第28話 落ち着いたら案外思い付く
8月11日午前9時に朝の日課を終わらせたレストは宿屋にログインした。
其の足で神殿へ転移し、生産エリアで炸裂の実を創り、柔らかい椅子に座って癖付いた独り言を言いながら爆裂玉を作成し続ける。
「こんなもんかな…」
その数が【宝物庫】で爆裂玉×3となり、レストは作るのを終えた。
今回の最高傑作の爆裂玉は、最後から10番目に作られたものだ。
名称:爆裂玉壱式
種類:道具 品質:6
耐性値:25/25 重量:1
効果:衝撃を加えると微爆発する。攻撃力+11。自爆時威力強化小。爆発ダメージ上昇小。与ダメージ上昇小。爆発強化微。爆発範囲上昇微。地形破壊微。武器破壊微。爆発威力収束。投擲可能。自爆可能。罠設置可能。
参考:レスト作。取り扱い注意。
初期の頃に比べると品質が3、耐久値が5、攻撃力が6上がり。効果は爆発ダメージ上昇、与ダメージ上昇、自爆ダメージが一段階上の効果となった。さらに、爆発範囲上昇、地形破壊、武器破壊の効果が増えた。
炸裂薬の爆発範囲を縮めて使いやすくした爆裂玉で爆発範囲が広がったのは残念だが。爆発でのダメージを今までより格段に強くなった、というアリスが聞けば「…理不尽」と言われる爆裂玉が完成した。
なぜ900個近い爆裂玉を作り出したのには理由がある。
昨日ログアウトする前にレストと波長が合ったと表現すべきか、ウマが合ったと表現すべきか、意気投合したアリスと木漏れ日の森以外の暴獣に挑戦してみようという話になったのだ。
ついでにレストへ戦闘のイロハを叩き込むとのこと。あまりにも酷すぎる結果(爆裂玉の威力とヘタクソな戦闘)を見ていたアリスはそう決断した。
アリスが午前中に用事のため、予定は午後13時からなのでまだまだ時間がある。
「うーん何を作ろうかな。初級ライフポーションは100個ぐらいあるし、他に必要なもの…」
本当はMP回復アイテムの初級マナポーションを作りたいが、材料となるマナフラワーはレベル11以上の場所にある上に発見確率が低く。マナポーションは必需品で高く売れるという理由もあり、マナフラワーは即完売してレストも手に入れることが出来なかった。
レストは【宝物庫】やインベントリの整理を兼ねて見るけれど…
「ダメだぁーーあ!!思いつかない」
整理したことで従魔の卵の存在を思い出し、レストは精神を落ち着ける為に、腿の上に卵を乗せて撫で始める。
炸裂の実を得てから爆発の危険性があり、卵を割らないよう出さないようにしていたのだ。
怒濤の日々で忘れてたが。
撫でると、作りたいと荒ぶっていた心が静まるようで、レストが今体験しているように、焚き火にもリラックス効果があるという思い出した。
森の中でキャンプした時、石に座って焚き火を楽しんだなーっと。
レストはふと思いつく。
「椅子ちょーいるじゃん」
キャンプセットの中に椅子が無いことを。
「コンパクトチェアだっけ。あれなら背もたれがないからモンスターの襲撃に対処しやすそうだし…いいかも」
長方形の枠が1本とそれの一回り大きい枠が1本の鉄パイプがあって、それぞれの辺が長い方の中間を重なるよう配置し、2ヵ所の中間部分を先端部を潰した釘で固定した、椅子の足となる部分。
そして座る部分に、片面の辺が短い方の2本に一枚の布を付けた椅子──コンパクトチェア。
これなら何かあった時に立ちやすく、必要な素材とかも少なくて済み、折り畳むことも出来る便利アイテムが作れる。
「問題は足の部分か…確か金属だったよな。なら銅だけど銅では形揃えるのが難しい…」
今のレストの技術では、幅や形状を均一にするのが難しい。
そもそも銅の所持数が少なく、【万物創造】で銅鉱石も銅のインゴットも出せるが、レシピに載ってないオリジナルアイテムを作るのだから大量に必要。
でもやるしかないかと考えながらも、13時までに終わらない気がしてやる気が萎え、再び卵を撫で始めるレスト。
「はぁー。木ならたくさん取ってきたからあるのに……あっ!!木で作ればよくね」
思わずグッチった内容にレストは閃いた。
木なら昨日木漏れ日の森で伐採した大量のスギの木が余っており、木は銅よりも加工しやすく修正が容易。
やや耐久値が低くなるだろうが、戦闘に使うわけでもないから低くても問題ないし。使う布であれ、木であれ、火には弱いが、直接火に近づける訳でないからこちらも問題ない。
「これも卵のお陰かな…」
5分ぐらい卵を撫でて、卵をしまってから作り始める。
そして、青色の羊の布とスギの木から作り上げたのは──
名称:木製コンパクトチェア(青)
種類:家具 品質:4
耐性値:184/184 重量:2
効果:耐久減少軽減微。空腹減少軽減微。HP回復速度上昇微。MP回復速度上昇微。着席時に体力回復微。
参考:レスト作。
体力もHPもMPも回復させることが可能な、癒しのコンパクトチェアだった。
「休憩にぴったりな椅子だし、アリスの分も作ろうと」
レストは13時ギリギリまで赤、青、緑、黄色の4つのコンパクトチェアを作り出す。
これが後にプレイヤーたちに広まり、フィールドで使う体力回復用アイテムとして普及するコンパクトチェアが生まれた瞬間だった。
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