やりたいことより向いてること
日本のアクション映画『イン・ザ・ヒーロー』主演の唐沢寿明は、彼自身が昔実際にスーツ・アクターだった。
それはそれは、長い下積み時代だった。苦労はしたが、アクション俳優であるということに誇りを持っており、それが長い不遇時代の彼を支えた。
何か一皮むけなければ、と思った彼は、今まで「これはこうあるべき」としてこだわり続けた部分を、性格も含めて変えることを自分にゆるしてみた。すると、不思議なほど人間関係がうまく回り始め、仕事も回ってくるようになった。
ただ、それはいいことだけではなかった。なんと彼は「愛という名のもとに」というドラマの大ヒットをきっかけに、「トレンディ俳優」だと世に認識されてしまったのだ。
確かに、売れない時代のことを考えたら、仕事がありしかも売れるのだから喜ぶべきところだ。しかし、唐沢は自身を支え続けてきた「アクション俳優として成功する夢」のことを思う時、果たして自分は成功したのかそれとも失敗したのか、分からなくなるのだった。
でも、彼は悩んだ末ひとつの答えを見つける。
●「自分はこういうタイプ」「自分はこれがしたい」
そういう信念を持つのはよいことだが、それが間違っている可能性はゼロではない。信念をもって妥協せず夢を追うことを貫くのは、もちろんいいことだ。
しかし、それで一生間違え続けることになるかもしれない。自分の本当の姿とプライドが一致しないまま、イライラ生きるハメになるかもしれない。
そう考えた彼は、自身のこだわりよりも、世間が喜んで求めてくれ、なおかつ自分にも提供できる力があるもの、つまり受容と供給のバランスが成り立つものを受け入れ、喜んで演じていくようになった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
筆者は本書で「好きなこと、やりたいことをしろ」と言ってきた。それは私のみならず、多くのスピリチュアルや自己啓発も言っていることである。
なので、このことに異論のある人は少ないだろう。しかし、今回私はあえてこう言ってみる。
●やりたいことよりも、向いていることをしろ。
今回、唐沢寿明のエピソードを紹介したのは、そのことを言いたいがためだ。
残念ながら、あなたの自意識が好み望んでいることと、あなたに向いていることとが一致してないケースというのはある。一致している場合には「好きなことをやれ。やりたいことをしろ」というメッセージは有効である。後押しさえしてもらえれば、道は正しいわけだから。
ただ、あなたのしたいことがあなたに合っていない場合、「したいことをしたらいい」というメッセージは役に立たない。余計に、遠回りさせることになる。
もちろん、やりたいようにやることを貫くのも、ひとつの大事な体験であり、宇宙が回収したい可能性のシナリオである。でも、そういう次元の話はやめて、本当にあなたが今生で「幸せになりたい」のなら。人生という名のゲームでうまくやりたいのなら。今回私が言ったことはあなたの力になるかもしれない。
一面的なスピリチュアルの理解だと、やりたいことをあきらめたら『負け』みたいな雰囲気がある。たとえ結果として現実がうまく回っても、そもそもの夢をあきらめて妥協してしまったら、たとえ現実はつくろえてもそこに何の価値があるのか? なんて論調になりかねない。
そんな風な使い方をするのなら、「やりたいことをしろ」というメッセージは迷惑である。向いていることをやって、周囲を喜ばせたいと自我(エゴ)の夢をあきらめることは、それは失敗ではなくたたえるべき「勇気」であり勝利だと私は思う。
自我の望みと向いていることが一致するケースばかりではない。そういう人たちのために、今日はエールを送りたい。
●限界を感じる時、それをあきらめるのは恥ではないよ。
他であなたが世界を喜ばせることがあるなら、それは何より貴いことであり、宇宙からのギフト。
あなたが人々の喜ぶ顔を思い勇気をもって選択する時、宇宙もまた歓喜するだろう。そしていつの間にか、皆のためにと向いていることを頑張っていたはずが、それを好きになっている自分を発見すると思うよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます