もしもこの書が書かれなかったなら?
本書の読者から寄せられたコメントで、興味深いものがあった。
その読者は、私の発信が好きで、よく助けられて感謝しているという。そんな中で、『もし、筆者の発信が世界になかったら?』ということを考えたら、恐ろしくなったらしい。
色々悩んだり苦しんだりしていて、スピリチュアルにその解決を頼っていた。そしてたまたま、なぜかマイナーなこの筆者のメッセージに行き当たった。
この方にとって、日々スピリチュアルに触れることが『精神安定剤』の代わりだったようだ。そういうスタンスでいると、ファンはスピリチュアル発信者にどういう期待を抱いてしまうだろうか?
●私を救う文章を書いて!
私が喜べる内容をちょうだい!
まるで、「ヤクをちょうだい!」みたいな。
これはもう、救っているとは言えない。むしろその逆である。依存させてしまったのである。
ここでもう、不幸になるメカニズムが出来上がっている。
ヤク(望み通りのもの)が与えられている内は、儚い一時の夢が見られる。しかし、そのヤクが切れるとどうなるか?
(例えば、頼りにしている教えでは対処しきれない状況が生まれた時や、ヤク自体が実は自分を救うものではなかった、と夢から醒めた時)
期待したものが得られないので、不幸になる。
本当に必要な何かを買う時に、Aの店になければBの店に行ってでも買うだろう。だから、ヤクの売人を変える。すがるスピリチュアルの内容を変える。
夢から醒めるまで、それを幾度も繰り返す。
批判というものも、同じ構造をもっている。建設的な批判ならいいが、そうでないものはただの「期待の押しつけ」である。
批判者は、批判対象を本当には嫌っていない場合が多い。好きの裏返しなのだ。
ただ、見た目に分かりやすい「肯定的ファン」との違いは何かというと——
【肯定的ファン】
→ それまで、その人の望む内容を与え続けてきた実績がある。
だから、もっとおくれと要求する。
【否定的刺客】
→ 無意識下で気になっているが、なにせ分かりやすくその人が望むものを与えた実績がない。
だから、なぜオレの望むものを書かない? 書け! と要求する。一見、こちらを蔑み恨んでさえいるようだが、実は熱いリクエストを歪んだ形で送っているだけ。
ホラ。それほど両者違わないでしょ?
ただ、このふたつを突き抜けたレベルというものがある。
それは「必死で、ないと困ると思い込んで求めていたものが、実はなくても大丈夫だった」ということに気付いた時である。
酸素ボンベは海中でこそ必要だが、陸の上にいることに気付かず、ボンベで酸素を補給しているようなものである。
でも、酸素の吸入口を口から外したら、死ぬかと思いきやあら不思議! 大気があるじゃあーりませんか! ああ、面倒な呼吸法してたのね、オレって!
いつか、探求が止むタイミング、というものがある。
その時までは、不可抗力で人は外に自分を支えてくれるもの、ガイドとなるものを探し続ける。ひとたび 「見つけた!」と思ったなら、全力でしがみつく。
すべて、スピリチュアルにたかる熱心な人は、この段階にいる。
それは別に、いい悪いの問題ではない。幼いだけである。
幼いことは悪いことか? じゃあ、生まれたら赤ちゃんと幼児期をすっとばして、青年になるのが合理的で理想的か?
誰しも、通過するもの。その時期のズレ程度で、優越感に浸ったり劣等感に苦しんだり、バカみたい。
アニメの主題歌だったか、『人は誰でも幸せ探す旅人のようなもの。希望の星に巡り合うまで探し続けるだろう』という趣旨の内容があった。
これは、私としてはちょっと違うと思う。希望の星、という具体的な最終目標など存在はしない。
「希望の星がどこかにある」という意識で探し続けている限り、旅は終わらない。
では、旅の終わりとは、どこか? それは、具体的な場所ではない。
●そうか。自分が今いる場所を心から受け入れられたら。
『そもそもここで、これでよかったんだ』と気付いた時。
あなたのいる場所がどこであっても、そこが「希望の星」となる。
希望の星は、まさに今あなたがいる場所なのである。そこに憩えることができたら、(精神的な意味で)どこにも行かなくていいのだ。
本書があろうがなかろうが、他のメッセンジャーたちがいようがいまいが、それはそれで全然大丈夫。
いるのは、今必要だからで。仮にいなくなっても、それはそうなれば本当に必要ないからで、どちらでも何の問題もない。
本書は、あなたを引き上げて幸せにするためのものではない。
だから、私にあれこれ要求しても仕方がない。要求するうちは、自分が主人公の人生を生きていないということだ。
要求が止んだ時。あなたが、自立しだした時。その時こそあなたは、新しい世界を見るだろう。
でもそれは「新しい」のではなく「もともとそうであったものをあなたが今まで違うふうに見ていた」ので新しいように思える、というだけの話であるが。
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