第5話-①
ケブーラを出発してから5日が経った。
この5日間、何度かのキャンサーとの戦闘はあったが静かな時間が流れることが多く、今のところ順調に道程を進めていた。
「でも、あー・・・さすがに暇だな」
トレーラーの天上に居座り暇をもてあますコスティ。
時折、監視塔のごとく双眼鏡を覗いては周囲を警戒しているが、レーダー塔のようなノイドが3名もいてはコスティの警戒、索敵は一歩遅れる。
「暇ト言うのデシタラ、腰にぶら下げているハンドシューターの練習デモしてミテは?」
「・・・ZZZ」
「ネルナ」
クーイの暇つぶしの提案を受け、コスティはゆったりと倒れこみ寝ることを選ぼうとするも、ゴーイのツッコミが厳しい。
「まぁ、そうだな。たまには練習でもしておかないとコイツの活躍する場もないしな・・・」
「ちなみにコスティ。ハンドシューターを今まで使ったコトは?」
「ないな」
「「「・・・ ・・・」」」
表情のないノイドだが、何を訴えているのか伝わる沈黙に堪えかねたコスティは、黙ってハンドシューターをホルスターから抜いた。
コスティは移動を続けるトレーラーの上から、両手でハンドシューターを構え、適当な岩を目掛けて引き金を引く。
このハンドシューターは武器として作られたウェポンギールで、主に女性が護身用に携帯する小型の銃である。
ギールなので火薬を使っているのではなく
ただ、手に伝わる反動はシッカリとありコスティはこれを制御できないため弾道が安定しないでいた。
その後も何度か引き金を引き、残弾がゼロになるも一発もあたらなかった。
「アナタの射撃技術は絶望的ですネ」
「うるさい。ほっとけ。俺はギディックだっつーの」
そういいながらも、弾を補充し何度か引き金を引いては的にした岩に当てれないでいた。
「コスティはハンドシューターをどういッタ理由で選んで使っているのデスカ?」
「んー・・・理由は特に無いな。携帯できるし邪魔にならないし、俺でも撃てるし・・・程度だな」
「護身として持つにシテモ当たらなければ護身にもなりマセン。アナタに銃を扱うセンスは無いヨウですが、携帯する武器を変えてミテは?」
「っぐ・・・その通りなんだが・・・そう言われてもなぁ・・・あ」
話しながらも射撃を続けていたコスティだったが、反動で銃口が上に向いた状態で誤って弾を発射した際、弧を描いて飛んだ弾が、何かに当たったのが分かった。
遠くのほうで何かが動き出すのが見えたからだ。
「オイ、コスティ、余計ナモニ、当テルンジャ、ナイ」
「**** **** ****」
「ナイフ。黙って俺の顔を見ないで・・・何か喋って・・・」
200mほど先にあった大きめの岩だったものが、ゆっくりと起き上がりコチラに向きを変えた。
見た目は大きい岩トカゲといった感じで、大きさはナイフが引いているトレーラーくらいはあるだろうか。
四速歩行で向かってきており、その歩調はゆっくりしたものだったが近づいてくる度に、だんだんと足音は大きく、早くなっていった。
「おぃおぃおぃ。やばいんじゃないの。あの大きいキャンサー、ゴーレムなんじゃないの?!」
「的に当てラレズ、よりにヨッテあんなものに当てマスカ? しかも、レーダーでも捕捉しずらいゴーレムを・・・」
また、溜息の出ない
「ク、クーイ、現状の装備であれを倒せるかっ?」
「現状の装備デ倒せる見込みは5%といった所でショウカ」
「・・・よし逃げよう。そうしよう。さぁ逃げよう」
「あのゴーレムをそのままにシテはおけマセンが・・・仕方アリマセンね。このまま走りマスヨ」
ゴーレムに関して言えば、何かしらの刺激を与えない限り襲ってはこない。
一度、敵と認識されてしまえば地の果てまで追ってくる性質を持つゴーレムだが、ゴーレムを倒すには岩の中にあるコアを破壊するしかなく、破壊力のある武器か兵器で外装になっている岩を吹っ飛ばす必要がある。
クーイ達はそんな重装備を今回は持ち合わせていない。この岩トカゲが
「ナイフ、すまねぇ。全力で走ってくれっ」
「〈No.5001〉モ戦闘モードでトレーラーの走行補助ヲお願いしマス」
「モンダイナイ」
ゴーイが逆関節モードに移行するとトレーラーを後ろから押し始めた。
クーイはトレーラーの横を走りながらライフル銃で牽制しているが、外装になっている岩を多少削ぐだけで全く足止めになっておらず、そのスピードは徐々に速くなっている。
「あいつ、走るのがだんだん早くなってやがるぞっ」
「コスティ。オ前ガ、走ッテクレタラ、65kg分、速クナル」
「バカ言えっ! 殺す気かクオラァっ!」
トレーラーの上部ハッチから上半身を出し、岩トカゲを観察していたコスティにゴーイは容赦のない事を言ってくる。
現在、おおよそ時速35kmは出ているだろうか。とても人間が走って出せる速度ではない。
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