第41話「重戦車化?」


「こりゃ、壮観だな……───」

 馬車にて、門前に運ばれたアルガス。

 

 朦朧とする意識のなか、門の先に立ち塞がる軍勢を見てひとりごちた。


「あ、アルガスさん……」


 ミィナが不安そうにアルガスを見上げる。

 その頭に手を置き、サワサワと軽く撫でてやった。


「大丈夫だ……。任せろ───ミィナはいつも通り、再装填を頼む」


「う、うん」


 よろめく体で起き上がり、ミィナを抱き上げる。

 あとは、重戦車化すればミィナを搭乗させた状態で、男爵軍を迎え撃つことができる。


 ティーガーⅠなら、人間が使う武器も魔法も、ものともしないだろう。

 いくら数が多くても、鎧袖一触。

 勝利はゆるぎない……。


 ティーガーは最強なのだ。


「市長、街の守りは?」

「自警団をかき集めて150……有志の青年団を武装化して100。冒険者を雇って20といったところでしょうか」


 約300程を下回る手勢か……。

 しかも、練度は怪しい。


 そして、男爵の軍勢はアルガスの正面だけでも───掴みで、800ほど。


「ここは俺一人でやる……市長は手勢を引き連れて、各門のほうにも警備を送れ。曲がりなりにも包囲にきてるんだ。ここだけに兵力を集中してるとは思えない」


「ですな。お任せください」


 市長は一礼すると、自警団にテキパキと指示を下していく。

 武装した自警団は、緊張感あふれる顔持ちで各部署に散っていった。


 これで最低限、街の守りは保たれるだろう。


 別にベームスの街に拘りがあるわけではないが、仕事として引き受けた以上やるべきことはやる。


 それが冒険者としての矜持だ。


 ゆえに、仕事として引き受けた以上、シーリンの言わんとすることも一ミリ程度なら理解できなくもない。


 とはいえ、やられた側としてはそれで納得する気など毛頭なかった。


 あとできっちりと落とし前をつけてやる。

 体で───とか、あと色々と!


 決意を胸に、アルガスは崩れ落ちた城門を抜け、街から荒野へと───「・221」の方向へと向かう。


 その瞬間、男爵軍から猛烈な殺意が飛び交い、アルガスを刺し貫かんとする。


「───はッ。会ったこともない男爵に、随分嫌われたものだ」


 ニヒルに笑うアルガス。


 その目前に、一騎の騎馬がゆっくりと丘を降りてくる。


 カッポカッポ───……。

 ブルヒヒヒ~~~~~ン!!


 (ナポレオンポーズを決め───)


「私はリリムダの地を陛下より賜り、治める領主が一人、リリムダ・ド・シュルカン──貴公、S級冒険者のアルガス・ハイデマンとお見受けする」


「…………はは。本当に名乗りをあげるんだな? 貴族って奴は、」

「み、ミィナだよ」


 ムキっ、と腕に力こぶを作ってミィナがアピール。


 いや……せんでええから。


「ふむ───聞きしに勝る下賤よな。作法も知らぬと見える。ならば結構、貴公が我が息子……この地を統治していた代官を討った賊。これで相違ないな?」


 …………やはり仇討か。


 貴族って奴は、メンツが命より大事ってのは本当らしい。


「───だいたいはあっているが、ゴホッゴホッ……。賊は代官のほうだ。あと、代官をぶっ飛ばしはしたが、殺した覚えはない」


「なに? この期に及んで命乞いのつもりか? そんなおためごかし───」


「ゲホッ……! はっ。どの道ヤル気で来てるんだろ? 命乞いなんざ安い真似をするかよ───事実を言ったまで、」


「ほう? ならば、我が息子は?」


「知らん。おいたが過ぎたようなのでな、街の住民に拘束された後は、俺も姿を見ていない───グフッ……!」


 ふむ。と思案し、顎を撫でる男爵。


 一方でアルガスは、激しくせき込み口に溢れた血の味を必死で誤魔化していた。


 ミィナが心配そうに見上げているが、今は構うこともできない。


「…………結構。いずれにしても、街と貴公を討つという大義に変化はなさそうだ───あとは、」

「だろうな……。俺がぶん殴った事実は変わらん。街にも責任はあるだろうさ。───だから、」


 ゲホッ…………!

 ポタタタ……! 


「「語るに及ばず───!!」」


 サッと、男爵が手をあげ軍勢に合図を送る。


 同時にアルガスは吐血しつつも、「重戦車化」する。


「───いけっ! リリムダの勇者たちよ!

 怨敵を討ち、街を蹂躙せよ!」


 おおおおおおうう!!!!


「させるかッ───ゲホッ……! く、重戦車化!!!」



 カッ─────────!!



 ドロドロドロ!! と、地響きを響かせながら侵攻を開始した男爵軍の目前で、アルガスの体が光り輝く!


「な、なんだ?! 魔法か───??」


 顔を覆い、目を細めた男爵が驚愕に目を見開き、馬を後退させる。


 その眼前で、アルガスの体が猛烈な光に包まれ巨大に変化していく!!



 そう、巨大に………………。


 巨大………………?



 あれ?


 きょ………………???


 な、なんか、いつもより─────……。


 ぼう、と遠のく意識。

 重戦車化の影響で、人から武骨な機械へと変身するその瞬間のトリップに、アルガスの意識は混濁する。


 そんな中で、光り輝くステータス画面。





名 前:アルガス・ハイデマン

職 業:重戦車(ティーガーⅠ)


体 力:1202(- 601)

筋 力: 906(- 453)

防御力:9999(-4999)

魔 力:  38(-  19)

敏 捷:  58(-  29)

抵抗力: 122(-  61)


※ 状態異常:中毒




《───状態異常確認》


 「重戦車ヘビィタンク」化 ⇒ 条件不達成 ⇒ 「防御力」を『中』と認定。




 新戦車覚醒ラーニング完了コンプリート──────!!




 「重戦車ヘヴィタンク」 改め 「中戦ミドルタ








 ─────────ゴフッ…………。







 意識の奥底で、アルガスは吐血し、無情にも敵前で意識を失う。

 どこか遠くの方で、ミィナが必死に呼びかけている気配がしたものの…………。



 アルガスは、あっけなく意識を手放した……………………………。

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