースが起こることはあるだろう。

 でもここで外しちゃいけないのは、「どんな時もそうはならない」という部分である。

 まったく違う現象になるケースもあるからだ。



 ちゃんと目標を設定して、そこに到達するために必要な条件を考え、期限を決めて着実に実行していく。そして、目標のものを得る。そういう現実的な手法で幸せや喜びを手にするケースもある。

 そこには必ずしも「できると信じる」とか「素直な気持ちに従う」とか「ワクワクを大事にする」とかいう要素が絡んでいない。心が大事だというが、現実的に詰めて詰めてしていくだけでも、気持ちがどうでも物理現実的に成功することはある。

 良く考えたら当たり前のことであるのに、スピリチュアル的に成功してしまうと、それを見失うらしい。そして、自分がした強烈なスピリチュアル的成功体験が、最も素晴らしい成功のための手法であるように思う。

 皆が話半分に聞くならいいが、時として発信者がものすごく世に受け入れられて有名人になり、「権威」を持ってしまう時がややこしい。そういう人物が全国を講演して回る。「これこそが幸せになる秘訣ですよ。これが真理ですよ」と。



 実はそれは、その人の体験に過ぎない。

 でもこの問題のやっかいな所は、その発信者と人生シナリオのタイプが似ている者は、同じようにして「うまくいってしまう」というところにある。

 それで、同類たちから賞賛の声が寄せられ、さらにそのメッセンジャーの言い分はファンたちの手によって「真理」へと祭り上げられていく。

 その発信者と人生シナリオのタイプが違う人が頑張ってもうまくいかない事実には、誰もスポットを当てない。彼らの声を無視して、それは仲間内で「普遍的法則」の域に突入する。

 その具体例が『引き寄せの法則』と、今日触れた『計画を立てない』『その場その場を心の声に従い喜びに生きていれば、未来の事を考えたり心配したりしなくてよい』というスピリチュアル的常識である。



 私は、実体験から皆に言ってきた世界がある。先を決めるな、流れに従えと。

 でもそこには、「自分がそれでうまくいったのだから、皆もそう」という決めつけがあった。だから改めて、言い直そうと思う。

「前言撤回」と言わないのは、私が言ったことがまるっきりの間違いではないから。そういうケースも多いから。

 ただ思考を使って計画性を重視しても、それはそれで何の問題でもないということを認めるだけ。



●どっちでもいい、ってこと。

 人生いろいろ、ってこと。



 筆者は過去に、二冊の著書を出版している。

 実はそれも、周囲の温かい厚意や薦めがあってこそ、実現したものである。

 当時、筆者はいつもの調子で「本は出る時は出るし、出なきゃ出ない」というスタンス、つまり望まれるのでなければしゃかりきには動かない、という立場をはっきりさせていた。それを崩さない中での実現だったので、普通なら——



『ほれ見なさい! 私の言ってきたことは正しいではないか。

 またまた「計画を立てない・自分から動かない」「ただ今この瞬間を生きたいように生きる」ことでひとつ大きなことが実現したぞ! 皆、一日でも早くこうしたらいいことに目覚めたらいいのに!』



 そう考えて、余計に調子に乗ってしまうところである。いっそう、自分の体験に過ぎないことに関して「真理だという自信」が強化されてしまう。

 でも、当時自分の本の出版が決まったことで、自分のスピリチュアル的在り方に自信を持ったどころか、なぜか逆の心境になった。



●そうだよな。

 これは、僕に合った選択であり、シナリオなんだ。皆が皆私の真似をして、うまくはいかないんだ。

 かえってよく考えたほうが、計算して対策立てて実行した方がうまくいくことだってある。なのに、結構自分の成功体験を根拠に、自分のやり方を真理っぽく言っちゃっていたなぁ!



 その反省から、はっきり宣言してみる。

 計画を立てるな、とか思考を使うな、とか。今のことだけを考えろとか。そうしていたら幸せは後からついてくる、とか——

 それらは、自分の体験だけが根拠の、他もそうだなんて裏付けも全く取れていない、ひとりよがりの理屈でした。すみません。

 人生とは豊かです。実に色々です。無限の可能性とパターンが同居する世界です。

 その無限に豊かな世界を、一面の真理で切り取り皆様に押しつけるところでした。

 反省するとともに、今後はこう言っていきます!



●人生~いろいろ~

 スピだって~いろいろ~

 在り方だってい~ろいろ

 みんな違っていい♪

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