第125話 産声②
それはとある発想の元、塩に水やりを繰り返し、本来のよりも塩は溶けやすかったから、比較的早くことを終え、そして自動回収やレベルアップがないことに、妙な予感を覚えた拍子の出来事であった。
「ヤバい、流石のこれは想定外だわ…」
何故こんなことになったか、と化け物を見上げながら自問自答するレスト。
当初、水を掛ければ元の姿に戻ると考え、ひたすら水を掛けた。
でも、塩らしく僅かな水気なら兎も角、大量の水だった為に固形ではなく、固体と表現して良いのか分からない溶ける一歩出前で水に残っている塩となった。
この結果を見れば、この攻略方法が失敗だったと普通の人なら考えるけれども、普通から離れた所にいるレストは違った。
少しずれた考え方と、攻略法の深読みのし過ぎと、水を掛ければ倒せるという思い込み、現実時間で夜という疲労を感じやすい時間帯で、単調な作業による僅かな眠気を感じていた為、早く終わらせたいという願望が、とある発想を浮かばせ実行させた。
それが、水で塩を溶かせば、塩で体が構成されていた無くなって倒せる発想である。
しかし、これはゲームであり、HPを削らなければ相手を倒せない。
この発想では、バケツ程度の水を掛けた程度でダメージを与えられず、体が水浸しになった所で意味は無かったのだ。
なので、オブスキュアソルトマンには無意味だった。
──ルルァアアアアァァァァアァ!!
けれども、特殊条件──瀕死の状態、
レストはHPを確認する為に、鑑定して呻くような声を漏らす。
「何…これ」
レベルやHP事態に変化は無かったが、さっきまであった名前は文字化けし、状態にも????と表示されていた。
レストは意味不明な状況に頭の中が真っ白になり、地面に落ちた事で汚れた塩水が大きな人型になる光景も、茫然自失と言った感じで見つめる。
悲鳴のような産声を上げ、完全に原型は何だったか分からないオブスキュアソルトマンの成れの果ては、今までとは違った行動をした。
「ぐっ!?」
「ゴルルルァァア!!」
バグみたいな現象に意味が分からず立ち尽くレストへ、僅かに残っていた足下の水が背後から襲う。
レストは水の中になり慌てた様子で息を止め、汚れた水で目に僅かなダメージを負いながら開いた先に、無重力で地面から浮いたかのように大地から離れた位置にいた。
だが、それを認識すると同時に水から弾き出される。
「ゴッホゴッホ…」
弾き飛ばされたレストは転げ止まると、激しく咳き込みながら、反射的に顔を拭き、名前不明な何かを見る。
「あれって!?」
人型のような形をした水の中に、動く塩を入れていたポーション瓶が漂っていた。
叫ぶと同時にポケットを押えても感触は無い。
すると、ポーション瓶が光となって消える光景が目に映り、「あっ、勿体ない」とレストは場違いな事を言う。
名前不明の何かは体の一部を取り返して蠢いていた体が一瞬硬直した後、その塩は水と溶けて消える。
それに大きな悲鳴を上げ、苦しむように体が人型でなく、腕が増えたり足が無くなったり不形態へ変わった。
「ルァァァァァァァア!!ゴルルルァァァァア!アァァァァァァァァァァァァァアアア!!ルルァァァア!ゴルァァァァァァァァォァア!!」
レストはあまりにも異様な光景に、気持ち悪くなり後退る。
その瞬間、緑色の魔法陣から風弾が無数に放出された。
「テンリ離れ…」
風魔法の存在でテンリが戻ってきていることに気がつき、離れるよう叫ぶ寸前、面影すら無くなったオブスキュアソルトマンは急に動きを止めた。
レストが非常に嫌な予感を抱きつつ、足下を水が無い所に移動し、何時でも行動できるように身構える。
攻撃してくるかと思われていたが、名前不明の何か取った行動は違った。
「ア…ゴ…ル…ァァァァアァ!」
攻撃をしていたテンリへ攻撃する訳でもなく、近場にいたレストへ捕まえる訳でもなく、突如何処かへ移動し始めた。
「えっ!?………」
まさか攻撃するのではなく、叫びながら逃亡すると考えてなかったレストは、再度意味が分からなくなり、理解するまでその場を動けなかった。
意味不明な何か遠ざかると、フタバが心配そうにレストを見つめ、テンリが警戒しながら下りてきた。
「あう?」
「……」
それと同時に、その行動が何を意味するか理解したレストは叫びながら、走り出す。
「ちょっと待って!ここで居なくなられたらクエストがーー!!」
必死な形相で走りながら、背後から飛んでくるテンリとフタバに、今日一番大きな声で叫んだ。
「テンリ!フタバ!あれをどうにかにして倒すぞ!!」
レストが取った行動は偶然にも、後にエクストラクエストの一部に含まれるイレギュラー──『二択』と呼ばれるエクストラクエストを取った者が起こす行動だった。
────────────────────
前回は更新遅れて申し訳ありません。
今回でこのボス戦終わるはずが、また伸びちゃった…。
まさかの序盤で終わるとは思ってもみなかったです。
無駄が多いのかな?…まあいいか。
来週も忙しいので、出来なかったらごめんなさい。
ちなみに、バグみたいなモンスターですが、これも仕様です。
あっ、タイトルを『産声』に変更しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます