逆オレオレ詐欺

 どこかのワイドショー番組で「オレオレ詐欺」の特集をやっていた。

 昔は、「オレだよ、オレ!」って感じで、名乗らず息子を装って不安にさせた親からお金を振り込ませていたのが、今では手口も進化(?)していて、今日見たのでは 「エコな風力発電推進への協力を呼びかける話から発展させて、一口いくらで振り込ませる」手口を紹介していた。

 何だか、今ではオレオレ詐欺とは「ものすごく手の込んだ振り込ませ詐欺の総称(代名詞)」のように使われている。これほど市民権を得てしまった悲しい造語も、珍しい。

 エネルギーのベクトルとしては、皆さんが言う「悪」であるが、不謹慎だがある意味エラい。だって、ちゃんと時代時代に合わせようと努力しているんだもの!

 一発芸人は、オレオレ詐欺をする方々の、目まぐるしく変化する新たな時流に柔軟に対応しようとする姿勢を見習っていただきたいところである。



 だまされる方の話は、今日はさて置き。今回は、だます方の立場のことを考えてみたい。何で、あんなに苦心してまでオレオレ詐欺をするのだろう? その努力を建設的に前向きに使えば、結構社会でやっていけるような……?

 でも、そういう「~していたら」「~していれば」を考えても仕方がない。スピリチュアルの本質というか、目覚めへの第一歩として必要な気付きは次のようなことである。



●たられば、を考えることの無意味さに気付くことである。

 気付いたら、そういうことを考えめぐらせる癖が抜けていることである。



 筆者は、ほとんどと言っていいほど考えない。

 もちろん他者から振られた会話の中で、思考する状況というのはある。でも、自分から進んで考えることはない。

 もちろん、絶対考えるなということではない。「考えるという行為ができてしまう」のだから、それはあっていいのだ。あっちゃいけないことは、この宇宙では起こり得ない。

 趣味で遊び程度に、「たられば」の世界を考えるのはいい。でも、それが行き過ぎて、すっごくイヤな気分になったり、不幸な心境になったりするなら、それは料理の食べ過ぎでお腹を壊すようなもの。運動のしすぎで逆に体を壊すようなこと。

 遊びの域を越えてマジになると、あなたの心は機能不全に陥る。たら、ればを考えることで心を病むほど無意味な行為はない。 



 オレオレ詐欺に限らず、世の犯罪全般について皆さんが見ているひとつの「幻想」がある。それは『悪意』というものの存在である。

 心無い非道な事件や犯罪に触れた時、世の平均的善人たちはこう考える。犯人には「悪意」というものがある、と。その悪意の結果のことである、と認識している。

 悪意を持った人のことを、悪人という名前で呼んだりする。悪意、とか悪人とかいう言葉はこれまでほぼ常識のように使われてきた。実際に悪意というものは存在し、そのせいで悪人という人種が存在すると皆思っている。

 でも、ハッキリ言っておこう。



●悪意、などというものは宇宙に存在しない。

 よって悪人、という人種も存在しない。



 ある、と思い込んでいるから。前提を疑わず、そういう概念を保持しているから。

 神なる皆さんがその幻想にパワーを与えてしまっており、存在感が増幅されているだけ。悪意がないんだったら、じゃ何で人をだまそうとするの?

 その根本的原理は——



●今ここを受け入れられない心

 ~べき、~べきでないという認識パターン



 これが、皆さんが悪と呼ぶすべての現象の「闇の首領」である。これに比べたら、悪意なんてショッカーの戦闘員並にカワイイ。

 オレオレ詐欺なんて、なぜするのか? お金が欲しいからに決まっている。

 じゃ、なぜ正当な手段でお金を得ようとしないのか? 表の世界で合法的にお金を得ることのできる立場にないからである。

 でも、生まれてからすぐに「悪人としてのアイデンティティをすり込まれる教育」を受ける人はほぼいない。多少の家庭事情のいびつさはあるものの、「お前は根からのは悪人」と親から教育される人は、まずいない。

 だから、大なり小なり誰の心の中にも「これはいけないこと」という認識があり、決して逃げられない。だから、実行するときやはり大なり小なりの「葛藤」が起こることになる。

 一般の方なら、まず実行に踏み切れない。だって、立ちふさがっている「良心の壁」の高さが、それを踏み越えようとするその人の「ジャンプ力」に勝るからだ。

 でも、オレオレ詐欺をする人たちは、そうではない。良心の壁を見事に越えるほどの「脚力」を得てしまうのだ。



 本来、その詐欺師も神である。宇宙の王である。

 だから、本人の顕在意識が無自覚なところで、自分は本来すべてであり、豊かさそのものだと知っている。でも、この幻想ゲーム世界ではそんなこと覚えていない。

 現実には、世の中の勝ち組の流れに乗れず(表舞台で正々堂々とは勝てず)、割を食っている。カネもない。そこで、彼らは「今ここ」を、そうあるべきものとしてそのまま受け入れることができない。



●私は、本来豊かであるべきなんだ!(なぜかそう思う) 

 だから私は、こんな欠乏状態であるべきではないんだ!

 なのに、今の私は合法的にお金を稼げない。(←これがまず、勝手な思い込み)

 ならば、こうでもして稼がないと仕方がないだろ?



 こういう感情エネルギーが、一線を越えさせる。一般人が普通越えない一線を越える時というのは、だいたい以下のパターンである。



①今ここ(自分の現状)を受け入れられない。

②受け入れられないから、受け入れられる状況にもっていこうとする。

③でも、自分の身の上の事情から、合法的にかなえることができない。

④その縛りだけは忠実に守ろうとするので、「違法」という形になる。

⑤普通想像はしても実行はしない。でもその一線を越えさせるエネルギーが生まれることがある。

⑥それが、~べき、~べきでないという認識パターン。

⑦オレは、オカネがたくさんあるべき。(根底に本来豊かであるという無意識自覚がある)でも無いから、こうでもするしか仕方ないやろ! そんな攻撃的感情エネルギーに変質する。



 例えば、痴漢とかレイプとかも、この構造で考えると分かりやすい。



①今ここ(モテない。女性に好いてもらえない)を受け入れられない。まずひとつ目の思い込み。

②でも、それは本来的神として認められない。だから、何とか叶えたいと思う。

③でも、自分の身の上(男としてイケてない)の事情から、合法的に叶えることができない(と、本人は思っている)。ふたつめの思い込み。

④幻想上考え付いたその縛りになぜか忠実であろうとするので、「本来的でない」達成方法を考え付くようになってしまう。

⑤比較による理不尽感情エネルギーが少しであれば、AVとか性風俗での処理で誤魔化すことが可能。でも、それが時として 「何でオレだけが」「オレも人並みに幸せになれるべきだ」という、怒りの感情に転嫁し、するべきでないという壁を越える場合がある。

⑥オレも……ができるべき、(神が)不幸なんてことがあるべきではない、という認識パターン。

⑦でも、実際女性に縁がない(しかも、バカにされてきた)。お前らが悪いんだ! こうでもさせてもらうぞ、悪いかぁ! 自分の現状を納得できないそんな思いが、見境ない攻撃エネルギーに転じる。



 悪意をもって犯罪をしている人は、いない。いるようにみえるのは、あなたの勝手な見方だ。

 宇宙の叡智は、人間のエゴを尻目に冷徹に、完全に事を運んでいる。すべての悪と見えるものは、人間主観による「勘違い」の産物である。「今ここ」を受け入れることのできない、弱さである。

 だから、皆さんが呼ぶ悪とは、取り締まったり罰したりすることで根本解決できる性質のものではないのだ。(最初のアプローチとしては仕方なくても、それで終わってはいけない)それは雑草を根元から抜かず、見えている土から上の部分だけを刈り取るようなものである。

 悪は、認め愛するためにある。抱くためにある。

 だって、彼らは弱いという幻想に溺れているだけなのだ。自分は不十分である、という幻想に溺れているだけなのだ。

 だから、お説教ではなくヒントは発信し続けよう。いつかその人が、そんなに力まなくても良かったのだと気付けるように。無理は必要なかったんだ、自分を貶めてまで世に復讐しなくてもよかったのだ、と。



『逆オレオレ詐欺』なんてものがあっても、面白いだろうなぁと思う。

 以下のような詐欺だったら、どんどんやってもらったらいいと思う。



「……もしもし、どちら様?」

「あっ。オレ!オレだよ、オレ!」

「お、お前かい? 連絡がなくて心配してたんだよ。ちゃんとやってるのかい?」

「あのさ、オレ商売初めて、これが当たってさぁ! 軌道に乗ったんだよね。親孝行してなかったし、お金振り込みたいんだよね。今から口座番号教えてよ。でさ、すぐ振り込むからATM行って! 入金確認できたら、要るだけ引き出してくれたらいいよ!」



 お金を出させる詐欺ではなく、お金をあげる詐欺。

 こういう面白いことをやる、オレオレ詐欺って出てこないかなぁ?

 単なる妄想だが、来るべき豊穣の新時代に向かう道中、それくらいの遊び心があっても面白いかと思う。

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