第3話:穿つ
床に向かって斜めに光が射すのを見た他の3人は胸の前で腕を組み、うーーーん? と唸り始める。前方に光が進んでくれていればまだマシだったと言うのが3人の共通の感想であった。
「どうするッス? いっそ、床に穴でも開けてみるッス?」
「ナイスアイデーアなんだみゃー。とういわけで、タイラー殿。
「おおう。その発想は面白そうだな。普通は下りの階段を探すのであろうが、たまには強引な手を使うのも悪くない……。どうせ、
マスク・ド・タイラーはそう言うと、手に持っていた
「むむっ!? 意外と硬いな!?」
その黒い床をマスク・ド・タイラーは右手で触り、むむむ……と唸り始めたのであった。
「これは難儀しそうだぞ? 下手をするとポティトゥ3大貴族たちの皮膚よりも硬いかもしれん。こんな狭い場所で爆発系魔術を使うのは危険すぎるし、さてどうしたものか?」
「あたしたちは避難しているから、タイラーは思う存分、床に爆発系魔術を使っていいのよ?」
「ナナ……。それはさすがにひどくないッスか? それと床だけじゃなくて、もし天井が崩れてきて道が塞がれでもしたら、最大戦力のタイラーさんと離れ離れになるッス……」
「あっ……。なんかシャトゥが冴えまくってるわね……。じゃあ、爆発系魔術は無しで!」
床はともかく、壁や天井は石を積み立てて出来上がっており、シャトゥ=ツナーの言う通り、爆発の余波で天井が崩れてくることは容易に想像できるナナ=ビュランであった。マスク・ド・タイラーは仕方ないとばかりに数度、黒い床を
しかし、マスク・ド・タイラーが幾度、床をぶっ叩こうと、その表面が凹みはするが、亀裂がはいることがなかったのである。手詰まり感を感じたナナ=ビュランたちはどうしたものかと思案に暮れることになる。
「困ったぞ? これは衝撃を吸収する素材を使われている可能性が高いと言わざるをえなくなってきたな。叩いたり斬ったりでどうにかなるシロモノではなさそうだ」
マスク・ド・タイラーが床を叩き疲れたのか、大槌を壁に立てかける。そして、もう一度、その黒い床を右手で触り、その表面を撫でながら、そう言うのであった。
「しょうがないなあ? ちょっと思いついたことをやってみて良い?」
ナナ=ビュランが皆にそう質問を飛ばす。だが、その言葉を受けて、シャトゥ=ツナーが怪訝な表情を顔に浮かべるのであった。
「何を思いついたんッスか? 俺は少し嫌な予感がするッスよ?」
「試しに
「ぼくはあまりナナ殿にその
ネーコ=オッスゥの意見に、マスク・ド・タイラーも同調することになる。しかし、否定されているナナ=ビュランはきょとんとした顔つきで、あの時って、どの時のこと? と逆に聞き返してくる始末である。
ナナ=ビュランとシャトゥ=ツナーには、自分たちが黒い蛇に飲み込まれた記憶が無いゆえの反応だったと言わざるをえない。
「そんなに心配することないわよ。さってと、
ナナ=ビュランはネーコ=オッスゥとマスク・ド・タイラーの意見も聞き入れずに、一度、指輪を小箱にしまった後、腰の左側に佩いた鞘から再び
そして、
ウオオオンッ! とナナ=ビュランが右手に持つ
「こらっ! あたしの言うことを聞きなさいっ! あのひとたちはあたしの敵じゃないわよっ! あんたが食い破らなきゃならないのは、この黒い床よっ!」
黒い蛇たちはナナ=ビュランに説教を受け、何故、自分たちが叱責されねばならぬとばかりに、一斉にナナ=ビュランの方へと頭を向ける。だが、ナナ=ビュランは左手のひとさし指で黒い床を指し示すのであった。黒い蛇たちは互いの顔を見合った後、釈然としないと言った表情を浮かべるが、次の瞬間にはその顔を床に向けて、口を大きく開き、黒い床へと突っ込んでいく。
ナナ=ビュランの予想通り、炎で出来た黒い蛇たちは、黒い床に侵食しはじめる。
数分後、
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