Q&Aのコーナー第六十五回「楽に生きる方法ってありますか?」
Q.
人生、何とか楽に生きる方法はないものでしょうか?
A.
ありません。
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『人生、何とか楽に生きれないもんだべか……』
生きることに疲れたような時、こんな考えが頭をかすめることは誰しもある。
私も過去に、何度かそんなことを考えた。さて、今の私ならこの問いに何と答えるだろうか。
身もふたもない言い方をすれば、「そんなものはない」。
釈迦が「一切皆苦」と表現したように、そもそも生きるということそのものが「苦」なのだ。もちろん、ここでの苦とは痛みなどの苦しみとは違い、「思い通りにいかない」というニュアンスでの苦である。どっちの苦であるにせよ、「楽ではない」ことは確かだ。
この世界の存在意義の大前提がそれなので、もう仕方がない。そもそも「苦労しにきた」のであって、それを「何とかしなくて済むように」などと考える時点でアウト。本来逃れられないものを頑張って逃れようとするので、普通に苦労するよりも余計に苦労をしょい込むようになるという、笑えないことになる。
端的に言うと、「楽に生きようとあえて画策し目指すと、結果余計にしんどくなる」ということが言える。
我々の捉えきれないあちらさん(一元性)が、完全性を捨ててこの世界を作ったのも、人間的なベタな言い方をすれば「買ってでも苦労をしようと思った」わけだ。
一元性がそのままでいたら、それが一番「楽」だったわけだ。完全だから、何もしなくていいのだから。でもどういうわけか、その完全であるはずの存在が静寂を破って「行動を起こした」。
完全な存在が何かをする? その時点で、「完全神話」が崩壊してしまった。あちらにしたら、そこまでして「(幻想だけど)生きる苦労」をしてみたかったのだ。
さっきから散々「苦労」という言葉を使っているが、皆さんはこの言葉にあまり良いイメージはないだろうと思う。この記事の文脈で使っている『苦労』という言葉は、「エネルギーをどんどん注ぎ込んでも惜しくない行動」のことだと解していただければいい。
そもそも、人が何をしているかに関わらず(寝ていようと仕事していようと)、本来的に生きること全般すべて「しんどいこと」なのである。それ以外ない。
『人魚姫』という童話が、参考になる。
海の住人であり、本来は足がない人魚姫が、人間界で生きたいと願った。
魔女は人魚姫の願いをかなえるが、ひとつ警告する。お前は歩くたびに、ナイフで刺されるかのような痛みを感じることになる、と。
それでも人魚姫は、人として生き王子と幸せになる夢を追う。完全なる存在が、ヘンなリスクをしょい込んでまでこの世界を味わっているというのは、それと似たことである。その原動力は我々にもおなじみのもので、「情熱」である。
結論としては、「楽に生きる方法なんてない」ことになるが、ひとつだけやりようがある。これは厳密には 「楽に生きる方法」 というよりも——
●楽だと錯覚する方法
そう表現するほうが正しい。
一流スポーツ選手や格闘家・何かの楽器のプロ・役者などという人種は、それこそ一流であるために血のにじむような稽古をして、技と芸を磨く。
はたから見ていれば、「よくやるよね」って感心するくらい、鍛錬がすごかったりする。そりゃこれだけやってればトップにもなるよな、って納得もする。
でも、当の本人からしたらどうか? 実は、周りが思っているほど大変だとかしんどいとか思っていなかったりする。
むしろ、楽しい。
不思議なもので、自分の心からしたいことがやれていると、それほどしんどく思わないものだ。あまり疲れない。もっともっとやれそうな感覚も湧いてくる。
これがイヤなことだったら、そうはいかない。学校の宿題やキライな授業だと、10分でも一時間のように感じ、疲れ方もひどい。
これを応用するしかない。
事実上は楽になどなっていないのであるが、あなたが自分のやっていることを好きになれば、楽だという錯覚を生み出すことができる。
今錯覚だと言ったが、決してバカにはできない。その錯覚はミラクルな仕事をしてくれる。何かを好きになると、その対象に取り組んでいる間は楽になる。
だったら一番いいのは——
●生きることそのものを好きになること。
人生を愛する、というのかな。これは、言葉では伝えにくい概念だ。
ごめんなさいだが、これは手とり足とり教えてやるわけにはいかない。そうやって伝える類のものではない。あなた自身がつかむべきものだ。
筆者は、この人生ゲームを楽しむことに決めた。もちろん、「楽」だなんてどうしたって言えない。(笑)
でもじゃあ、しんどい今の状況は嫌か? と聞かれると、そんなことはない。結構、好きだったりする。だから苦労が苦労でない。
したいことをするための苦労なら、それは逆に楽しさでもある。そのように、「人生が本当に楽になる」道などなく、視点の持ちよう・気持ちの持ちようによって 「人生が楽しい。楽だ」と錯覚(解釈)できる道が与えられているだけなのである。
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