ゴールドフィッシュは譲れない

作者 黒尾九郎

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★★★ Excellent!!!

 本作の題材である「金魚すくい」は、前提知識として調べてみると実際に競技化されており、奈良県大和郡山市での大会が有名らしく、しかも今夏(2019年夏)にめでたく世界大会化した模様。今後「競技金魚すくい」の動きはますます活発化していくのではないかと思う。

 本作はそんなワールドワイドに展開している奥深い金魚すくいの世界に、文字通り短いひと夏をかける水産高校生たちの物語である。

 まずタイトルがとても魅力的で、数ある完結作品が列挙されたページで目が吸い寄せられた。そしていつの間にやら最後まで一気読み、一言で言って非常に面白い。自分は読む作品を選ぶ上に完結まで読み切る作品もそうそう無いので、この時点でかなり良作の評価になる。

 話を戻して金魚すくいの思い出といえば、祭りの出店で一匹もすくえず、オマケでもらった金魚をどのように育てたら良いのかもわからず、そのまま死なせてしまった経験が自分にもあった。主人公の浜渦澪治もそのひとりとして入門試験の感想文で金魚愛をしたためる。

 ヤンキー同然の潮田やガテン系の池波、そして同好会(部)の紅一点で古風な言い回しが特長の風海といった個性的で愉快な仲間たちとともに、夏の間各地で開催される祭りへ出向き出店で金魚すくいのスキルを研鑽していく様子は輝かしく凝縮された青春そのもの。陸上部を退部し行き場を失った浜渦澪治が徐々に居場所を見出し、二重の意味で「すくいすくわれ」てゆく展開も王道の青春模様だ。

 祭りの先では数々の金魚すくい士、通称「名人」としのぎを削り合うが、彼らもまた同好会(部)の面々以上に個性派揃い。特に二つ名の「影女」はかなり笑ってしまった。というのも、一歩間違えたら単なる悪口にさえなりかねないものも、常識人たる主人公の冷静な語り口によるツッコミがユーモアに昇華させているのだから。このウィットに富んだツッコミが本作における最大の… 続きを読む