第47話「棒を弄り倒す!(前編)」

 キューポラがこじ開けられ、無防備になるミィナ!


「あ、アルガスさん! ま、魔法使いが!」


 ち!

 やはり来るか───!


『ミィナ機銃の弾を装填しろッ! 砲塔を回して打ち倒す』

「う、うん!!」


 魔法攻撃を避けるため兵士が退避しているのが幸いし、さらなる取り付き攻撃はないようだ。


 だが、開放状態の砲塔に火球でも撃ち込まれたらことだ。


 アルガスだけなら大した脅威にならないだろうが、ミィナとシーリンはタダでは済まないかもしれない。


「そ、装填よし!」

『よくやった! ミィナ、シーリン───耳を塞げ!』


「は~い♪」

「耳?? なんでや?」


 ───自分で味わえ、バーカ!



 ズダダダダダダダダダダダダ!!

  ズダダダダダダダダダダダダ!!



「「「ぐぁぁぁあああ!!」」」

 砲塔を回転させ、後部機関銃で魔導士を薙ぎ払う。

 まさか反撃されると思っていなかったのか、バタバタと倒れ行く魔導士たち。


 どうやら、さっきの取り付きで抵抗を挫いたと思っていたらしい。


 ───甘いわ!

 

「ったー……!? なんやねん、今のは? 耳がキンキンしよる」


 一方で、シーリンが「あー! あー!」と、間抜けに声をあげているが、一時的な難聴になっているのだろう。


 初めて銃声を間近で聞いたなら、無理もない。


『耳ふさげっつったろうが!───ミィナ、次の機銃弾を装填ッ』 

「は、は~い!」


 テキパキと動くミィナの動きを、ポカンと眺めるシーリン。


 街の住人と遠巻きに眺めていた時は、シーリンにもアルガスが何をしているか分からなかったのだろう。

 だが、こうして間近で機械を見ればドワーフのシーリンには色々感慨深いものがあるらしい。


「な、なんやねん!? アンタ等の、その息の合いっぷり! しかも、なんやねん───この鉄の機械は?! それにミィナが握ってるは?!」


『中戦車、チハだ』

「チハたんだお!」


 目をパチクリしているシーリン。

 しかし、ミィナの動きを目で追いその行動をトレースしているらしい。


 機械と技術オタクらしい、ドワーフの習性か。


 しかし、そんなノンビリとした時間を男爵がくれるはずもなく。


 怒髪天つくとばかりに、

「……ぐぬぬぬぬ! あ、あくまで馬車から出んつもりか!! 無礼な野蛮人め! ええぃ。掛かれ、掛かれぇ!!」

 散々味方を打ち倒されたのに、男爵軍は全く懲りない。

 よほど指揮官が信用されているらしい。


「「「うぉぉぉぉお!!」」」

 と気勢をあげると、突撃再開!!


「うわ! アルガスのおっさん!! 男爵キレよったで?! ちょ、ちょ、ちょ! 来よる、来よる!───犯されるぅぅぅう!!」


 誰がテメェみたいな、ちんまいガキを犯すか!


「ちびっ子だ~ひゃっはー!!」

「二匹も幼女がいるぜぇぇえ!! うひゃはははは!」

「早い者勝ちだぁぁぁああ!!」


 目をギラギラ輝かせた男爵軍。涎を垂らして、股間ギンギン。あ、どーりで士気が高いわけだ。


 …………うん。

 前言撤回。───犯されるわ、君たち。


「───犯されるわ!! と、ちゃうで! アタシの貞操守らんかい!!」

『んだよ、お前? 俺より年上で処女か?』

「う、うううう、うっさいバーーーーーーーーカ!! し、ししし、処女ちゃうわ!!」


 コイツ……。

 さっきまで泣きべそかいてたくせに。


 そのどさくさ紛れに、毒を盛った件やらを有耶無耶にするつもりじゃないだろうな?


 俺はケジメを付けねぇ奴と仁義を切らん奴は───好かんし、信用もしないからな?


『…………ふん。テメェの不始末は取りあえず、後にまわしてやる。今は、とにかく邪魔だけはするな! いいな!』


 ミィナをギリギリで守った事だけは評価してやるが、それ以外のシーリンの所業はれっきとした敵への貢献でしかない。


「う……。せ、せやかて……」


 とたんにシュンとしたシーリン。

 何かブツブツとほざいているが構っている暇などない。


『ミィナ! 機銃を再装填だ! 続けて榴弾を撃つ! パニクるなよ!』


「う、うん!!」


 ガチャガチャと機関部を操作して、弾倉を叩き込むミィナ。

 大分手つきは小慣れてきたが、やはり、車内の狭さと主砲と機銃のかんざし配置・・・・・・というのは厄介だった。


(※ 注釈:かんざし配置の主砲と機銃。

 砲塔に対して、その前後に主砲と機銃を取り付ける配置。日本戦車にみる特徴である)



 ズダダダダダダダダダダダ!!

  ズダダダダダダダダダダダダ!!



『次ぃ!──主砲を打ったら、順次装填!』

「りょ、了解!」


 ドゥン!!


「し、シーリンさん───邪魔ぁぁあッ!」

「あだッ!? ご、こめんやて……」


 ついには、ミィナにも邪魔扱いされるシーリン。

 そりゃぁ、そうだ!


 このクソ狭い車内に穀潰しをおいておく余裕などない!  っていうか、むしろそれが目当てか?

 こいつ、やっぱり男爵軍とつるんでるんじゃ?


『おい、シーリン!! 邪魔するなっつってんだろうが!───それとも……』

「もーー!! 邪魔なのー!!」


 ミィナもプンプンしている。

 おかげで、装填もままならないかと思っていれば……。


「「「げへへへへへへ! 追い詰めたぞぉぉおお!!」」」


 ついに男爵軍がアルガスに再び到達。

 ここに至り、躊躇う必要のない男爵軍はすぐにとりつき始めた。


『ぐ! またかッッ、離れろぉぉお!』

「あ、アルガスさん?! どっちを装填するの?」


 焦るアルガスとパニクるミィナ。

 くっそ邪魔くさいシーリン。


「じ、邪魔、邪魔て───……」


 アルガスとミィナに邪魔者扱い。

 街の住民は白い目で見る。

 男爵軍は色狂いの目で見る───。


「うう、グスン………。あ、アタシかて、」


 アタシかて……!!


 ポロポロと涙を溢すシーリン。


 …………シーリンはなぁ。

 シーリンだってなぁぁぁあ……。


 ううううううう…………!!

 うううううう、

「あ、あ、アタ───あた……」


 アタ───…………。


「───アッタマ来んなぁぁああ!!」


 あー、もぅぅう!!

 どいつもこいつも!!


「大人しいぃしとったらええ気になりよってぇぇぇえええ!!」


 うがーーーーーーーーー!! とついに、シーリン大爆発。


『おい! うるさいぞ、シーリン』

「び、びっくりした……。どうしたのシーリンさん?」


 目をキョドキョドさせたミィナがシーリンの袖を引くが、


「誰がうっさいねん!? おい、アルガスのオッサン!」


『な、なんだよ?』


 フンスと鼻息荒くシーリンは言う!!


「手ェ貸すでぇ!!」


 は?


「ミィナどきぃ!! そんなチャカチャカしとらんで、アンタはコッチのデッカイ筒に集中しとき!」

「え? あ、うん───」


 お、おい、何を勝手に?


『って。ちょ───それに触るな!』


 シーリンはアルガスが止める間もなく、九七式車載重機関銃に取り付くとガチャガチャと弄り始めた。


「おっさん、このに装填したらええんやな?」

『お前にわかるわけ───あぅ!』


 シーリンが、アルガスの後部機関銃を容赦なく弄り倒す。


「この棒の上に、これをハメ・・たらええんやろ? そんで、前後にこれをしごけばええんやな?!」


 棒を、

 しごくとか──────あぅ♡!!


「変な声出すなや! ほれ! ハメたで、さっさと発射せい!!」


 ち!


 コイツあっという間に重機関銃の使い方をマスターしやがった!


 女の子がハメて発射とかいうなし!!!

 ───おらぁぁぁぁあああ!!


 ズダダダダダダダダダダダ!!

  ズダダダダダダダダダダダ!! 


『よ、よし! シーリン。今は休戦してやる───銃の使い方が分かったなら、ミィナと共同して装填をぉぉぉおお♡!?』


 ゴソゴソゴソ……!


 ちょ、この子! し、下の方まで潜り込んでるんですけどぉぉぉおお!!


 そこはダメーーーー!!


「おっさん、下の方にもがあるやんけ?! これもハメ・・るか? っこをしごいたらえんやろ?」


 しごく言うな!

 装填といえ!!


 そりゃ、装填レバーを前後にガチャガチャするけどさぁ!!


『それは前方銃だ。戦車の車体・・・・・の全面に突き出した機関銃で、俺には操作できん! お前───できるのか?』




「任しとき、機械なんてもんは、見ればだいたい理解できるわッ」

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